心が健常な家族と暮らせる幸せ
暮らし出典:Photo by Luemen Rutkowski on Unsplash
私は20年ほど前から統合失調症をわずらっている44歳の主婦です。躁うつ病もわずらっているため、躁的なときには急に人が驚くようなことをいい出します。家族は夫と娘の3人です。夫とは11年前にお見合いサイトで知り合いました。夫と知り合う3年ほど前に、ストレスから統合失調症を再発し、当時勤めていた会社を自主退職しています。入院もしました。退院後は家でゆっくりとした生活を送っていたのですが、年が年だけに、将来が不安になってきました。
結婚にいたる経緯
「結婚がしたい」統合失調症をわずらっているにもかかわらず、なぜかそのときは「自分もがんばればなんとかなるだろう」と、変な自信がありました。そして幸運なことに、仕事をしていたときに母が登録してくれていた、お見合いサイトをまだ解約しないでいてくれていたのです。
今の夫と知り合うまでは、1度も相性のいい人とめぐりあえませんでした。会った瞬間にこの人は何か違う、無理だと思う人ばかりだったのですが、夫は初めて会ったときに「何も嫌な所がない」と感じました。「会った瞬間にときめくような人と結婚するのかな」と思っていた私だったのですが、この「嫌な感じがしない」という感覚は不思議と私の心をとらえたのです。
主治医の先生にもお見合いのことは報告していました。「いいと思います」と信頼している先生にも背中を押してもらっていました。「病気のことは最初に伝えた方がいいですか?」と聞くと「いわなくていいですよ。好きな人が後から病気になることもあるのですから、お2人の心次第です」といってくださったのです。
夫とは5回くらい、食事にいきました。私は仕事で営業事務をしていたので、年上の上司と話すのは慣れていました。私がサポートしていた課長に少し似ているなというのが夫の印象でした。そこで上司と話していたように自然体で話せばよかったのでしょうが、何せお見合いなので、気に入ってもらいたいという気持ちが先に立ち、夫の話に合わせることが多くなってしまい、ときには疲れて帰ってくることもあったのです。
しかし、最初に抱いた感情を大切にしようと思い、夫との正式なお付き合いが始まりました。
健常な人は、なかなか精神障害と気づかないものだと夫と出会って思いました。夫にはいたって普通の人間に見えていたようです。障害のことを話した時も「そんな人いくらでもいるだろう」と、受けとめてくれました。私も夫もそれなりにいい年だったので、結婚しようという意思は2人とも早くにめばえたのです。
最初は夫の一人暮らしの住まいに同居しながら、結婚に向けて家探しをしました。私の実家の近くに家を建てようといってくれ、完成するまでは実家の近くに家を借りて住んでいました。初めての他人との2人きりの生活に、統合失調症の私はいろいろと気を使うことが多く、自分を見失ってしまうことも多々ありました。躁的だった私は一変して鬱になり「私たちやっぱり結婚しない方がいいと思う」などといってしまったこともありました。しかし、夫は調子のいいときの私も見てくれていたので「大丈夫だから」と言って今から思うと、とても幸運なことに結婚にいたりました。
しかし、健常者である夫は、私が不安になったり恐怖を抱いたりすることがらにはまったく理解することはできませんでした。本人いわく「嫌なことがあっても3歩あるけば忘れる」性格のせいか、私が鬱になっていても「俺は病気になったことがないから、分かってやれない」というのです。確かに私も他人の痛みは分かってあげられません。それでも、一緒にいたいと思えるのは、底抜けに明るい夫の性格に救われるからです。行動的で博識で、心の病気以外のことはなんでも解決してくれるのです。ユーモアも兼ね備えているので、悩んでいることが馬鹿馬鹿しいと思わせてくれたりもします。
私は辛い時は母親や訪問看護師さんに話をきいてもらって涙を流します。それはそれですっきりしとして、とてもありがたいのですが、根本的な解決にはいたりません。夫のように現実を明るく照らしてくれる人が必要なのです。結婚当時は「病気のことを理解してくれる夫だったら、もっとよかったのではないか」と考えてしまっていた時期もありましたが、共感だけでもダメなのだと最近はしみじみと感じます。
一緒にいると似てくるといいますが、私もだんだんと夫のように明るい思考回路を手に入れていけていると思います。もちろん、自分に合ったお薬に助けてもらっているからということもありますが。
結婚の際の両親との顔合わせで夫を自宅へ招いたとき、私の父親はこういってとても喜んでくれました。「あんな健康そうないい人を見つけて来てくれて本当にうれしい」と。父親も昔、詳しくは教えてくれませんが、私と同じように統合失調症になりかけたことがあったそうで、そのこともあってそういってくれたのだと思います。
ちなみに、現在私の娘は小学5年生なのですが、幸運なことに私にまったく似ず、夫に非常に似ています。そのこともとても私の毎日を救いのあるものにしてくれています。マイペースで楽観的、おとなしそうに見えますが、家や親友の前では非常にユーモアのある性格です。「私、嫌な事あっても1秒でわすれる」と、夫同じようなことをいっており、3人そろうと、私が不調な時以外はとても楽しい家族です。
環境の重要性
このように、自分をとりまく環境は、自身の体調や思考に深くかかわってくるものだと思いますので、精神障害をわずらっている人には、自分から自分の求める理想像をしっかりと固め、少しでも自分が楽に生きれる環境を作っていくことが重要だと思います。
結婚だけでなく、職場などでもそうです。楽なだけの職場などは無いと思いますが、職場の雰囲気などは私の経験上、人生を大きく変えてしまうものなので、特に障害者の人たちにはじっくりとそのことと向き合っていって欲しいと思います。
統合失調症