私に必要だったもの~うつ病を受け入れられなくて
うつ病出典:Photo by Mark Fuller on Unsplash
私が「うつ病」と診断されたのは22歳の秋のことです。
当時大学生で、人間関係がうまくいかずに悩んでいた私は、その悩みをだれにも打ち明けることができませんでした。精神的な不調としては、生きる気力がなくなり何をしていても楽しいと感じることがなくなっていき、身体的な不調としては、急激な発汗と動悸や不眠、さらには頭痛がありました。
卒業と就職という、その後の人生を左右する大きな出来事を前にして、休むという選択肢は私にはありませんでした。心身の不調は気持ちの問題で、気持ちを強くさえ持っていれば、いずれは消えてくれるものだ軽く考えてたのです。
うつを受け入れられなくて
いくら待っても心身の不調は消えてくれませんでした。原因を知りたくなった私は、インターネットで自分の症状について詳しく調べてみることにしました。ネット上にある膨大な情報を見て混乱した私は、予約・紹介なしで診療してもらえる心療内科を受診することを決めたのです。
私は専門医に「あなたはうつ病ではない」と断定してほしいと願っていたのかもしれません。しかし、結果としてうつ病の診断が下されました。薬を処方され、定期的に診察を受けることになりました。
この段階で、家族にうつ病であることを打ち明けていればよかったのです。しかし、どうしてもできなかったのは、家族の反応が恐かったのでしょう。症状は悪化し、家族が様子のおかしいことに気付いた時には、もう自分ではどうすることもできない状態にまで追い込まれていたのです。その後、家族の勧めで転院し、しっかりと時間をかけて話しを聞いてくれる病院に転院することを決めました。
転院後も症状が改善することはなく、入院することになりました。その後、入退院を繰り返しながらも、何とか大学を卒業することができた私は、内定が決まっていた会社に就職することにしました。環境さえ変われば、自分を取り戻せると信じていたのです。
就職後、自分は変わったんだと言い聞かせていました。しかし、仕事先にはうつ病を抱えていることは話していなかったため、常に気を張って働いてると日を増すごとにどんどん体調が悪くなっていきました。結果として無理がたたり、休職を余儀なくされ、結果として退職。また入院することになりました。
その後の生活
なんとか退院できましたが、ここから引きこもり生活が始まります。毎日がただ無為に過ぎていき、外に出るのは診察日のみ。その後数年間は同じような日々の連続で、少し体調がいい日は図書館にいくという程度の毎日でした。その間の私は、何も考えることなく過ごし、とても病気と向きあえる状態ではありませんでした。しかし、時間の経過とともに、病気の原因となった出来事を思い出すことは少しずつ減っていったのです。それよりも、今自分を苦しめている頭痛や精神的な落ち込みに目が向くようになっていきます。
そのころから、主治医の先生と話す内容に変化がありました。以前は自分の辛いことや心情を吐露することだったのが、この現状を変えるにはどうすればいいのか、相談することに変わっていったのです。結果、頭痛は引きこもり生活による体重の増加や、運動不足が原因の可能性があることを知りました。運動はしようと思ったのですが、人に会うことを避けたかったので、夜中や朝方を選んでウォーキングを始めたのです。少ない距離でも毎日続けることで、体重も頭痛も少しずつ減っていきました。体が健康になっていくと歩く距離も増えて、達成感が湧きました。
おかげで、診察時に主治医の先生と前向きに、今後について話し合うことができるようになったのです。その過程で、再就職に向けて支援を行っている就労移行支援事業所の存在を知りました。いきなり就職活動を行うことに不安のあった私は、いくつかの事業所の見学にうかがうことにしました。
そして、グループワークでの研修プログラムが豊富な事業所を見つけたのです。少しずつ人と話すことに慣れていけたらと考え、その事業所への通所を決めました。現在も通所を継続しており、自分と似た症状を抱えている方たちとであうことができました。自分の心身の不調についても相談したり、話しを聞いたりすることで、うつ病という病気についての知識と不調へのさまざまな対処方法を学んでいます。
私に必要だったもの
まだまだ気分が落ち込むこともある私ですが、うつ病の1番苦しい時に必要なのは、病気についての「開示」と「休息」だと思っています。
「誰か1人でも理解してくれる人を作ろうと努力していればよかった」
気分が落ち込むとどうしても思考がネガティブになってしまいます。その時にフラットに物事を見ることのできる友人や家族がそばにてくれれば、選択肢を狭めることにはならないと言えるでしょう。
「もっと勇気をもって休息の時間を作れればよかった」
そうすれば結果的に、大切な時間を無駄にすることもなかったと今では感じています。もうどうしようもなくなる前に助けをもとめる声をあげて、自分の心と体を守ってあげてください。
うつ病