「アルミホイルを頭に巻く」はどこから生まれたのか

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ネット上で「アルミホイル巻いてそう」「アルミホイルでも巻いてろ」みたいな罵倒を見たことはありませんか。覚えたてのアングラな言葉をつい使いたくなるような人が集まるコミュニティではたまに観測されるスラングで、かつての「チーズ牛丼食ってそうな顔」と同類にも思えます。

実は「アルミホイルで頭を防護する」という発想は、100年近く前からあったようです。ただ頭部への物理的なショックではなく、電磁波だとかテレパシーだとかマイクロ波だとかの類から身を守る目的があったそうで、これらは被害妄想や陰謀論との高い親和性がしばしば語られています。根拠のない言いがかりを「アルミホイル案件」と呼ぶこともあるくらいです。

ティンホイル・ハット

「アルミホイルを頭に巻く」の源流は「ティンホイル・ハット」と呼ばれるお手製のヘッドギア(被り物)だそうです。「ティンホイル」が意味する所の「錫箔(スズはく)」とは、アルミ箔の前に流通していた金属箔です。アルミ箔は1911年から大量生産の目途が立って覇権を取ったわけですが、前の主流だった錫箔の時代からヘッドギアの発想があったそうで、その名残から「ティンホイル・ハット」と呼ばれています。

ティンホイル・ハットらしきものの存在は、100年ほど前のSF短編小説にも求めることができます。「金属製の帽子」でテレパシーを遮断できるという場面があるそうです。歴史は長いですが、ティンホイル・ハットのような金属箔で頭部を守る行為についての科学的なエビデンスなどは証明されていません。

曲がりなりにも被り物としての形をしているのが「ティンホイル・ハット」ですが、創作などではアルミホイルを頭に巻くだけで済ませている簡素な表現はおろか、「アルミホイルで心臓を守る」「部屋全体をアルミホイルで覆う」といったものまで存在します。「アルミホイルを巻く」となったのは、アルミホイルだけが一人歩きした結果と言えそうです。

電磁波過敏症

ティンホイル・ハットやその同類について科学的なエビデンスはありませんが、いつひっくり返るとも分からないのが科学の悲しい習性です。ところで「電磁波過敏症」についてご存知でしょうか。

「電磁波過敏症」は正式な病名として認められているわけではありませんが、重い人にはとことん重いことが判明しており自助グループも存在するようです。

WHOが2005年に出した「ファクトシート」という資料では「電磁過敏症(EHS)」と呼ばれています。この資料によりますと「重い症例自体は報告の10%程度ある」「電磁過敏症を訴える人が正確に電磁界曝露を検知できることは無いと多くの研究で示されており、実際の電磁界曝露と症状に相関はない」「電磁界から離すよりも、本人の心身状態をよく観察して原因を特定し治療・寛解を目指す」「自助グループは本人にとって有益」という風にまとまっています。

要するに、電磁波とは別の原因が本人の身体・精神・心理などに潜んでいるということです。それを特定してアプローチするまでの繋ぎとしてなら自助グループなどの対処療法は役立ちます。電磁波からの防護は、優先順位で言えば相当低いといえそうです。

参考サイト

電磁界と公衆衛生 電磁過敏症|WHOファクトシート296 2005年12月(PDFファイル)
https://www.jeic-emf.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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