うつと共に生きる

うつ病

出典:Photo by Nik on Unsplash

うつ病にて精神障害者となるにいたった半生を振り返りながら、うつ病をどのように受け入れたか。自分の病状や健康状態と向き合ったときに、何も思ったかを説明したいと思います。

かつての私

かつての私は、もっと元気でした。不景気の中、地方の政令指定都市で就いたパート業ではありましたが、その中で順調にステップアップをしていった実感があります。

同時に「自分が仕事を抱えて終わらせる」という方法をとっていたのも事実です。その日に仕事を終わらせなければ、翌日の業務へ影響が色濃く出る、という理由で職場とすり合わせをしながら働いていました。やや強すぎる責任感もここでは役に立っていました。

ただ、労働期間が長くなればなるほど「よりスキルアップをしたい」「よりキャリアアップしたい」と考えるようになったのです。私にとっては、これが不運の始まりでした。

キャリアアップのつもりが

転職先は、現場におもむいて作業をする形式の業態です。「モノを作る」「モノを仕上げる」という意識の人たちに混ざっての仕事でした。職業意識が高い反面、それを他人に強いる面もあったのです。

作業の確認を取れば怒られ、道具を取りに行けば怒鳴られ、作業を終わらせれば罵られ、人のいうことを聞けば馬鹿にされる。いわば「詰んでいる」状態でした。当初持っていた向上心は数か月でなくなり、無気力で辞める理由を探すだけの毎日になっていました。

それでも数年間、何とか就業をしていたのですが、さらに転機が訪れます。責任者をしてみないか、ということでした。1度は断ったものの社長の言葉で敢行。責任者として現場に立てば、扱いはさらに酷くなりました。くわえて、もともとあった強すぎる責任感が裏目に出てしまい、ついに心の悲鳴が身体にまで。

その段階で初めて心療内科を受診した私に出た診断は、適応障害でした。

適応障害は「原因が明確で、原因から離れれば寛解の見込みがある」病気です。

「そうか、なるほど」と。元々、辞める理由を探していた私はこれ幸いと、現場職を辞職しました。そして職を変えて、住所も変えて、以前のようにキャリアアップを目指した生活を考えていました。ところが、適応障害は治っていなかったのです。新しい職場での人間関係や緊張感などによって、前職を思い出し、ふたたび、心身に悲鳴が走ります。

私自身に「適応障害を抱えながら労働をする」能力はありませんでした。強すぎる責任感は、やがて自分自身を責めるようになり、いつしか自傷行為や希死念慮にまで発展します。最後には「四つ這いで身支度をし、背負った鞄に押しつぶされて立てない」状態にまでなりました。

今度は「うつ病」を発症して、退職することとなったのです。

うつと共に生きる

「うつ病」で検索をすれば「疲れやすくなる」など、様々な病状がでてきます。

実際、私も「疲れたので折り畳みのいすを取り出して休む」という状況が、まだあります。また、部屋で休んでいる時に日差しがさしこめば「世間から奇異な目で見られている」という錯覚も起こしていました。そんなときは「錯覚だーっ」と実際に口に出して、その状態を否定しています。

そんな中で、現在、通所している就労移行支援事業所さんと出会い、リハビリともいえる生活を送っています。まだ社会への恐怖心や卑屈な感情は残っていますが、ゆっくりと「かつての自分」に戻ってきた実感もあります。

一方で思うのは「『世間』は健康な人を前提にしすぎているのではないか」ということについてです。生まれながらに病気を持っている人もいれば、高齢になって初めて病気にかかる人もいます。私の知り合いでは「何かしらの病気だと知っているが、病院にいっていないので病気じゃない」という人もいました。

道いく人や工場で働く人、みんなが何かしらの持病を持っている可能性があります。花粉症でクシャミを何度も出しながらであったり、あるいは、人知れず高血圧の薬を飲んでいたりもするのでしょう。それでも、みんなが「病気の無い人間だと装って」社会人生活を送っているのだと思います。

決して誤解しないで欲しいのが「みんな辛いから我慢しよう」という話ではありません。「できることから頑張ろう」という話です。一時期は「健康であらねば社会人にあらず」とでもいいたげな、心の狭い「世間」という不特定多数集団を過激に攻撃したい気分でした。それでも、できることからやっていくしかないのだと、自分にいい聞かせて生活しています。

就労移行支援事業所さんで聞いた「1日1回自分を褒める」ということを、新しく始めました。「早寝早起きをしたから偉い」「薬を飲んだから偉い」「息をしたから偉い」など、そういったことをくり返しています。

そうやって、うつ病と他の持病がいくつか。あわせて5人6脚で頑張って生きていきます。

司空 卓鵬

司空 卓鵬

蓬莱は播州に詩文を学びて時に之に習う者あり。もの言わざれど、未だ下、自ずから蹊を成さざる。
鴻鵠に従いて民の務めを果たさば、先に癲癇症の露になるを有り。
燕雀に混じりて世塵を被らば、次に抑郁症の患いたるを有り。
これを以て、里巷に在りて務めの完うするを能わず。
因りて摂州に青山を求むも、亦、病を患いたるに、遂に行住坐臥の為すを難くす。
社稷の慈しみ 有り、人間の情 有りて。かくして今、此の筆を運ばん。

うつ病

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