セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜

「待つことは、大事」(セコラム!第11回)

『セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜』 vol.11 <毎月25日連載>

個人的なことですが、いまの仕事を今月末で辞め、来月から新天地で障害者福祉サービスの立ち上げに関わります。
賛否両論ありますが、残った有給を消化するために、ここ1ヶ月くらい有給を定期的に取得しています。
そのため、この1ヶ月は1歳の息子と2人で過ごす日がたくさんありました。

当たり前ですが、子育ては予定調和にいきません。自分の思い描く1日の流れをなぞるように生活をするのは難しく、「PC作業を終わらせよう」「面白そうなイベントに行こう」これらの予定は、ことごとく壊されました。
息子は、僕の予定に合わせて生活をしているわけではありません。僕の気持ちを察して過ごしているわけではありません。

頭でわかっているのですが、思い通りにいかないもどかしさを感じます。
イライラが浄化した後に、この状況を振り返ってみました。
「息子はいましたいことを欲求のまま全力でしている。この思いを僕の予定や常識にある程度当てはめずに、したいことが出てくるのを待ち、したいことをしている様相を見守ることが、彼を尊重することにつながる」

これは、障害者支援の現場にも通ずる考え方です。
ぼくはヘルパーとして障害者の生活をサポートしています。支援者ではなく伴走者という立ち位置で、障害のある1人ひとりと一緒に彼らの生活をつくっていく揺るがない信念を持っています。

だけれども、無意識に自分の常識を押し付けていたり、Aさんがしたいことであろうことを強いたりと、Aさんの生活を尊重できていない状況をつくってしまうことがあります。
僕が思い描いた彼らの過ごし方が叶わなければ、息子との接し方と同様、イライラしたりモヤモヤしたりするかもしれません。

人は誰だって波があります。浮き沈みがあります。
いつも夕食後にお風呂に入る人が、お風呂に入ってから夕食を摂ることがあります。いつも美術館に行き、作品を鑑賞している人が、スポーツにいそしむことがあります。いま、これがしたい・したくないは、環境や気分によって変わります。

僕のような伴走者は、待つことをプロフェッショナルにしていかなければいけません。彼ら自身の意志で、彼ら自身が行動することをじっと待つ忍耐力。彼らのことをじっと見守り、彼らから漏れ出す思いやニーズを掬い上げる見逃さない力。そして、彼らが何を欲しているのか、何を思っているのかをイメージする想像力。それらを発揮すれば、彼ららしい生活を送るようなサポートができます。

最近の子育て生活を通じて、「待つ」ことの重要性に改めて認識したと同時に、「待つ」ことができていなかったことに気付きました。

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

就職活動に失敗し、何となく障害福祉の世界へ。障害者が暮らしやすいまちをつくるNPO法人サポネや医療福祉エンターテインメントのNPO法人Ubdobeなどを経て、農業を中心とした障害のある人が働く拠点「三休 – Thank You -」を今年4月にオープン。それ以外にNPO法人月と風と理事やKAIGOLEADERS OSAKAコアメン、ふくしあそび探求舎代表を務める。

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