「境界知能叩き」に甘える時代

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Photo by Will Francis on Unsplash

SNS上で見かけたのですが、嫌いな政党のことを「支持者には境界知能が多い」と断言した書き込みがそこそこバズっておりました。「境界知能=悪」という価値観と、嫌いな人々をその「悪」に当てはめる短絡思考、これらを一瞬でアピールしてしまった訳です。まさに“お里が知れる”発言でしたね。こちらの思想に合おうが合うまいが同調したくないです。

話は逸れますが、「宗教と政治と野球の話は安易にするな」とよく言われますよね。嫌いな政党、嫌いな球団が出てくると烈火のごとく怒りだす厄介な人がどこに潜んでいるか分かりませんから、せめて地雷を踏まないようにしようという生活の知恵です。就活時代に説明会で「あの党はならず者の集まりだ!支持する奴は馬鹿だ!」と感情剥き出しで力説する人を見てドン引きしたものですが、あれでも社長であるからには咎めることも出来ず、就活生はただ「熱い演説」と言ってやる事しか出来ませんでした。ああいう人にも合わせてあげてやり過ごすのは処世術の一つなんですね。

それで本来お話ししたかったのが「境界知能」のことです。今後より一層世間が鬱屈していく中で、境界知能は“サンドバッグ”としての需要を増していくのではないかと踏んでいます。「境界知能狩り」の時代です。空想上に境界知能の人物を浮かばせてボロクソに叩いてやる狩り方ならば、あくまで“表面上の”被害者はいないことになります。

あの「ケーキの切れない非行少年たち」も、不健全な消費をされているという意見があります。「境界知能や軽度知的障害を『犯罪者予備軍』として解釈する読者が出かねない」という風な意見だったと思います。個人的には、記憶の中の非行少年─特に酷薄で屈辱的な仕打ちをしてきた不良─を「あいつは境界知能だったんだ。だからあんな暴力的だったんだ」と納得して溜飲を下げるような“消費”のほうが多かったのではと思うのですけれども。

さて、境界知能が“標的として”優れているのは、「公的には『健常者』である」という一点です。明確なハンデを持ちながらも、大っぴらに配慮が必要とは見做されていない絶妙な属性、つまり「都合のいい弱者」として境界知能はまさにうってつけなのです。

ポリコレの隆盛によって、不用意な“鬱憤晴らし”は却って猛反撃による鬱積や社会的信用の棄損へと繋がるようになりました。やがて彼らは“発散”するために徘徊し、ポリコレの守護対象外(知的障害や発達障害、非モテなど)を強く意識し始めます。

“いい的”なら「弱者男性」も当てはまるでしょうが、定義のブレが大きすぎて恣意的に基準を動かせる「弱者男性」に頼りきりでは、内輪の言葉を世間一般の共通語と勘違いしているに過ぎません。例えるなら、親戚の結婚式に普段着で行くようなものです。

しかし、「境界知能」にはIQ70以上85未満という公的な基準が存在し、ネット民が作った蔑称に過ぎない「弱者男性」よりも専門性が確立された“通じる言葉”としての素質があります。例えるなら、親戚の結婚式に学生時代の制服で行く程度には取り繕えています。

実際に境界知能かどうかはIQ検査を受けない限り分かりませんし、分かったとしても公的には「健常者」のままです。それでいて、ポリコレの守護対象には恐らく未来永劫加えられないでしょうから、末永く叩き放題です。これが信じられない出鱈目と言いたいのであれば、ご自身の今後の言動や立ち居振舞いで証明してください。結局何が言いたいかというと、露悪趣味に溺れるなという話です。


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遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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