閉鎖病棟での入院生活
うつ病出典:Photo by Austin Distel on Unsplash
皆さんは、「閉鎖病棟」と言われてピンときますか?主に精神科にある外界と隔離された特殊な病棟です。私は、6カ月にわたり入院していた経験があります。24時間監視されていて、自由に外出することが出来ない環境です。
統合失調症と診断されて閉鎖病棟へ
私は16歳で学校に行くことが難しくなり、精神科で「うつ」と診断されていました。その後、学校も休み養生をしていました。しかし、一向に病状は良くならず家族に暴言を吐いたり、実家の壁や家具を壊してしまうなど手が付けられない状態でした。この状況を見かねた父親に、私は大学病院へ連れていかれました。そこで精密な病気の検査を受けました。
その結果、当初「うつ」と診断されていたものが、「統合失調症」と判明。攻撃的な精神状態だったのもあり、その日に即入院でした。それがまるで「監獄」のような、「閉鎖病棟」とは、この時知る由もありませんでした。
精神病患者らしくしてろ!
私は閉鎖病棟へ入ってからも、攻撃的な精神状態が続きました。二重のロックがかかった厳重な入り口を、何度も蹴ったりしました。すると制止に入った、看護師の方が衝撃的な発言をしたのです。「閉鎖病棟に入院してきたんだから、精神病患者らしくしてなさい!!」と。「精神病患者らしくって一体何だよ」と心の底から思いました。やがて、落ち着きを取り戻した私は、波乱の入院生活を送ることになるのでした。
入院生活と様々な患者さん
24時間監視体制の病棟での生活に慣れるのは、かなり時間がかかりました。患者さんの中には、暴れて拘束具で縛られている人や、隔離室に入れられて四六時中叫んでいる人など多種多様でした。病状が安定している患者さんもいましたが、重度の精神障がいの方が大半です。また所持品も、厳重な管理をされており、刃物は自傷の可能性があるため、全て看護師さんが預かっていました。その他、家族からの見舞い品も全て、看護師さんの詰め所で管理と徹底しており、まるで「刑務所」だなと思いました。
閉鎖病棟の格子付きの窓から、近くの高校が見えたのですが当時同じぐらいの年齢の子達が、自由に笑いながら登下校している姿を見てとても複雑な気分でした。「なぜ同年代の子達はこれほど幸せで、自由なのに自分は刑務所のような毎日を過ごしているんだろう」と羨ましく思ったものです。
様々な患者さんとの邂逅
人間とは本当に不思議で、どんな環境でも慣れてしまいます。私も「閉鎖病棟」に入院して1ヶ月ほどかかりましたが、慣れてしまいました。当時、年齢的に私は入院患者の中で最も若かったと思います。ほとんどの患者さんが、年上の方ばかりでした。私が年下というのと人懐っこい性格もあったので、病状の安定している患者さんから大変かわいがってもらいました。午後3時のおやつの時間にコーヒーをくれる方や、麻雀のやり方を教えてもらったのはいい思い出です。患者の皆さんは和気あいあいと過ごしていましたが、彼らの過去はかなり壮絶なものでした。一番仲良くしてくれた20代の方は、シンナー中毒と精神疾患で入院した方でした。麻雀を私に教えてくれた方は、自身の父親を殺めてしまった人です。普段彼らは明るく振る舞っていても、目の奥が物悲しかったのを今でも覚えています。私は、たかだか学校に行けなくなった程度の悩みでしたが、比較すると彼らの経験は壮絶ですよね。
最後に
私は普通に生きている人が、恐らく体験することのない「閉鎖病棟」への入院を経験しました。そこで巡り合った人達は、本当に様々な経験をした方ばかりだったと思います。皆さんに知ってもらいたいのは、こういう施設あること、そしてそこには様々な境遇の方々がいるということです。私が出会った人達との思い出は絶対に忘れません。今でも、この時の体験が私の人生のエッセンスになっています。
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