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連載コラム2017.8.30

ひとかき 『心の一歩 』vol.8

ひとかき 『心の一歩 』vol.8
『心の一歩 』 vol.8 <毎月30日連載>

後輩に聞かれた。佐久間さんは何に興味があるかと。自分は何に興味あるのだろう。水泳だけで充分なのかもな。そう思ったら、少し気が楽になった。

一つのことに集中することで、心の中に沸く雑音が消える。塩素の匂いが漂う、少しだけヒンヤリとした水に浸かることでスイッチが入り、つのる未来に対する不安、思い通りにならない日々の不満からくる苛立ちは、いつの間にか忘れることができる。あとは泳ぐだけだ。より速く、ゴールに目標にたどり着いてやろうと。

先日、今年度行われる『えひめ国体』の出場を決める千葉県予選があった。50mの自由形で自己ベストタイムには届くことはできなかったが、選考されたという電話を頂いた時は正直安心したし、ものすごく嬉しくなった。出場が決まったのだ。


千葉県予選では、50mを泳ぐのに54回手を回した。前半25mでは26回、折り返した後半は25mで28回であった。足が思うように動かないので、キックはできず、クイックターンをしても上手く壁を蹴り出すことが出来ないため、ここでのタイムアップはほぼ諦めている。足が使えないが、後半はストロークの回数が2回増えているのだが、50mを通して前半と後半でのストローク回数を比較すると、体力的な衰えは無かったと思う。しかし、自己ベストタイムには届かなかった。

タイムが伸びなかったのは、一回手を回した時の進み具合の問題であった。計算すると、ひとかきで10㎝でも先に進めば目標に届いた。足ほどではないけれど、上半身も制御が難しくなってきていることが原因だ。

だから考える。上半身の筋力アップでそれを補い、練習で手の位置や、角度を考えながら、体に動きを叩き込ませていく。ひとかきで、あと10㎝前に到達するために、どうしたらいいか。足の事は一切考えない。周りはキックしているように見えているだろうが意識していない。むしろ、あえて意識しないようにしている。意識するとバランスが崩れ溺れてしまうだろうから、キックは捨てた。まだ動く上半身で勝負する。

手は日々不随意運動が現れだしている。しかし、可動域が狭まったわけではないので、振える兆候が出た時、又振るえている最中、ストレッチをやってみたり、体に手を近づけたほうがいいのか?とか遠ざけたほうがいいのか?上か?下か?とかいろいろ考えて、動かすことを実践している。どうしようもないときは、薬に頼っているが、まだ、身体を動かすということに関して、どっかで多少の改善策もあるはずだし、人よりも自分の身体なのだから、自分しかわからないこと絶対あるはずだと信じ探求している。

暖かい部屋で体を十分温めて、ストレッチ・柔軟をしっかりとやり、限られた時間の中で『どうしたら、泳ぐことができるのか?前に進むことができるのか?』を真剣に考えている時間が幸せだ

ひとかきで、より先に進む。

泳げているうちは永遠に考えていきたい。

ライタープロフィール
佐久間 勇人(さくま はやと)
佐久間 勇人(さくま はやと)

約7年前、小脳が萎縮し、伝達神経系が徐々に破壊されていく神経難病脊髄小脳変性症であることを知りました。そこから今日までは沢山の経験・後悔がありました。人と出会い、生まれた笑顔、そのありがたみを人一倍感じとり、今まで気が付かなかったようなことを学べてきたような気がします。
ハンデがある。でも、それは「個性」でもある。そう思うようになった時、生き方がかわりました。そして、障がい者水泳というスポーツに出会うことが出来たのです。
目標を持ち、チャレンジし、全国障害者スポーツ大会(2015わかやま大会・2016いわて大会)においては新記録を樹立しました。まだまだやりたい。まだまだチャレンジしたい。継続していくことに最大の意義があると思います。何もしないで、後悔するのではなく、「いま」できることを思いっきりやりたい。
限りある時間の中で出会うべくして出会えた“こと”。体験の中で見つけた思いをお伝えしています。

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