長引くうつ、再発するうつ、もしかしたら「双極性障害(躁うつ病)」かも~気づき、受け入れ、つきあっていくために

双極性障害(躁うつ病) うつ病 発達障害

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大学時代は、さまざまな活動に首を突っ込みました。学園祭のライブ企画を一から立ち上げたり、海外ミュージカル公演のボランティアスタッフになってPR活動のため街頭で歌ったり踊ったり。その後は女友達とバックパックひとつでアジアを旅しました。

「行動力があるね」

卒業後は出版社への就職が叶わず、ジャーナリストを志します。就職しないなら家を出るよう言われ、一人暮らしを始めた木造アパートは家賃1万円。電気ストーブをつけるとブレーカーが落ち、階下もろとも停電します。休日はアジア、南米などの映画や食を楽しむアグレッシブな日もあれば、散らかった部屋を片付ける気力もなく「何をしたらいいのかわからない」と寝込む日も少なくありませんでした。

昼も夜も派遣やバイトに励んでアジアへ私費留学を果たしますが、すぐに資金が底をつきます。現地のスタッフに交じって日系工場でアルバイトをしたこともありました。「行動力があるね」としばしば周りの方に言われます。しかし、常に不定愁訴や不安感がひどかったので、自分が元気とは思えませんでした。

 

「必ず苦しい方、大変な方を選んでしまう」

「不安で心が元気ないだけ。病気ではないので薬は出しません」初めて心療内科を受診したとき、こう言われました。遠距離恋愛の彼と結婚が決まり、早く再会したい一方で不安が日ごとに高まるばかり。毎晩のようにひとりで泣いていました。

ささやかな結婚式を開き、友人がスピーチしてくれました。「人生の選択をするとき、彼女は必ず苦しい方、大変な方を選んでしまいます」

1年後、体調を大きく崩して実家へ戻ります。精神科で結婚前と同じことを言われました。「心が元気ないだけ。病気ではありません」

その後、抑うつ状態を伴う適応障害やうつ病との診断を受けたこともありました。処方されたのは、たいてい抗うつ剤が1錠。率直なところ効いているのか、いないのかわからないぐらい何も感じません。プライベートが充実すると、医師と相談のうえ服用間隔を少しずつ空けて治療終了に向かいました。

 

発達障害の特性から転職を繰り返す

わたしは不器用でミスが人一倍多いうえに、暗黙のルールがよくわかりません。自分なりにがんばって仕事をしても、毎日ひどく叱責されるばかり。とりとめのない雑談にさりげなく加わる方法がわからず、笑顔で雑談のなかにいる昼休みも心休まることがありません。

自閉症スペクトラム障害(アスペルガータイプ)の人は言葉をストレートにしか受け取れず、周囲からすると「空気の読めない人」「気くばりのできない人」と思われたり、反対に悪意があってわざと相手の意図を無視したり、ストレートな物言いをしたりしているように誤解されることもあるといいます。その態度が自分勝手、横柄だと受け取られてしまうこともあるのです。「人に気をつかわない」のではなく、「気をつかおうと努力しても上手くできない」のです。

その結果、自己実現と安定した生活を求めているにもかかわらず、意欲に満ちた就職と心がポッキリ折れての退職を繰り返します。

うつ病と診断された10人に1人が「実は双極性障害」

自分を見つめなおして再出発したいと思い、近所の心療内科を訪ねました。穏やかに微笑む医師の第一声は、「いつからそんなに元気ないの?」大学を卒業してからだと思いますと答えて、大学時代からの奮闘ぶりと顛末を伝えました。

じっと聴き続けてくださった先生の診断は、双極性障害。これまで一度も疑ったことのない診断名でしたが、驚きはありませんでした。

双極性障害とは「躁状態」と呼ばれる気分が高ぶったとき、「うつ状態」と呼ばれる気分が低下したときが、交代して起こる病気です。かつては「躁うつ病」と呼ばれていました。

日本うつ病学会が作成した解説書「双極性障害(躁うつ病)とつきあうために」によると男性で10人に1人、女性で5人に1人ぐらいが、一生のうちに一度はうつ病になるといわれています。うつ病と診断された人のおよそ10人に1人が「実は双極性障害だった」と判明するそうです。

うつ病を治療するときの目標は「うつを良くする」。双極性障害の場合は「躁・うつの波をどうやってコントロールするか」という異なった目標に向かって治療を進めます。

つまり、双極性障害の人がうつ病の治療を受けている場合は、適切な治療を受けていないことになるのです。治療を受けてもうつが長引く、あるいは何度もうつを繰り返す場合は、双極性障害の可能性があるのかもしれません。

双極性障害は「身体の病気」

毎年3月30日は「世界双極性障害デー」。この病気を患っていたという説もあるヴィンセント・ヴァン・ゴッホの誕生日です。双極性障害への理解を深め、社会的な偏見をなくすため2014年に制定されました。

双極性障害の人は、脳のはたらきを調整する神経伝達物質のバランスが崩れています。脳が関係した「身体の病気」であるにもかかわらず、「心の問題」のように受け取られてしまうことが少なくありません。

また外見から病気と見られないため、病気の苦しみだけでなく周囲の無理解から冷たい言葉に苦しめられることもあります。

「躁・うつの波」に気づく

双極性障害の人はストレス、とくに人との関係から生じるストレスがきっかけで調子を崩し、うつ状態や躁状態に陥ることがあります。「躁・うつの波」が大きくなってしまう前に気づくためには、これまでの経過、とくに「うつ状態になる前の状況」を振り返ることが大切です。

うつ状態になる前、以下のような状況になっていなかったでしょうか。

1.「あれもこれもやらなければならない」と考え、優先順位がつかず無理なプランを立てる。

2.「自分がやらねばならない」という意識が強すぎて一人で抱え込む。

双極性障害は闘って治す病気ではなく、「躁・うつの波」をコントロールして、つきあっていく病気です。

うまくつきあっていくためには、まず気づくこと、そして病気を受け入れること。戸惑う自分の気持ちも否定せずそのまま受け入れ、焦らずスモールステップで、つきあい方を見つけていきましょう。

参考文献

「精神科医が解説、広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)の症状・診断・治療について」元住吉こころみクリニック
https://cocoromi-cl.jp

「双極性障害(躁うつ病)とつきあうために」 日本うつ病学会双極性障害委員会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd

「世界双極性障害デー」加藤忠史
https://square.umin.ac.jp/tadafumi/

おさんぽ

おさんぽ

適応障害、うつ病を経て、2019年に双極性障害と自閉症スペクトラム障害(アスペルガータイプ)の診断を受ける。ライターとウェブサイト校閲の経験があり、文章を書くこと、原生林を歩くこと、南の島で泳ぐことが好き。

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