『旅立つ息子へ』公開記念×4/2 (金)世界自閉症啓発デーオンライン座談会イベントレポート

発達障害
国連が定めた「世界自閉症啓発デー」にあわせて、オンライン座談会を実施。ゲストには、障害のある方の「働く」「暮らす」「育む」を応援する障害福祉情報メディア「障害者ドットコム」編集長の川田祐一さん、着物文化を継承したファッションブランドを立ち上げ、伝統職人と障害者雇用を結び付けることを目標に活動している「KUDEN」デザイナーの佐藤貴浩さん、発達障害のお子さんを持つパパの子育てを支援する、NPO法人ファザーリング・ジャパンの「メインマンプロジェクト」リーダーの橋謙太さんをお迎えし、映画をきっかけに私たちが発達障害を知ることで何ができるのかを一緒に語り合いました。
【4/2(金) 実施 『旅立つ息子へ』公開記念×4/2 (金)世界自閉症啓発デーオンライン座談会】

発達障害を理解し、誰もが生きやすい社会を考えよう
■日時:4月2日(金) 21:00〜22:00       
■登壇者: 川田祐一(障害者ドットコム株式会社 代表取締役/「障害者ドットコム」編集長)
佐藤貴浩さん(Gerbera Design代表/KUDENデザイナー)
橋謙太さん (NPO法人ファザーリング・ジャパン メインマンプロジェクト・リーダー)
司会:ロングライド
■アーカイブURL: https://youtu.be/W6M1G0H5kPk

まず本作の感想について、佐藤さんは「自閉症の息子がいて、自分も息子を連れて逃げ出したいと思うことが何度もあって、物語に共感できた。演出過多じゃないところも良くて胸を打たれた」と語る。橋さんは「映画的な完成度が高く、障害を扱った映画は押し付けが強い印象があるけど、そういったところがない。チャップリンの『キッド』の使い方もすごく効果的だった」とコメント。川田は「自然にストーリーが入ってきて感動した。ダンスのシーンがとても好きで、ラストシーンは本当に涙が止まらなかった」と話す。

劇中では、自閉症スペクトラムの息子ウリが、寝る前に壁にあるスイッチのイラストをタッチするルーティーンの行動や、お父さんと息子だけが通じる特別なコミュニュケーションの姿が描かれている。自身の子育てやサポートする立場として共感できたことついて、自閉症の息子さんを持つ佐藤さんは「人によって違うけど、自閉症の子は変化に弱い。ぱっと見、自閉症とはわからないけど、何かのスイッチが入ると症状が出てしまう姿を見ているので、その点がリアルだし大切に描かれていて、当事者としてもその辺りがすごく良かった」とコメント。橋さんは「自閉症スペクトラムの娘がいるけど、ルーティーンから外れるのがすごく苦手。劇中で息子が迷子になったシーンがあるけど、ああいうことはよくあって、父親のドキドキする感じが身につまされる。本人はけろっとしていて…。娘がウリと年が近いのでそういう意味でも、共感できた」と子育てと重なるシーンがあったと振り返る。川田は「自閉症というと問題行動にばかり目がいきがちだけど、行動の裏にある根本を見ることが大切。関わり方で行動も変わったりするので、相手を治すより、自分がどう接するかが大切」とサポートする立場から語る。

映画のなかでは父親が息子へ愛情を注ぐ一方、周囲を頼らず子育てする姿も。そこから感じたことについて、佐藤さんは「『あなたがいなくなったらウリはどうするの』というセリフがすごく刺さった。自分が死んだあと、息子が働く場所をどう作るか、今がまさにその時。しっかりと会社として経営を立てて、支援もしていけるような環境を作っていきたい」とご自身の仕事と重ねながらコメント。橋さんは「後見人の話は、障害者の子どもを抱える親御さんたちはみんな同じ思い。映画の父親も自分の老いを感じているので、どこかで頼らなければならないのは分かっている。施設のスタッフが1年おきに変わることを心配しているけど、自分も学校で先生が変わることはかなり不安だから、気持ちがよくわかる。周囲に頼ることは大切だし、社会環境が障害に対して理解が深まるような状況になるべき」と話す。川田も「周りの支援が子育てにとって大切。自分で頑張んなくちゃという人が多いけど、ヘルプが言えるのも大事」と支援者として関わっている観点から語る。 また、橋さんは「イスラエルと日本のジェンダーの価値観をあげながら、ジェンダーの差別がなくなることによって発達障害の子も生きやすい社会になる。映画の中で、父親の子育てが普通なのはすごく良いと感じた」と着目し、日本の共同親権のあり方も話題にあがった。

人生の重要なテーマである子供の自立について、佐藤さんはご自身のキャリアを振り返りながら「以前の仕事で当事者に解雇を告げたことがあって。障害者雇用はわかるけど、経営していくのはすごく難しい。KUDENは100年続く企業を目指して、将来は同一賃金が目標。ものを作る、売る、店舗を持つ…。いろんな職種を持つことで、お預かりするお子さんの個性にあわせた雇用をうみ出せる。日本の縫製技術の人材も減っていて、若い人が育っていないから、そこに障害を持つ子が学んで欲しい。息子に勤労の喜びを知って欲しいと思う気持ちが原点」と語る。橋さんは「福祉と経済活動が分離しているのは仕方ないところだけど、障害のある人を経済活動にのせるのはすごく大切。障害の人も得意分野がある、それが平均以下でもその人にとって得意ということもある。それを見つけてあげれば十分働いてもらえる。メインマンプロジェクトも“父も育児していこうよ”が原点。ファザーリング・ジャパンのテーマは“家族はチーム” 。特に発達障害の子だと、お母さんは不安を全部抱えきれない。お父さんは、妻の悩みを感じる場(幼稚園、保育園)に行くことが大切」とご自身の活動とあわせて話す。川田は「阪神・淡路大震災の時に、障害者の人が、率先して炊き出したりと与える側に回っていた。それに心をうたれて支援活動に関わった。最初は福祉の情報サイトは少なかったから、役に立つ情報を発信したいと思い障害者ドットコムを妻と始めた。エンタメやアートを取り上げながら、福祉の難しいイメージを変え楽しく分かりやすく身近に感じてほしいし、子どもたちの自立にもつながればと思う。サイトの運営も全員当事者がやっているので、そこを強みにして伸ばしていきたい」ときっかけから、今後の目標までコメント。

最後にこの映画を通して発達障害について知ることで、誰もが生きやすい社会を実現するためにどんなことができるのか。佐藤さんは「海外の文化、男女の違いなど他者との違いをどう受け入れるのか。経営者としても、生きていくうえでも、大切にしていきたい。これをきっかけに活発に意見交換できる場が出来てほしいし、違っていいということを感じられることが大事だと思った」と思いを伝える。橋さんは、「ふたつあって、まずひとつめはインドの格言に、人に迷惑をかけているから、人を許してあげなさいという言葉がある。日本は人に迷惑をかけないと教わるけど、インドは逆、生きていること自体が迷惑をかけている、だから人を許しなさいという考え。その方が優しい社会だなと思うし、そうした発想が重要で、助け合うことが大切。もうひとつは、困っているのは支援する側ではなく本人。この映画だと、ウリ。その行動は自分を落ち着かせるためにやっているケースもある。本人がすごく困っているから問題行動を起こしていることを忘れないで欲しい」とコメント。川田は「これからのテーマは地域共生。昨日から社会福祉法が改正し、取り組みが進められているけど伝わっていない。福祉を身近なものとして伝えて、誰もがお互いに支える、支えられるような生きやすい社会に。地域共生社会のテーマに我が事・丸ごと、という言葉がある。自分ごとのように考える社会、丸ごとみんな繋がって助け合う地域をつくっていきたい」と締めくくる。 本作の親子の姿を通して、自身の子育てやサポートする立場から共感できたことや、さらにこれから目指すべき社会について語って頂きました。映画配給ロングライドのyoutube(https://youtu.be/W6M1G0H5kPk)でアーカイブ視聴可能ですので、ぜひ映画の鑑賞とあわせてチェックしてください!

障害者ドットコムニュース編集部

障害者ドットコムニュース編集部

「福祉をもっとわかりやすく!使いやすく!楽しく!」をモットーに、障害・病気をもつ方の仕事や暮らしに関する最新ニュースやコラムなどを発信していきます。
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自閉症スペクトラム障害(ASD)

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