国連人権理事会はジャニーズ問題の裏で何を語ったのか
暮らしPhoto by Gayatri Malhotra on Unsplash
8月の頭くらいに国連人権理事会の記者会見が開かれ、12日間の訪日で得た情報や所見などが報告されました。ただ、報道陣の興味はジャニーズ事務所の性暴力問題にしか向いておらず、揃いも揃ってジャニーズの事しか質問しない様子でした。中には英語で長々と質問して残り時間をドカ食いした方もおります。ジャニーズ発言でメディアの興味を惹いたからこそ、国連人権理事会の会見が注目された側面も否定できませんが。
国連人権理事会はあらゆる人権を幅広く取り扱っており、企業や自治体だけでなく福島第一原発の元作業員や技能実習制度の外国人といった幅広い対象から取材や調査をしています。ただ、あまりにも範囲が広いので一つ一つに割ける熱量はどうしても小さくなります。「技能実習制度と移民労働者」「ビジネスと人権」「メディアとエンターテイメント業界」をはじめ、女性やセクシャルマイノリティや労働組合、そして障害者などについても語られていましたが、1時間半を超える会見の中で扱われた時間はごく僅かでした。
障害者の人権に限って言えば、報告は「法定雇用率を定めてはいるものの、実際の障害者雇用率を見ればまだまだ改善の余地がある」「職場のアクセシビリティ、個別支援、合理的配慮、包括的研修の実施などで以て障害者権利委員会の提言に従うよう政府に促した」というだけの簡素なものでした。ですが、公金を受けながら合理的配慮を投げ出す特例子会社なんてものも国内にはあるので、この程度の簡素で小さな報告でも結構効いてくるのではないでしょうか。
国連人権理事会は、問題の指摘ばかりというわけではありません。例えば、札幌市が掲げるLGBTフレンドリー指標制度を模範として称えるなどしていました。「日本の人権における状況は進んだと思っていますか?」というジャニーズのオマケとしか思えない質問にも「大きな進展はあるが、システム上の課題も残っている」と回答しています。
ところで、この会見が終わった直後に、同じ場所で元ジャニーズ事務所の性被害当事者らによる会見が開かれていました。報道陣がジャニーズに拘ったのも、こうした(地理的な)事情があるのかもしれません。何事も一度の外出で済ませたいものですよね。
参考サイト
国連人権理事会の会見動画(ノーカット版)
https://www.youtube.com
ジャニーズ以外にもこんなにも…日本の問題 国連人権理事会作業部会の指摘
https://www.tokyo-np.co.jp