障害者vs特殊詐欺
暮らしPhoto by Nohe Pereira on Unsplash
ある日、駅の乗り換えで歩いていたところ、「ちょっとアンケートに答えてくれませんか」と要求する妙な男に話しかけられました。明らかにキャッチセールスの類だと思い無視して通り過ぎたのですが、まるで家庭科の教科書か何かからそのまま出てきたような言い回しだったのがかえって印象的でした。きっと、そのキャッチについていくと、本の世界に閉じ込められるのでしょう。
さて、特殊詐欺に詳しい人の間では、知的障害や発達障害を持つ人は高齢者と同じくらい狙われやすいのが通説です。やはり知識の少なさや判断能力の鈍さに付け込まれているようで、怪しい投資話に巻き込んだり高額な商品を買わせたりする輩が存在します。ものによっては、貴金属をローンで買わせておいて現物を持ち去り、借金だけ押し付ける極悪な事例もあります。
タチの悪いことに、一度被害に遭った障害者は「カモ」として情報を共有されており、後で別の被害に遭うリスクが跳ね上がります。しかもSNSやオンラインゲームで接触してから一気呵成に金を引き出すので、発覚の遅れと被害額の増大は避けられません。障害者は貯蓄や収入こそ少ないですが、ローンを組ませたり個人情報を盗んだりすれば貯蓄以上の額を搾取できるため、詐欺師にとっても低リスクなターゲットなのだそうです。
元特殊詐欺グループだという人間は、加害者心理をこう語ります。「SNSのプロフィールに病名などを書いている人がいますが、ああいうのが絶好のカモです。発達障害や精神科通いを明かすのは、自ら詐欺に嵌めてくれと言っているようなものですよ」酷い場合は、障害者向けのコミュニティサイトに入り込んで獲物を探すことすらあるようです。
また、いわゆる闇バイトの「鉄砲玉」として使い捨てられる形で、特殊詐欺の「加害者」となってしまうケースもあります。具体的には電話をかける「かけ子」、金を受け取る「受け子」、口座から引き出す「出し子」などです。背景として挙げられるのは、狭く限られた人間関係、社会参加の乏しさ、そして貧困です。障害者は就労が難しく、出来ても低賃金に甘んじるのが大半です。そこに金をちらつかせて「闇バイト」に誘い込む訳ですね。こう聞くと、全ては障害者の社会隔離に勤しんできた先人たちによる宿題ではないかとも思えてきます。
参考サイト
特殊詐欺のターゲットになりやすい「高齢者」と「障がい者」
https://shueisha.online
中田弁護士のコメントが、弁護士ドットコムニュースに掲載されました。
https://asyl-law.com