「生きづらさダヨ!全員集合」オンラインイベントレポート④~生きづらさを話すメリット

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Choose Life ProjectのYouTubeチャンネルにて8月30日から配信されている「生きづらさダヨ!全員集合」の動画を何回かに分けてレポートしていきます。動画はGet in touch公式ホームページでも視聴できます。

4人のメインスピーカーによる生きづらさ発表を軸とした番組構成となっており、「否定しない」「比較しない」「指導しない」をモットーに100人の一般オーディエンスもZoomを介して参加しています。

最後のスピーカーはアートディレクターの五十嵐LINDA渉さんです。五十嵐さんの話はあちこち飛んで行って主軸が分かりづらく、「生きづらさ」の内容も分かりません。ただ、「生きづらさ」を吐露する機会がいかに大切かを重々理解しているようでした。

(コラム中に出る「」は東ちづるさん、「五十嵐」は五十嵐LINDA渉さん、「みたらし」はみたらし加奈さんを指します。)

軸のない話

五十嵐「生きづらさがあったからこそ、いまアートのクリエイターとして活動しているんだなと気付いていて、生きづらくても創作に打ち込む余地はあります。しかし、本当に生きづらさを感じることもあります」

こう切り出す五十嵐さんは自分のルーツ・性指向・持病について一通り話されました。五十嵐さんの語る「生きづらさ」は、誰もが抱えるであろう生きづらさに通じていると思います。

五十嵐「小学3年生から違和感を覚えました。児童も保護者も輪になってグループを組むことが多くなるじゃないですか。輪になって喋っているような。別にグループへ入って馴れ合おうとも思わず、グループから漏れた1人2人と仲良くしていたので、仲良い人とは本当に仲良くやっていました。そのせいかいじめの標的にされ、中学2年まで続きました。他人と馴れ合わなければいけないのか、一人でやっていてもいいのではないか、何故わざわざ人の輪に入って仲良いフリをしないといけないのか、という生きづらさですね」

最初は、群れなければいけない少年時代の生きづらさでした。しかし、すぐにまた別の生きづらさを語り出し、話の軸がブレてきます。

五十嵐「今は仕事で色々とコミュニケーションをとりますし、本質的に自分は明るい性格なんですよ。それでも深く考える癖があって、納得いくまで考え込むことが多いわけです。質問されて考え込む様子を見てネガティブだと思われる事もあります。真剣に考えているにもかかわらず勘違いされてしまう」

今度は考え込むクセについて語り出しました。しかも、先ほどの話と違って「本当は明るい性格」と言った日には、聞いていて混乱しました。

五十嵐「持ち前の明るさでバカっぽく振舞おうとしていた時期もあり、自傷行為さえもしていました。一番つらかったのは、自分自身を道化にして笑わせることで『こいつは仲間だ』と思われることですね。今はありのままに生きていますけれども、実は孤独が大好きという自分もいまして」

結局何が言いたかったのか理解できませんでした。後の流れで、「生きづらさを吐露するメリット」にシフトしたのは救いです。

考え込むクセ

「今は自分を大切にできていますか?」
五十嵐「やっとそうなれたかなと、少しだけ思えるようになりました」
「自分より他人を優先することは?」
五十嵐「今日はそれをカウンセラーの先生もいらしているので相談しようと思っていました。自分自身がどういう状態か知るのも好きですから。それで以前から思うところがあって調べていたことがありまして、自分が『HSP』ではないかと思っているのです。すべて他人が優先で」

自分がHSPではないかという五十嵐さんの疑問に、臨床心理士であるみたらしさんが解説します。

みたらし「HSPとはHighly Sensitive Personの略で、すごく繊細だとか傷つきやすいとかで最近メディアにも取り上げられて『自分はHSPではないか』と思う人も増えています。ただ、HSPという診断名は無く、あくまで当人のパーソナリティ傾向なんですね。人によってセンシティブな部分や乗り切れる部分は異なるので、そういう一面がある程度に捉えてもらえればいいかなと思います」

なんと、HSPが正式な診断名でないとは初耳です。人による敏感な部分の違いといえばそれまでなのですが、どうしても我慢できないとなると折り合いをつけるのは難しそうです。感覚過敏などとも似通った部分があり、今後の解釈がどうなるか気になる分野ではあります。

五十嵐「自分がHSPでないかと、また深く考え始めるのですが、深く深く掘り下げた末、診断名によって傷つく人も多いのではないかとも思ってしまいまして」
「一人で深く考え出すと負のスパイラルに陥ってしまって、自分の思う通りに生きると迷惑をかけているのではないかと思っていますか?」
五十嵐「そうですね、嫌われるかもという恐怖心もあります。しかし考えることで誰かを助けられる可能性も確かにあって、それが勇気や活力になっている側面もあるのです」
「活力になることもあれば、自己犠牲になっていることもあるということですね」
五十嵐「はい。つい2年前までは自分の話を誰が聞いてくれるのか、自分のことは誰が助けてくれるのか、自分の心の声は誰が聞いてくれるのかという悩みがありました。最近はそれも素直に言えるようになって、自分を守れるようになったかなと」

生きづらさを吐露するメリット

「なぜ今回、この場で赤裸々に語ろうと思ったのでしょうか」
五十嵐「HIV感染者の友人が、『生きづらい』と泣きついたので相談に乗ったことがあります。彼は職などにも恵まれていた方で、ただ励ますことしかできませんでした。恵まれているように見えた彼が、毎日の通勤で『こう思われているのでは』などと不安がっていたと分かり、自分が情けなくなりました。しかし、彼に『心の奥を話せてよかった』と言われたのが、ここへ参加するきっかけでもあります。やはり話してみることは大事なんだなと」

勝ち組だと思っていた友人が、HIV感染者であるがゆえに毎日他人からどう思われているか不安がっていると聞かされたのが、「生き全」で語ろうとするきっかけだったようです。

「弱音を吐いてネガティブなものを出すのは大事ということですね」
みたらし「大事ですね。溜め込んでいると心が折れますし、吐露することが誰かを励ますことになるかもしれませんし」
――五十嵐さんの話と自分の人生が重なる部分を感じました。自分も昔からいじめを受け続けて抑うつ状態にもなりました。就職は出来たのですがパワハラが酷くて、精神科への通院で休むと言っても「気合で治せ」と言われ結局辞めました。それからは精神科のデイケアに通っていたのですが、そこで統合失調症と分かり、かれこれ20年付き合っていたことになります。

オーディエンスも生きづらさを語り、吐露するメリットについて改めて振り返られます。

「こうして自分のことを言って共有してもらうのは、いいですね」
みたらし「自分の症状を多くの前で話すのは勇気が居ると思います。だからこそ、こうして当事者意識を持って話してもらうと、沁みる訳です」
「ふつう自己紹介などをすると『いいこと』を言いがちで、自慢すらしてしまう訳です。こうしてSOSを発信したり生きづらさを共有したりすると、一種のカタルシスがありますね」
五十嵐「本当にこの場へ来てよかったです。毎月やってもいいくらいですね。課題解決に至らなくても」
「今回、生きづらさを公にするのは良くないのではという声もあって悩みましたよね」
五十嵐「悩みました。しかし、話すこと自体がそもそもポジティブな行いではないですか」
「言語化にはエネルギーが要りますが、そこから共有も出来ますよね」

4人の語りを終えて

配信の総括として、東さんとみたらしさんが締めの感想を述べました。

「ここまで4人の様々なストーリーがありましたが、いかがでしたか」
みたらし「日本はこうしてグループセッションする文化に疎く、多くの人へ自己開示したり自分のしんどさを曝け出したりする機会が少ないと思うのですが、本当は必要な事だと思います。知ることで自分にもプラスになりますし。
それから、『かわいそう売り』まではしなくていいですが、自分が人生の中で感じてきた痛みやしんどさや分かってもらえなさの話こそ、人の心へセンセーショナルに刺さるんです。自慢話や成功体験よりも、その人がどう悩んでどう結論を出したかの方がよほど考えさせられるし自分も励まされるものだと、再確認できました」
「こういう話が家族間や友達間でも出来るようになるといいですね。共有していく中で社会構造や制度への疑問や疑念に繋がっていき、『どうしてこのままなのか。』『選挙でも変えられないか』という気付きにもなっていくわけです」

この後、出演者たちの告知や宣伝を経て配信は終わりを迎えました。それぞれの生きづらさを話す機会が大切と分かり、自分もこうして生きづらさを吐露できるチャンスが来ればいいなと思います。それを「傷の舐め合い」と蔑み悦に浸る人もいるでしょうが、そうして生きづらさを隠し他人を叩いて生き続けるのも一つの選択肢ではあるでしょう。

書き起こしの量が多すぎて自分の感想を入れる余地は少なかったですが、所々要約やカットや意訳をしており、それもまた感想の一部になると思います。ともあれ、これで「生き全」第1回目のレポートは終了となります。ありがとうございました。

障害者ドットコムニュース編集部

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「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、障害・病気をもつ方の仕事や暮らしに関する最新ニュースやコラムなどを発信していきます。
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