「金沢プライドウィーク2023」セクシャルマイノリティへの理解促す取り組みを北陸にて
暮らし去る10月7日から9日の3日間、石川県金沢市ではLGBTQ+、いわゆるセクシャルマイノリティへの理解を啓発するイベントとして「金沢プライドウィーク2023」が開かれました。この取り組みは今年で3年目となり、9日に行われたメインイベントである「金沢プライドパレード2023」では過去最高の700人が参加して金沢市の中心部を練り歩きました。
乙武洋匡さん、アンミカさん、小島慶子さんら多数のゲストも参加
プライド(Pride)は誇りや自尊心だけでなく、ライオンの群れという意味も持っています。だからこそ、それぞれの誇りを訴える集まりとして「プライド」と名付けられたのでしょう。「ハッピープライド」を合言葉に進められた本イベントは、そして主催者の思いとは何なのでしょうか。
過去最大規模の行進
メインイベントとなる「金沢プライドパレード2023」では、しいのき迎賓館を出発して金沢市内中心部の3.3kmを練り歩きました。3年目となる今回は、当事者や支援者など約700人が集まり、過去最高の動員数となりました。参加者の中には、タレントのアンミカさんや作家の乙武洋匡さん、馳浩石川県知事の姿までもありました。
パレードの参加者たちは、トレードマークであるレインボーフラッグや、それぞれの願いを込めたプラカードなどを掲げ、決められたコースを2時間かけて練り歩きました。沿道からも手を振り返すなど、温かな反応が返ってきています。
パレードについて、乙武さんは「どちらかといえば北陸は保守的な地域だったと思うんですけど、こういう形で少しでも認知が広がるといいですね」と、アンミカさんは「ハッピープライドという言霊で1つになった最高の時間。本当にこれをみんな胸に刻んで後世にどんどんと継いでいきましょうね。みんなが幸せに生きる権利と未来のために続けていきましょう」とそれぞれ振り返りました。
イベント盛り沢山の3日間
石川県馳浩知事もパレード行進に参加
パレード以外のイベントも多数用意されており、性の多様性について考えさせられる3日間に仕上がっていました。また、パレード前後に連動してオープニングパーティー、前夜チャリティ企画、アフターパーティーも開催され、パレードの脇を固めています。
1日目はトークセッションが中心となり、教育・医療・企業の3分野とセクシャルマイノリティの関わりがパネルトーク形式で講義されました。2月にオープンしたばかりの「金沢にじのま」を会場に、幅広い分野の講義が行われます。医療分野で解説した講師は、「治療さえすればHIVは全然うつらないと伝えていく。伝え方は難しいだろうけど、決して諦めない」「すごく活気があった。地方でも特に保守的な考え方が多そうな場所で、ここまで活動を続けられているのは良い驚きである」と振り返りました。
2日目は金沢市内の各所でイベントが開催されました。大樋美術館では茶の湯を通じて文化の多様性に触れる「レインボー茶会」が開かれ、金沢にじのまでは西原さつきさん(さつきぽん)を招いてミニライブなどが行われました。
主催者の感想
金沢レインボープライド共同代表の松中権さん(左)とDiana Hoonさん
イベント主催である「金沢レインボープライド」の松中権共同代表は、3日間のイベントについて以下のように振り返りました。
「レインボーフラッグの意味を知っている人が増えたのではないか。ようやくこの町が明るく変わり始める兆しをつくってくれたのかな」
「参加者も年々増えてきており、パレードは3回目にして認知度が上がっていると実感した。自分らしく過ごせる街にどんどん変わりつつある」
「自分が当事者とバレるのを恐れて参加を控える人も実は沢山いると思う。色々な方が何か気付いてアクションを起こし、『こういうのいいね』と広がっていくことが文化や社会を変えていくのだろうと心から感じた一日だった」
北陸にLGBTQ+の居場所を作りたい代表の想い
石川県金沢市で「金沢プライドパレード」を開いた一般社団法人「金沢レインボープライド」。その共同代表である松中権(まつなか・ごん)さんは、出身地である金沢にLGBTQ+、つまり性的マイノリティの居場所を作るための活動をされています。
その成果として、古民家をリノベーションし「金沢にじのま」を開設したほか、予約制の無料相談窓口「にじのま相談室」も開いています。性的マイノリティにとって厳しい環境といわれた北陸地方にこれらの「居場所」が出来たのは、自身もゲイである松中代表が郷土愛を失わなかったからでした。
捨てきれない郷土愛
「金沢にじのま」の開設にあたっては、クラウドファンディングで資金を募っていました。その募集ページで松中代表は自身の生まれ育った故郷をこう語っています。「私のふるさとである金沢は、伝統的な家族観・家父長制・男性中心主義の風土や文化が、今でも色濃く残る保守的な地域のひとつです」
大学進学を機に上京した松中代表は当初、金沢に戻るつもりはありませんでした。広島修道大学の河口和也教授などが行った調査では、最も同性愛者に否定的だったのが北陸地方だという結果が出ています。ゲイを自認する松中代表にとって、北陸は未来を思い描ける場所ではなかったのです。
ところが、2010年に転機が訪れます。仲間たちとNPO法人を立ち上げたのをきっかけに、地元の両親へカミングアウトするなど行動が変化していきました。そして、一度は捨てた金沢と再び接点を持っただけでなく、金沢市内の性的マイノリティ達が孤独にならず自分らしく居られる街にしたいと想うようになります。
捨てきれなかった「郷土愛」はより膨大になり、金沢市内に様々な「カタチ」として残るようになりました。そのひとつが、古民家をリノベーションして開いた「金沢にじのま」です。
6月からは「にじのま相談室」という相談窓口も開設しています。完全予約制ではありますが、性のあり方についての悩みなどを無料で相談でき、月に2日の頻度で開催されています。
金沢プライドウィーク2023 公式サイト
https://www.kanazawarainbowpride.com