セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜

「以前よりも優しくなくなった」という一言で気付かされた就労事業所の役割(セコラム第28回)

仕事

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『セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜』 vol.28

三休で働くメンバーが少しずつ増えてきました。そうすると1人ひとりに注ぐ気配り、心配りがメンバーの人数に応じて分散していっています。スタッフ1人に対してのメンバー2人とメンバー5人では濃密度は変わってきています。

あるメンバーが「世古口さんが以前よりも僕に対して優しくなくなった」と言っていました。メンバーが増えても1人ひとりに対してのサポートの大きさは変えていないつもりだったけれども無意識に大きさは変わっていたのかと気付かされた一言です。またこれをきっかけに少し考えました。

三休は「就労」の事業所であり「生活介護」の事業所ではありません。もちろん三休で働くメンバーには一般就労を目指す人はいるし、給料を増やしたい人もいるし、日中活動を目的としている人もいらっしゃいます。けれども「就労」という意味合いを失いたくありません。就労とは「働く」ということ。働くことはすべて自分自身の思い通りにならないこともありますし、しんどい作業もあります。でもみんなでそれを乗り越えた先に仕事を終えた達成感や働くやりがいを感じ取ることができると思います。だからこそ、その人の「快」をすべて満たすようなサポートではなく、少しの「不快」を併せ持ちながら「快」を満たすサポートをするようにしました。このように書くと無責任に聞こえますが「こうしてください」と一方的に伝えるのではなく「こうしましょうか」とメンバーと対話をしながら一緒に答えを出すようにしています。

優しくなくなったとぽつりと呟いた人とも対話を何度もしました。事業所の状況や僕の思いを伝えると同時に彼の思いや三休でしたいことなど色々な話を交わしたことで、いつも通り前向きに働くようになりました。「誰かにとって完全に居心地が良い」場所をつくるのは難しいかもしれませんが「1人ひとりにとってある程度居心地が良い」場所をつくることはできると思っています。そのためには対話をすることを続けていき、働きやすい環境づくりを絶えずやっていくつもりです。それこそが「就労」の事業所の役割の1つなのです。

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

就職活動に失敗し、何となく障害福祉の世界へ。障害者が暮らしやすいまちをつくるNPO法人サポネや医療福祉エンターテインメントのNPO法人Ubdobeなどを経て、農業を中心とした障害のある人が働く拠点「三休 – Thank You -」を今年4月にオープン。それ以外にNPO法人月と風と理事やKAIGOLEADERS OSAKAコアメン、ふくしあそび探求舎代表を務める。

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