コーヒー、ITビジネスで障害者の就労を支援〜COOON WORKSの鎌田亮太朗代表にインタビューしました
暮らしCOOON WORKS株式会社(鎌田亮太朗代表)が運営するCOOON WORKSは、ITとバリスタを中心とする就労移行支援と就労継続支援B型の多機能事業所で、2022年9月からスタートした事業所です。
就労を諦める障害者を見て
──立ち上げのきっかけについて教えてください
「いとこが重度の発達障害だったのをきっかけに、生野区の放課後デイサービスで移動支援を含めた支援のバイトを始めました。その時から、障害者手帳を持っているだけで将来の就労の選択肢を自ら狭めて『手帳があるからもういい』などと言う子もいて、ゆくゆくは障害者に関わる仕事をしたいと思うようになりました。自分でCOOONを立ち上げるなどする中で、ITやコーヒー店舗を活かせるのではないかと考えた経緯があります」
──「手帳があるからいい」というのはどういう意味でしょうか
「それを言った子は当時小学5年生で、ピアノも聞いたら一発で分かるようなギフテッド系ながら、友達がいる公園に放課後デイとして行くのを嫌がっていて、自分が障害者だというのを見せたくない様子でした。自己肯定感が薄く、『自分はもうコンビニ店員でいい』と自ら可能性を閉ざすようなことを言っていましたね。いとこの方も似た部分があり、家族からも『自分たちが死んだらこの子を頼む』と言われたのもあって、働ける空間を自分で作ろうと意識していました」
──コーヒーを選んだ理由はなんですか
「まず、COOONという会社自体が他と違う個性を持っています。大きなテーマの一つにソーシャルビジネスがあり、メンバーも25歳以下の若い世代ばかりで、ボランティアなどではなく経済活動と両立して企業家を育てていきます。形態としてCOOONを母体として色々なグループ会社がそれぞれの社会課題にアプローチするようになっています。具体的には、様々な社会課題におけるファーストペンギン(一歩目を踏み出す人)を育てていきたいという思いがあり、参入のハードルを下げつつ課題解決の基盤も作っていける会社になりたいです」
「例えばHICARUコーヒーを提供するORCAという会社です。福祉サービスの外の一般就労という形でダウン症の方が就労しており、出来る作業を切り分けて働いています。他にも堀江で開いている保護犬カフェなどへ実習に行ったり、SDGs関連の研修をしたりしています」
多機能事業所としてクリエーター、バリスタを養成
──どうやってITと障害者福祉を繋げてきましたか
「COOON WORKS自体が就労移行支援とB型事業所の多機能となっています。移行のほうは、ITでは就労における選択肢の最大化を目指しており、プログラミングやデザインや映像制作などを常駐のエンジニアが教えるだけでなく、実際の案件にも関わっていきます。コーヒーの方は3店舗経営しており、就労の出口がハッキリしています。これらが2年間で就労に繋げられる強みだと思います」
「利用者の中には、明確に希望する職種のある方や、なんとなく興味があって来た方もいます。後者の場合は、キャリアの選択軸から相談しつつデザインやプログラミングに触れながら、やりたいことを見つけていきます」
──B型事業所の方向性について教えてください
「基本的にパソコン作業が中心ですが、個性の一つとしてクラウドファンディングのクリエイティブパートナーとなっています。デザインのアドバイスも画像の製作も出来ますので、そういう方面が苦手な方も応援していけます。ニーズがあれば別途で支援しますし、低い工賃を上げるためのシステム作りや実証実験の場でもあります。他に、メタバースで使うアバターの加工も高単価な仕事として受けていますね」
──ある程度知的レベルは必要ですよね
「確かに利用者も精神や発達の軽度(3級)がメインではあります。他にダウン症の方には癒し効果があるようで、一人モデルケースとなる人がいれば、ダウン症の人や家族が集う空間が形成されていきますね」
──将来の展望やビジョンについてお聞かせください
「メタバースもバリスタも、我々COOON WORKSだけでなく色々な所から興るよう盛んにしていけたらいいなと思います。また、COOONという会社自体も新たな事業を始めていき、福祉と縁の無かった業界とも融合させていきたいですね。個人的には、放課後デイや児童療育にも目を向けていきたいです」