ナルコレプシーとは?~自分でコントロールできない睡眠障害

睡眠障害

出典:Photo by Kasper Rasmussen on Unsplash

ナルコレプシーという病気を聞いたことがありますか?自分の意志に関係なく眠ってしまう病気です。睡眠障害の一種ですが原因不明の部分が多く、治療法もまだ確立していません。

ナルコレプシーとは

ナルコレプシーはオレキシン(ヒポクレチン)を作り出す神経細胞が働かなくなるために起こる過眠症です。

突然強い眠気に襲われ、眠り込んでしまうのですが、眠気が襲ってきたことに本人が気づく前に眠り込んでしまい、「知らない間に寝ていた」ということが発生します。

実はこの病気、世界中で見ても日本人の患者が最も多いと言われており、一説では欧米に比べて8倍~14倍、発症率が高いとされています。そういった意味では、私たちの身近にある病気とも言えます。

ナルコレプシーの発生年齢と4つの特徴

ナルコレプシーの発症年齢は幅広く、なかでも10〜20代前半に集中し、特に中学生から高校生ぐらいの年歳が発症のピークとされています。中年以降での発症はほとんど見られません。 また、患者には次の特徴的な4つの症状が見られますが、4つ全てが当てはまる患者は約25%程度といわれます。

睡眠発作
ナルコレプシーにおける眠気は、健康な人が2日間徹夜した時に感じる強さに匹敵します。眠気が襲ってくる前に無意識に眠り込んでしまうため、本人も居眠りをしたことに気づきません。一度の睡眠時間は数分から1時間以内と短いのですが、覚醒から2時間経つとまた強烈な眠気に襲われます。

情動性脱力発作
感情の高ぶりがきっかけとなって、いきなり全身の力が急に抜けてしまう「カタプレキシー」とも呼ばれる発作が起こります。数秒から数分たつと眠気は回復し、力が戻ってきます。また、発作の強さは頭や首が前に垂れ下がる、あごが落ちる、身体に力が入りにくくなるなど人によってさまざまです。

睡眠麻痺
睡眠麻痺はいわゆる「金縛り」と呼ばれるものです。入眠時や目覚めた直後に体験し、数分以内で落ち着きます。健康な人の睡眠は、深い眠りの「ノンレム睡眠」と、浅い眠りの「レム睡眠」が約90分周期で一晩に4~5回繰り返されます。簡単に説明すると、「ノンレム睡眠」は身体が起きていて、脳が眠っている状態で、「レム睡眠」では身体は深く眠り、脳が起きている状態です。ナルコレプシー患者は「レム睡眠」が、入眠した直後におとずれます。 そのため、意識はあるのに体は動かせないという「金縛り」の状態が起こりやすくなると言われています。

入眠時幻覚
入眠時に現実感のある夢を見る症状が「入眠時幻覚」です。人によっては「悪夢」を見ることもあります。また多くの場合「金縛り」と同時に発生します。

ナルコレプシーの検査

ナルコレプシーの検査には以下のものが行われます。

終夜睡眠ポリグラフ:一晩中の睡眠ポリグラフを検査します。日中の眠気の強さを測定するもので、2時間ごとに一日4回30分ずつ測定します。

血液検査:99%以上のナルコレプシーの方は白血球の血液型検査で、白血球の血液型であるHLAがHLA-DR2とDQ1が陽性であることが知られています。

現在の所、ナルコレプシーの直接的な原因はわかっていません。しかし近年、脳の中の神経ペプチドである「オレキシン(ヒポクレチン)」とナルコレプシーとの関係に注目が集まっています。「オレキシン」は摂食行動や、睡眠、覚醒の制御などをつかさどります。多くの患者にこの「オレキシン」を作る神経細胞に何らかの異常があることが確認されています。さらに脳脊髄液中の「オレキシン」が不足すると、ナルコレプシーの発症確率が上がることもわかってきました。しかし、この細胞が消失する原因は依然として不明のままです。

ナルコレプシー治療

現在のナルコレプシーの治療は、「生活改善」と「抗うつ薬と覚醒作用のある薬の併用」の二種類が主となっています。また、治療では完治を目指すのでなく、症状の緩和を目指します。薬物療法では最初に弱めの薬から徐々に強めの薬を使用していきます。生活改善とはその名の通り、規則正しいを送ることです。昼寝を適度に取るといったことも有効的です。

まとめ

ナルコレプシーは病気と知らない人からすると、「怠け者のレッテルを貼られてしまう恐れがある」やっかいな病気です。筆者の前職でもナルコレプシーの同僚がいました。投薬を中心に治療しながら、出社と休職を繰り返していましたが、残念ながら最終的に退職を余儀なくされました。もし、仕事などでナルコレプシーの方を見かけても、決して怠けているわけでは無いということを知ってほしいです。

参考文献

【厚生労働省e-ヘルスネットナルコレプシー】
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp

【脳科学辞典:索引ナルコレプシー】
https://bsd.neuroinf.jp

tkbn

tkbn

40代男性。30代半ばでうつ病を発症。40代になって発達障害の疑いありと診断される。就労支援機関で自分の特性について学び、最後の就活を終えコラムを書いています。趣味は鉱石収集。年2回大阪・京都で行わるミネラルショーや即売会に行って、気に入ったものをコレクションするのが楽しみですが、部屋で飾る場所が無くなっているのが最近の悩みです。

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