先天性身体障がいがくれた宝物

身体障害

出典:Photo by Ben Hershey on Unsplash

先天性の身体障がいで悲しみが多い日々を過ごしていた私に、初めて障がいがくれたチャンスと友情について、お話したいと思います。

先天性身体障がいの苦悩

私は生まれた時から、右半身が動きにくい障がいを持っていました。そのせいで、幼少期からできることが少なく、ことスポーツにおいては、からっきしできませんでした。

これはそんな私が小学校に入り、4年生になったときのお話です。

生まれつき身体障がいがあった私は、小学4年生まで学校の体育はもちろん、友達との運動もほとんど見学していました。

しかし、身体と心は別で、身体ではできないと分かっているスポーツに挑戦したい気持ちが心では沸々と沸き起こっていたのです。

特にそれは放課後、同級生達が皆で行う野球でした。グローブでボールを取り、それを手で投げること、バットでボールを打つということに私は憧れの眼差しを向けていました。でも、バットは振れても、グローブでボールを取って、それを投げるなんて両手が使えて初めてできることだと思っていました。そのため私は、はなから諦めていたのです。

転機

ある日の放課後のこと。そんな羨望の眼差しが通じたのか、どうかは分かりませんが、野球をしている同級生の1人が私のもとに来て「なあ。一緒に野球やらねえか」というのです。

私としては願ってもない喜びだったのですが、右手が上手く動かせないという現実が心を苦しめました。どうするか悩んでいると、同級生は「大丈夫。お前の分もカバーしてやるからやるだけやってみようぜ」といってくれました。そして、そっとグローブを私に手渡してくれたのです。私は自然にグローブを握っていました。

試行錯誤の日々

グローブを片手に私は同級生達と共に、放課後に野球をやり始めました。

しかし、右手に力が入らないため、なかなか上手くボールを取ることができませんでした。

同級生達はエラーばかりをする私をいつも励ましてくれたのですが、私の心にはエラーの罪悪感と、上手くできないことへの苦しみや辛さが沸々と、湧き上がっていたのです。考えに考えた挙句、私は左手にグローブをはめて、左手でボールを取り、そのままグローブを右脇に挟んでボールを取って投げるという方法をやってみました。すると、意外にも上手くいきアウトが取れたのです。それが私の初めて取ったアウトでした。今でもそのときの喜びは覚えています。

同級生達も皆、口々に「やったな!」とまるで自分のことのように喜んでくれました。

そのやり方を徹底的に身体にしみ込ませるため、自分自身で朝練を始めました。

朝練を同級生が見ていたのか、最初は独りでやりだした朝練も、同級生がひとり、またひとりと手伝ってくれて、いつしか皆で朝練をするようになっていきました。

右手がくれたチャンス

人間とは不思議なもので、左手でボールを取り、左手で投げるやり方が段々と慣れてくると、同級生達に遅れを取ることなく、アウトが取れるようになりました。波に乗ったのか、最初は三振ばかりだった打席も打てるようになり、同級生達と対等に渡り合えることができるようになっていきました。それと同時に学校の体育の授業も、周囲よりかは時間がかかりましたが、少しずつできることが増えていきました。皆の輪に入れるって、とても楽しいことだと感じ、私は自然と笑顔が増えたのと同時に、友達も増えたのです。

おわりに

私が野球をやっていたのは、小学4年生から中学3年生の終わりまでの6年間でしたが、そのときの友達とは今でも付き合いがあります。

これは障がいがあったからこそできたことだと思います。

もし、あの時、同級生が声をかけてくれてなかったら、今も自分の障がいに苦しんでいたかもしれません。私は障がいを通じて、勇気と人と人との繋がりを得ることができました。

障がいがなければ、私はここまで成長できなかったと思います。

私は今でも「辛い」と感じたとき、この出来事を思い出して、工夫するように心がけています。

このときの出来事は一生の宝物です。

これからも私を支えてくれる物になってくれると思います。

人は、諦めない限り不可能なことはないんだなと感じました。

私は不自由でも、好きが上回ってしまうとできるようになると信じています。

この出来事を少しでも参考にしていただけると幸いです。

そして、私と同じように障がいで困っている人を見かけたら、優しく手を差し伸べてあげて下さい。

よろしくお願いします。

岩瀧 詠星

岩瀧 詠星

先天性身体障がいを持ち、うつ病やパニック障害、適応障害で闘病中、
現在、就労支援を受けながら、社会復帰を目指す。
趣味:読書、映画鑑賞、テニス、小説を書くこと。

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