e-sportsと障害~“盲目の戦士”が活躍した「Street Fighter 6」世界大会と障害当事者の業界への参入

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出典:Photo by Florian Olivo on Unsplash

e-sportsという言葉が世に広まりだしてから、気付けばかなりの年月が経ったように感じます。

ここ数年においては、世界各国様々なタイトルで大会やイベントが開かれ、企業からスポンサードされたプロゲーマーやプロストリーマー(ゲーム配信者)も数多く産まれました。

ますます規模が拡大するe-sports業界ですが、その中で障害者が活躍する場面も増えています。

“盲目の戦士”が活躍した世界大会

2023年8月5日、対戦格闘ゲームの世界大会「Evolution Championship Series 2023(以下、EVO)」にて、盲目のプレイヤーBlindWarriorSven氏がトーナメント予選1回戦で勝利をおさめ、大きな話題を呼びました。

競技タイトルは「Street Fighter 6(以下、スト6)」

同年6月2日に発売されたばかりの最新作にして話題作で、本大会の目玉と呼べる注目を集めていました。

スト6には、視覚障害者への配慮として「サウンドアクセシビリティ」と呼ばれる新機能が実装されています。

これは、相手との距離や技の応酬などリアルタイムで変化する試合の状況を「音」によってプレイヤーに知らせ、視覚情報によらずゲームプレイが成り立つようにするものです。

BlindWarriorSven氏はこの機能を駆使し、相手の動きや自身の状況を正確に把握しながら鍛え上げた技や戦術をたくみに通し、強豪うごめく世界大会にて見事に勝ち星をあげました。

EVOが世界最高峰の大会であることも相まって、このニュースは業界内外を問わず様々な反響を呼びました。

選手への称賛と同時に「サウンドアクセシビリティ」の完成度や可能性についての声も多く、今後、障害者プレイヤーやそれを取り巻く動きに注目が集まると予想されます。

なお、当日の試合はYouTubeLiveにて全世界に向けてリアルタイムで配信され、現在もアーカイブが残っています。

ご興味のある方は、手に汗握る激闘をぜひご覧ください

開発には障害当事者の声も反映されていた

一方で、競技者とは別の方面からe-sports業界へと参入し活躍する障害者もまた増えています。

実は、先述した「サウンドアクセシビリティ」の開発には障害当事者の声が反映されているのです。

“バリアフリーe-sports”を事業とする株式会社ePARAは、スト6の開発においてサウンドに関するレポート事業を受託し、サウンドアクセシビリティの改善に協力をしていたことを発表しています。

同社は対戦格闘ゲームはじめe-sportsに精通したスタッフを中心にプロジェクトチームを編成。

試合に必要な情報の洗いだしや聴き取りやすい音色の検討、音量調整の種類わけなど、細かい部分まで様々な意見をレポートし、その結果、選択可能項目の追加・拡張などがおこなわれ、開発初期のデモ版からより遊びやすく改善されたとのことです。

障害当事者であると同時にプレイヤーでもあるePARA社スタッフだからこそ、対戦において重要な情報を逃さず拾い上げることができ、サウンドアクセシビリティの完成度をより高められたといえるでしょう。

実際にプレイした感想

かくいう私も長年対戦格闘ゲームをプレイしており、もちろんスト6も日々楽しく遊んでいます。

ということで(?)、先日、実際にサウンドアクセシビリティをONにし、アイマスクで目隠しをしながらCPUと対戦をしてみました。

感想としては、まず「相手との距離感が分かる」ことが想像以上に大きく試合に影響していました。

現状の距離はもちろん、音の変化により「相手が近付いてくること」や「攻撃によって距離が離れたこと」などを察することができ、振る技を選択したり接近するか後退するかを判断したりしながら試合ができるのです。

また、左右の位置が相手と入れ替わるのに合わせて、距離を知らせる音の音色が変わることも、状況の把握に大いに役立ちました。

変化する戦況に戦術を上手くかみ合わせて勝利することはまさに格闘ゲームの醍醐味であり、視覚障害者に向けてもストリートファイターらしい楽しさを提供することに成功しているように感じます。

おわりに

以上、e-sportsと障害についての話でした。

本コラムではスト6について触れましたが、他のe-sportsタイトルや、競技タイトル以外のゲームにも障害者向け機能が実装された作品が数多く発売されています。

今後、様々なタイトルで障害者プレイヤーの活躍が増え、シーンを盛り上げていくことでしょう。

自身のプレイ経験を開発の方面に活かし、革新的な機能を発明する方がでてくるかもしれません。

また、当サイトでもe-sportsに特化した就労移行支援についてコラムを投稿していますが、そういった形で障害者のe-sportsおよびゲーム業界への参入を促進する事業も増えていくことが期待されます。

ますます需要と注目が大きくなっていくe-sports業界。

いちファンとして、私も動向を楽しみに追っていきたいです。


参考文献

【電ファミニコゲーマー 盲目の格闘ゲームプレイヤー「BlindWarriorSven」がEVO2023『スト6』のプール予選で勝利し会場大盛り上がり。サウンドアクセシビリティ機能を利用しエドモンド本田が対空とコンボを華麗に決める】
https://news.denfaminicogamer.jp

【ePARA 「スト6」サウンドアクセシビリティ特別対談。-興奮と可能性が詰まった大仕事の舞台裏-】
https://epara.jp

【PRTIMES 6月2日発売「ストリートファイター6」のサウンドデザインにバリアフリーeスポーツePARAが協力】
https://prtimes.jp

【障害者ドットコム e-sportsに特化した就労移行支援事業所「ACADEMIA大阪」の取り組み】
https://shohgaisha.com

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29歳。かつて営業職をしていました。ゲームが好きで、鉄棒の授業が苦手です。

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