身体障害者手帳は便利な「身分証明書」!?

身体障害

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私には生まれつき脳性麻痺による障がいがあります。0歳から障がいとお付き合いしていますが、身体障害者手帳を取得したのは21歳のころ。障がいを認識してから手帳取得までに非常に時間がかかりました。

今回の投稿では、半生を振り返りつつ、「なぜ手帳を取得するまで時間がかかったのか」と「身体障害者手帳に対する私なりの考え」を皆さんにお伝えします。ぜひ最後までお付き合いください。

さて、本題に入る前に、これからの話の肝である身体障害者手帳について簡単に説明します。

身体障害者手帳とは

身体障害者福祉法が定めている障がいを持つ人に対し、都道府県や指定都市、中核市が交付する手帳を指します。

障害の分類は大きく5つ。視覚障害、肢体不自由、聴覚又は平衡機能の障害、音声機能・言語機能又はそしゃく機能の障害 、内部障害に分けられ、さらに、分類ごとに等級で分けられています。

「等級とはなんぞや?」と初めて聞いた方向けに言うと「障がいの程度を示すもの」です。1級~7級で認定され、1級に近づくにつれ程度が重くなります。このうち手帳が交付されるのは1級~6級まで。7級と認定された場合でも、障がいが2つ以上ある場合等は手帳が交付されます。

手帳を持つことの大きなメリットは福祉サービスを受けられること。障害者雇用枠への応募はもちろん、JR利用運賃の割引や税制面の免除・減免等、内容は様々です。福祉サービスに関しても等級によって内容が異なりますので、気になる方はお住まいの市役所等に聞いてみてください。

今回のコラムは身体障害者手帳の説明ではないのでこれくらいにして、ここからはなぜ手帳取得まで時間がかかったのかをお話していきます。

その前に、一つお断りをさせていただきます。ここからは「肢体不自由の3級相当」の「先天性」障がいを持つ私個人の見解です。人により障がいの種類や程度は様々ですので、「こんな考え方もあるんだな」と軽い気持ちで読み進めていただくことをおすすめします。

不自由が少ない日常生活

見出しを読んで「え、どういうことだよ」と思いましたか。障がいがあると聞くと、日常生活で不自由なことがたくさんあるんだろうと想像してしまいますよね。しかし、私はそこまで不自由を多く感じたことはありませんでした。

ここで簡単に私の障がいを説明します。私は先天性脳性麻痺により左半身に障がいがあります。左手首が動かせなかったり、指を一本づつ曲げられなかったり、握力が弱く荷物を持てなかったりと、左腕に障がいが集中しています。

私が幼少のころ、この障がいを軽減しようと、両親は私を訓練施設に連れて行き、左腕を動かせるようにするトレーニングを何度も受けさせてくれました。障がいの軽減はできなかったものの、自分なりに工夫をすることを身に付けたのか、日常生活動作のほとんどを右手だけで行えるようになっていました。

また、学校生活においても障がいを理由に差別する子やいじめる子もおらず、障がいがあることをすっかり忘れ健常者として過ごしていました。体育の授業や放課後に野球する時は少し大変でしたが、「出来たら儲けもん」といった具合で取り組んでいましたし、大学時代にはバイトや遊びに明け暮れていました。

こういった経緯から、「障がいはあるけど、普通に生活できているし問題ないや。へっへっへっ」と考え、手帳を取得する気持ちがみじんも起こりませんでした。自分の障がいを気にしないでいられる環境を整えてくれた両親や周りの方たちには、本当に感謝の気持ちしかありません。

しかしそんな私に、手帳取得に対する考えをひっくり返す出来事が起こります。

「キミ、手帳持ってるの?」

大学時代就職活動する最中、面接で言われた言葉です。自身の障がいを絡めて頑張ったことを自己PRとして話すと、九分九厘聞かれました。「いえ、持っていません。取得も考えておりません」と返すと、お祈りメールが届きます。至らぬ点が他にあったのかもしれませんが、次々届くのです。自分はだれからも必要とされてないのではと大きな挫折を経験しました。

面接を受けては落とされを繰り返し、あっという間に時間が過ぎ内定がないまま8月になりました。周りの皆は内定をもらっていて、私は一人焦りました。途方にくれていると、ふと手帳のことが頭に浮かびました。インターネットで調べるうちに、障害者雇用枠というものがあり、さらに障がい者を対象に就職支援を行う企業があることも知ったのです。

すぐに問い合わせると、手帳を持っていれば、一般雇用枠とは別の障害者雇用枠で就職活動することができ、企業側も積極的に採用活動していると情報を得ました。背に腹は代えられないと医者に診断書をいただき、交付申請をしました。発行には時間がかかるので、その間に障害者雇用枠で就職活動することにしました。すると今までが嘘のように選考が進み、複数の企業から内定をもらい、大手企業に就職することになりました。その間約2か月。喜びと同じくらい心の底から安心したのを覚えています。

当時を振り返ると、自分ではどうにもできない障がいの壁に対峙する場面がこれまでなかったこと。これが手帳取得を遅らせたのかもしれません。

身体障害者手帳を取得して、約5年経ちました。様々な場面で活用する機会が増え、手帳を持つことについて考える機会も多くなったので、この場を借りて考えを整理させていただきます。参考にしていただければ嬉しいです。

身体障害者手帳は「便利な身分証明書」

私は障害者手帳を「便利な身分証明書」と考えています。初対面の方や障がいの知識がない方に、自分の障がいを口頭で説明するのが難しいことが多々あります。そういう場面で「手帳を持っていて~」と伝えると比較的スムーズに理解してもらえることがありました。さらに大きな安心感を得ることにも繋がります。私は手帳を持つまで「原因不明の障がいをもっている」という漠然とした不安を持っていました。手帳交付のための医師の診断で「脳性麻痺が原因」と言われた時、「なるほどな」と心が軽くなったのを覚えています。以上の理由から取得することをおすすめします。ただし障がいを受容出来ていることが前提です。手帳を取得することは、障がいを認めることと同義だと考えています。受容には時間がかかるので、焦らず気長に障がいと向き合いましょう。

次に取得のタイミングですが、早ければ早いほど良いと私は考えています。これに関しても、障がいを受容できていることが前提です。初めにお伝えしましたが、手帳取得することで様々な福祉サービスを受けられます。これだけ手厚いサポートや制度が整っているのに活用しないのはもったいないと感じますし、普段から積極的に手帳を使っている私は「もっと早くに持っておけば良かったな」と少し後悔までしているところです。「便利な」と言葉をつけた理由はここにあります。

以上、身体障害者手帳について私の体験談と考えを簡単に述べさせていただきました。個人的な見解ではありますが、このコラムが手帳取得を迷われている方の一助になればと思います。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

障害者割引を項目ごとにまとめています。ご参考にしてください。

【厚生労働省:身体障害者手帳の概要】
https://www.mhlw.go.jp/index.html

木塚乃滝

木塚乃滝

先天性脳性麻痺により左半身が動かしにくい身体を持つ1994年生まれの男。
さらに社会人2年目の23歳で「抑うつ状態」と診断されました。
身体障がいに精神疾患。一見多難にみえますが、希望にあふれた日々を過ごす毎日です。

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