「殺処分」書き込みに提訴!書き込む者は「特に何も考えていない」?

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Photo by John Schnobrich on Unsplash

5ちゃんねる(元・2ちゃんねる)は内外から「便所の落書き」と卑下ないし揶揄されてきましたが、例えば犯行予告を書き込んで逮捕されるニュースから分かる通り、「便所の落書きなんだからムキになるな。大目に見ろ」などといった屁理屈は通用しません。

直近でも、重度身体障害者が自身への誹謗中傷について訴訟を起こしています。担当弁護士が原告を通じて垣間見たのは、責任感どころか特に何も考えていない浅薄なネット民の姿でした。

きっかけはニュース速報+

原告の男性は、骨の成長に異常が生じる「脊椎骨端異形成症」を抱えている重度身体障害者で、現在は左手をわずかに動かせる程度です。日常生活の全てで介護が必要なので、24時間体制の介護サービスを求めて前橋市に行政訴訟を起こしていました。2022年4月11日のことです。

5ちゃんねる内の「ニュース速報+板」では、この件を受けたスレッドが立ち、婉曲的に言えば赤裸々な書き込みが数多くなされました。男性はこのスレッドについて「植松聖のように自分の生存価値を否定する者が居るかもしれないと考え、日々の生活において恐怖を感じるようになった」と述べています。

東京地裁の開示命令によって、「殺処分でええやん」と書き込んだ東京都の男性と「生かしておく理由がないなあ、一思いに殺してやれよ」と書き込んだ愛知県の男性の2人が特定されました。翌2023年4月12日、原告男性は、書き込んだ2人に対してそれぞれ約196万円の損害賠償を請求し、前橋地裁に訴えを起こしています。

訴えた理由について原告男性は「障害者が権利を行使すると、生きる価値まで否定されるような社会であってはならないと思い、今回特定できた加害者に対して裁判を起こした」としています。まあ有象無象から「地を這っていろ」「身の程を弁えろ」などと罵られる筋合いはないですよね。

開示と言えば大学の頃、匿名掲示板に大学の悪口(というか罵詈雑言)が書き込まれていたのを見て学生課に質問したことがあります。警察などに相談しないのか尋ねると、「誰が書き込んだかを開示させるのは難しい」と言われました。開示請求を通すのは難しいのでしょうか。それとも今は難易度が下がっているのでしょうか。

画面の向こうの無責任なヤツら

原告の担当弁護士である下山順さんは、「中傷を許さないという意思表示が大事」として開示請求を勧めました。その結果、「(原告の)人格的価値を否定するもので、社会通念上許容される限度を超える侮辱行為」という強い非難も添えた開示命令に至ります。別の中傷書き込みをした者も、何人かが電話で謝罪を申し出ました。

中傷書き込みをした中で、数人が下山弁護士と会話しました。ある人は「簡単な気持ちで書いてしまった」と震え声で語り、またある人は「具体的には思い出せないがこれだと思う」と記憶が曖昧でした。下山弁護士は彼らについて「責任意識の希薄さを感じた」「『障害者が憎い』というよりも、面白半分で書き込んでいたようだ」といった印象を語っています。要するに特に何も考えていないだけだったようです。

かのスマイリーキクチさんも、下山弁護士と同じ光景を見、同じ感想を抱いたのではないかと思います。キクチさんへの長期にわたる誹謗中傷は、開示請求の嚆矢(こうし)となるネット史上の大事件でした。

取り調べを受けた19人について、キクチさんは「ほとんどは何処にでもいる普通の人」「情報を仕分け、疑い、考える力が欠けている」「無責任でしばしば他人のせいにする」といった印象を抱いたそうです。キクチさんの件は、情報リテラシーの欠如や正義中毒の側面も含まれているのですが、書き込み主の無責任さについては共通しているのではないかと思います。

余談ですが、スマイリーキクチさんは現在でも僅かながら誹謗中傷を受けており、2017年には殺害予告を受けて番組出演を取りやめたこともあったそうです。もはやブランド化した「スマイリーキクチ」そのものを激しく憎悪し、「スマイリーキクチ的」な言説や説教を嫌厭するネット民は珍しくないかもしれません。

一連の訴訟について下山弁護士はこう語ります。「自分の近しい人が障害者になっても同じことを言えるのか。優生思想がはびこると、少数の人の権利が蔑ろにされてしまう。差別に毅然と対応することが重要だ」

憎しみは確かに存在する

特に何も考えておらず自身の意見など持っていないくせに、露悪的な書き込みだけはするようなあり方は、如何ともしがたい自身の弱さを誤魔化すうえで最悪の方法です。匿名で無差別かつ無責任に、弱者(と自分が見做した属性)全体への罵詈雑言を飛ばす手合いが昨今は増えてきましたね。自分を「何にでも噛みつき物申す“狂犬”」と思い込んでいるのか知りませんが、相手を選ぶ時点で狂犬ではありません。

それはさておき、下山弁護士は書き込み主のことを「障害者への憎しみよりも面白半分でやっていた」と評していました。しかし、本当にそのような手合いだけかというと疑わしいのが正直なところです。

フィールドは違いますが、Twitterでは時折、障害者に対する憎しみの炎がメラメラと燃え盛っています。つい最近でも、知的障害者からのセクハラ報告が大バズりしました。そして、待っていたかのように同調意見や真偽不明の体験談が噴出しました。

この手の体験談は押し並べて、性衝動を抑えきれない知的障害者と放任主義の親という組み合わせがテンプレ化しており、2ちゃんねる時代の障害者コピペを蒸し返しているだけではないかと勘繰ってしまいます。もし被害を受けたのが現実であるのならばご愁傷様ですが、だからといってヘイトを垂れ流したり私刑を煽ったりしていい理由にはなりません。

障害者への憎悪と復讐で人生を浪費している有象無象は、ネット上の割と浅い所を徘徊しています。以前、そうした手合いを糾弾するコラムを書いたところ、「これはセカンドハラスメントだ!」という感想をエゴサーチで拾ってしまいました。

なんでも、知的障害者に絡まれた腹いせに「障害者 被害」で検索して私の過去記事を見つけ、余計に気分を害したのだそうです。かなり被害者意識が先行しているようでしたが、こういう人間がヘイト言説に余生を捧げてしまうのでしょうね。

参考サイト

「殺処分で…」5ちゃんねるで中傷 重度障害の男性、投稿者を提訴
https://mainichi.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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