統合失調症患者の春

統合失調症

出典:Photo by Arno Smit on Unsplash

春は心や体が健康な人にとっては素晴らしい季節なのでしょう。子供のころは特に何も思っていませんでしたが、今の私にとってはそうではありません。

なにせ、統合失調症が悪化し救急車で病院送りにまでなった季節なので。

春に起こったこと

もうあまり覚えていませんが、学生時代までは春は好きな季節だったと思います。3月3日産まれの私は友達みんなに誕生日を覚えてもらっていたり、家族で祝ってもらったりするのが嬉しかったからです。

それが、社会人になってから2年後の春ごろ、がらっと変わってしまいました。当時勤めていたマッサージ店を自主退職したのです。接客業だったのですが、お客さんの顔が見れない、作り笑いさえできない日々に心から苦しみ、耐えられなかったのです。

退職した私は親に「仕事を辞めた」という事実だけ伝え、他は何も語りませんでした。私の兄も大学卒業後に勤めた会社があまりにもひどいブラック企業だったことで仕事を辞めていた時期があったので、親は「またその気になったら働くだろう」くらいに思っていたと思います。そして兄のほうは精神疾患にはなりませんでしたが、私はすっかり引きこもりの対人恐怖症になってしまいました。

その年の誕生日のことはよく覚えています。母は毎年誕生日には私の好きなステーキを焼いてくれ、食後には紅茶を飲みながらケーキを食べるというのがお決まりでした。

楽しいはずの時間ですが親に病気のことは何ひとつ話せず、お客さんの前で下ばかり向いていた私は、家での食事の時も顔をあげることができなくなっていたのです。無性に悲しいくせに、母が買ってきてくれたケーキがすごくおいしく感じた不思議な時間でした。

その4日後、忘れもしない3月7日のこと。以前書いたコラム「統合失調症でも、生きていく」に記されている恐ろしい幻聴が聞こえてきたのです。

◀過去の記事:統合失調症でも、生きていく

始まりの季節

春は何かにつけて新しいことが舞い込んでくる季節です。娘の幼稚園入園、小学校の入学など。そのたびに新しく、そろえなければならないものは山ほどあります。幼稚園では「すべての持ち物に名前を書いてください」と教材や制服、体操着、靴や帽子など。気が遠くなる思いでした。

しかし、ありがたいことに時代のニーズに合わせて「お名前シール」なるものがあり、ネットで頼めばあらゆるサイズの名前入りシールが送られてくるので、鉛筆に1つ1つ書かないといけないのかと心配していたのですが、シールのおかげで肩の荷がおりました。

ちょっとしたことで気が遠くなるような重荷を感じてしまう私のような統合失調症患者には、こういった「情報」が欠かせません。今はネットで検索すれば何かと便利な「情報」が入ってくるので、これを使わない手はないと思います。

春休み

そして、春もしんどいことばかりではありません。行楽シーズンなので、お出かけをして楽しく過ごすこともできるからです。

どこの学校も同じか分かりませんが、私の娘の小学校は春休みには宿題がありません。平日は娘と2人でよく出かけました。障害者手帳を活用して、USJに2回いきました。障害者と付き添いひとりはチケットが半額になるうえ、待ち時間はあるものの、申請すれば「ゲストサポートパス」というものがもらえます。これを提示すれば待ち時間のあいだは列に並ばずにどこで何をしていてもいいのです。

ご飯を食べていてもいいし、ショーを観ていてもいいし、ゆっくりお土産を探していてもいいのです。そして時間になればすぐにアトラクションに乗せてくれるよう、手配してくれるのです。娘はこれにはものすごく喜んでくれました。疲れずにいっぱいアトラクションに乗れるのです。ただし、1つのアトラクションを待っている間は他のアトラクションの予約はできません。

またあるとき、夫は春休み中に休暇を取ってくれ、和歌山の温泉に1泊で家族旅行にもいきました。私は家で3人で過ごすのも好きですが、出かけるのはもっと好きです。とてもいい思い出になりました。

幸福のあとの不安

そして、今年は4月の10日からまた学校が始まりました。専業主婦の現実が始まります。専業主婦の毎日も悪いものではないのですが、春休み中楽しかっただけに心にぽっかりと穴があいたように感じてしまうのです。

そして、気候の変化。暑かったり寒かったり。風がきつかったり、空気がよどんでいたり。こういったことで自律神経が乱れるということもあるそうです。頭痛がしたり、精神的に不安定になったりなど。こういったときに年度替わりで、やらなければならないことが押し寄せてくると、一気に調子が悪くなります。私の場合は常に不安がともなうという感じになってしまいました。

今年小学6年生になった娘は5月末から4泊5日で、北海道に修学旅行にいきます。そのための保護者用説明会や、授業参観など、学校と関わらなければならないことが増えたり、提出しないといけない書類がたまったりすると、私の頭はパニック状態になります。

また「小学校にいって会いたくない人に会ったらどうしよう」とか「新しいお母さんたちに会って話ができるだろうか」とか、正常な思考回路のときにはまったく気にならないことまで気になってしまうのです。

以前もこのように不安神経症のような症状が出たことがあり、寝る前のお薬の一種を1錠増やしてもらったら楽になったので、今回も同じ処方をしてもらいました。そうすると日に日に症状が落ち着き「ああ、やっぱりこのお薬が合っているんだ」と安心しました。

「季節の変わり目は誰でもしんどいです。あなただけじゃなくて、みんなしんどいんですよ」と主治医の先生にいわれました。こういったときにどのお薬がどう作用してくれるかを覚えておくことは、とても大切なことだと思いました。

おわりに

これからも、今までの経験を忘れることなく、しんどくなったときに「どこへ」「誰に」救いの手を求めるべきかをしっかりと覚えておこうと思います。

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macaron

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統合失調症、その他の精神病をわずっている主婦です。
犬猫が好きで癒されています。

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