漫画「ツレがうつになりまして。」を読んでみて

うつ病 エンタメ

出典:Photo by Toa Heftiba on Unsplash

うつ病をはじめ、精神疾患を描いた作品は昨今増えつつありますが、中でも有名なのは漫画「ツレがうつになりまして。」ではないでしょうか。個人的にも大好きな作品です。原作の漫画でも、映画でも楽しむことができます。サラリーマンの「ツレ(夫)」の闘病生活を「妻・細川貂々(てんてん)」が赤裸々に、ユーモラスに描いた漫画作品です。うつ病が一層世間に知れ渡ったのも、この作品の影響が大きいのではないでしょうか。このコラムを読んで、手に取っていただける方がいらっしゃれば嬉しいです。

あらすじ

どこにでもいそうな生真面目なサラリーマンの「ツレ」はIT企業のサポート係に勤務し、理不尽なお客様の電話対応に心を病みます。ある朝、「死にたい」と真顔で口にしたことから、心因性のうつ病と診断されます。ツレの日々の変化に気づけなかったことに、妻の「てんさん」は自分を責めますが、次第に前向きに乗り越えていこうと二人三脚の闘病生活をはじめました。

読みやすい作風

几帳面で真面目なツレと自由奔放でマイペースなてんさんの対比がうまく描かれているように思います。正反対の二人が浮き沈みの激しいうつ病をどのように受け入れていくか……というノンフィクションなので、私も初めは暗くて読みづらいのではないかと心配していました。しかし、シンプルでかわいらしい、絵日記調の作品ですのでサクサクと読み進めていくことができます。ツレの不器用さを愛おしく思い、時には、てんさんと一緒にツレを応援したくなります。

宇宙カゼ

うつ病は、誰しもが発症する可能性があることから、「心のカゼ」と表現するのを耳にしたことがあります。偏見を持たせず、早期発見に繋げようという意図があるのだと思います。作中で、てんさん自身も当初はうつ病は「精神的に弱い人がなるもの」ではないかと誤解しています。今でも、なかなかうつ病の症状は正しく理解されていないのが実情です。うつ病の症状はカゼという表現から想像されるよりも重く、辛いものです。 うつ病が原因で健常者には不可解な言動や行動をとることもあるため、作中で、てんさんは宇宙人のカゼ「宇宙カゼ」と表現しています。ツレの場合、「体が重い」「眠れない」「今までできていたことができない」といった症状が出てしまいます。これらはうつ病患者である私も実際に経験したことがあります。心も体も不安定になります。何事に対しても「世間様に申し訳ない」という思考に陥るツレの姿は、症状が重かった頃の私と瓜二つで、思わず吹き出してしまいました。 病気が原因の思考であるにも関わらず、「とにかく自分が悪い」と思い込み、物事を整理して考えられなくなる様は、うつ病を知らない方には驚かれるかもしれません。本人や、その家族でさえ「自分は甘えているだけなのではないか」と思い込むこともあります。そのためうつ病への理解には時間がかかり、葛藤が続きます。

声かけ

ツレのようにうつ病の患者さんはちょっとした言葉に傷ついてしまうことがあるので、注意する必要があります。私自身も家族からの「うつ病なんて気の持ちようだよ」という声掛けにひどく落ち込んだこともあります。ツレの場合は辛い話や愚痴、さらには暗いニュースや事故も内容に引きずられて気分が滅入ってしまいます。特に困ったのは「病気に負けないで頑張って」といった声かけで、どう頑張ればいいのか分からず寝込んでしまったようです。同じ声かけでもどのように捉えられるか、個人差があるので難しいとは思います。しかし、安易で無責任な発言をしたり、他のうつ病の患者さんと比較したりすることは控えてほしいです。

一進一退

服薬を開始したから、退職したからといって、体調がただちに回復するわけではありません。「今日は調子がいいよ」「でも、もうだまされないよ」「今、調子がよくてもまた悪くなるときが来るんだよ」ツレの言葉の通り、病状が良くなったり悪くなったりするのが「うつ病」です。波がありながらも一歩ずつ前向きに過ごそうとするツレの姿は健気で惹かれるものがあります。正しい服薬と十分な休養を取りつつ、日によって気分の浮き沈みがあることを理解できるようになることは、スムーズに治療を進めるうえで大切です。

まとめ

うつ病が身近でない方が読んでもなかなか共感は得られないかもしれません。ですがツレと、てんさんの一喜一憂を見ていると「こんな思考に陥りやすいんだ」「こんな行動をとりやすいんだ」ということを少しは知ってもらえるかもしれません。

うつ病にかかったことがない、身近に感じてない方にもぜひ一読、一見していただきたい作品です。うつ病は決して後ろめたい病気ではありません。うつ病経験者の方には、頑張ってきた時間を振り返ることができ、共感できる一冊となっております。のんびり構えて、一歩一歩進んでいきたいと思わせてくれる作品です。

『ツレがうつになりまして。』 著 細川貂々 株式会社幻冬舎 2006年

『その後のツレがうつになりまして。』 著 細川貂々 株式会社幻冬舎 2007年

『7年目のツレがうつになりまして。』 著 細川貂々 株式会社幻冬舎 2011年

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