「真面目」の言葉の裏に潜むうつにつながる危険な考え方~「真面目」に取り憑かれていた男

発達障害 仕事

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私は現在26歳。社会人2年目の23歳の時、「抑うつ状態」と診断されました。休職・復職を繰り返したのち退職し、現在は長期就労を目指して就労移行支援施設に通所中。病状も回復にむかい、服薬もやめ、ひと段落ついたのでコラムを書こうと思います。

今回の投稿では、当時を時系列で振り返りつつ、周りから受けていた「真面目」という評価を裏付けていたであろういくつかの考え方を、皆さんにご紹介します。個人的見解が非常に多いですが、ぜひ最後までお付き合いください。

初めに

私は、多くの同僚や上司から「真面目だな」「真面目過ぎるね」という評価をされてきました。

当時はプラスの評価だと言葉通り受け取っていましたが、もしかするとそれは周りの人からの注意信号だったのかもしれません。

さて、話は私が22歳のころに遡ります。私は生まれつき身体障がいがあったため、障がい者雇用枠で大手企業に新卒入社しました。配属先はいわゆるコールセンター。バラ色の人生を夢見て社会人生活に突入したわけですが、待ち受けていたのは茨の道だったのです。

考え方その①「出来ないのは自分の能力不足のせい」

配属されたコールセンターでは同期が6人ほど。一斉に座学と実践研修を約半年間受け独り立ちするという流れでした。ここで私は出遅れました。座学で知識は理解するけれど、実践で上手く対応できない。電話口のお客様に怒られ、隣にいる研修担当に怒られ続きました。ある日、研修担当から「これだけ出来ないってどういうこと?」「研修を中止します」と告げられました。今まで保てていた自信が一気に崩れた瞬間でした。それからは「自分は教えられたことも出来ない」「ダメな人間なんだ」と自分を責め続けました。

考え方その②「やるからには全てを知っておかなければ」

研修が中止となり落ち込んでいた私に、上司が異動を出してくれました。次の配属先は同部署の経理部門。来年1月着任ということで沈んでいた心が上向き、「心機一転頑張ろう!」とやる気に満ちたことをよく覚えています。

ただここでも試練がやってきます。最初に任された仕事が基礎業務ではなくその管理業務だったこと。本来であれば、実践研修を経て基礎となる入金業務を経験し、管理業務を担当します。しかし、私が異動した時は、他の社員の研修を優先するということで、入金業務未経験で管理業務を行うことになったのです。

傍から見れば、「そんなことが試練かよ」と思うかもしれません。当時の私には「担当するからには全てを知っておかないとだめだ」という考えが根底にあったのです。もやっとした気持ちを抱えつつ、マニュアルの知識だけを頼りに取り組みました。しかしそう長くは続きません。

全てを把握しておかないといけない義務感が増していき、それが出来ていない自分に自信が持てなくなってきたのです。「入金業務をさせてください」と何度も上司へ頼みましたが、時期や人手不足を理由に実現はしませんでした。ついにはうつを発症し休職することになったのです。

考え方その③「遅れた分取り戻さないと」

約半年の休職期間を経て職場に復職し、念願の入金業務を担当することになりました。断片的だった知識が繋がってきた矢先、またまた試練がやってきます。

東京への異動です。私は非常に動揺しました。なぜなら4月まで異動はしないと人事から言われていたからです。人事からその話が伝わったのか、上司から異動が中止になったと個別に告げられました。ただ改めて周知するから誰にも言わないようにと口止めもされました。この時の孤独感はすさまじいものでした。周りは異動するものだと考えているため、悲しげにお別れの挨拶をしてくるのです。こんなに辛いことはありませんでした。そして異動の取りやめが周知されると、前代未聞のことだったようで、今度は「何で異動がなくなったの?」と聞いてきます。この時から職場の人と話す事がしんどくなり、一人で抱え込むことも多くなりました。

さらにこの出来事がきっかけで新たな考えが浮かんできます。「社会人4年目になる来年4月に異動がでるのはほぼ確実。それまでに休職で遅れた分を取り戻さないと!」。この危機感から何か学びを得ようと、今まで以上に頑張りました。トイレにも立たず、ろくに飲み物も飲まず、がむしゃらに取り組んだ結果、1か月で限界をむかえ二度目の休職となりました。

そこからまた約半年休職したのち退職し、社会人生活に一旦幕を下ろしました。

まとめ

前職での紆余曲折を簡単に振り返りましたが、いかがでしたか?

改めて見て感じたことを率直に申し上げますと、「自分で自分を縛り付けすぎだろう」。この一言に尽きます。自分はこうあるべきだ、社会人はこういうものだと独自にレールを作って、その上をはみ出さずに進もうとする姿を見れば、誰だって「真面目だ」と言いたくなるでしょう。しかし、私は「これぐらいして当たり前」という気持ちがあり、それに気づけませんでした。

皆さんにお伝えしたいのは、「真面目だね」という言葉の裏には「頑張りすぎだよ」という意味が含まれている可能性があるということです。

もしこの記事を見て、「そういえば色んな人に真面目って言われるな」「この考え方めっちゃ分かる!」と感じたのであれば、今一度立ち止まって、「どういうところでそう評価されるのか」「それは度を越えたものではないか」を整理してみるといいかもしれません。その真面目さが、うつへのきっかけになる可能性だってあるのだから。

凝り固まった考え方を溶かすこと、これがうつ症状の予防・回復につながると私は思っています。

木塚乃滝

木塚乃滝

先天性脳性麻痺により左半身が動かしにくい身体を持つ1994年生まれの男。
さらに社会人2年目の23歳で「抑うつ状態」と診断されました。
身体障がいに精神疾患。一見多難にみえますが、希望にあふれた日々を過ごす毎日です。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

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