YouTuberヒカル、「脊髄性筋萎縮症」を抱えるファンの青年と邂逅。継続力などを評価し編集スタッフに誘う
暮らし2023年5月22日、YouTuberのヒカルさんがある男性へ会いに行った動画をアップしました。その男性は「まなと」さんといい、8年前からヒカルさんの動画を見始めた古参のファンであるばかりか、300日以上前から毎日動画の感想や「是非会いたい」などをDM(ダイレクトメッセージ)で送っていました。
まなとさんは「脊髄性筋萎縮症」のため筋肉が成長せず、生活の全てにおいて介護を要します。それを初めて明かしたのが289日目。継続力やメンタル面に興味を惹かれたヒカルさんは、単に「推しに会う」に留まらない対談を目指し、まなとさんへ会いに行くための準備をしたのでした。
決断の理由
ヒカルさんにはDMを返信する習慣はなく、ましてや個別で会いに行く約束など出来ません。それが対談に至ったのは、長文での感想を300日以上毎日欠かさず送る熱量と、289日目に突然カミングアウトされたことが決め手でした。
ヒカルさんは感想を毎日チェックしていた訳ではなく、289日目のメッセージは深夜にたまたま見たのだそうです。「あの夜にメッセージを覗いていなければ、この出会いは無かっただろうし彼への認識も変わらなかった」と語る通り、何か運命を感じさせますね。
脊髄性筋萎縮症により、イベントに行きたくても行けないばかりか歩行すら困難な身の上を明かされた時、ヒカルさんは反射的に「会いに行きたいので住所を教えて欲しい」と返信しました。そして、実際に会いに行って対談できるよう、まなとさんや家族などに働きかけ、対談が実現します。
ヒカルさんは、まなとさんの継続力やメンタルについて「300日以上も毎日、中弛みせず長文で感想を寄せる継続力は凄まじい。しかも、コンタクトをとる目的を果たしてからも手を抜かず続けている」と、会う前から高く評価していました。対談について「慈善事業ではない、互いにプラスとなるような経験にしたい」と意気込みを語ります。
デバイス紹介動画などを披露
まなとさんは自分の病気や趣味、在宅ワークや介護状況、そして夢などを語りました。また、視線操作するデバイスについて、紹介動画も披露しています。一通り傾聴したヒカルさんは、「卑屈さを感じず前向き」「トークは上手いし頭もいい。稼げる方法はいくらでもある」と評価しました。後日「緊張していて、言いたいことを全て言えなかった感じもある」と振り返っていたまなとさんですが、それでもトークが上手いというのは才能の片鱗を感じさせます。
まなとさんが現在やっているゲームは、スマートフォンの「荒野行動」と「ウイニングイレブン」、そしてコンシューマーの「スマブラSP」です。「スマブラSP」については視線入力のデバイスで間接的にコントローラーを動かしており、入力に遅延はあるものの、素早くスティックを倒しながらボタンを押す「スマッシュ攻撃」まで披露しています。
紹介動画を自分で作って披露している通り、まなとさんは自分で動画を編集して仕上げることが出来ます。ヒカルさんが過去に出した無編集の動画を自己流に編集してみるなど、編集の知識も行動力も備わっていました。
少ない自己資金
アクセシビリティ増強の為まなとさんが導入した各種デバイスや編集ソフトは、全てまなとさんが在宅ワークで稼いだ自己資金が財源となっています。電話帳のデータ入力を主な業務とする在宅ワークは、勤務時間が短いのもあって月8万円に留まりますが、それでも自分の給料だけで買うスタンスを貫いています。
とはいえ、給料の低さを見て見ぬふりするには限度があります。理解があって快適な職場を自ら離れてでも、より給料の高い仕事に就きたいところですが、介護サービスの制約が重くのしかかっていました。まなとさんには本来24時間介護が必要なのですが、費用面の都合でヘルパーを呼べる時間が限られており、家族が仕事に出かけてからヘルパーが来るまで4時間は一人きりです。勿論、出かけるにもヘルパーを雇わねばならないので、気軽に外出することも出来ません。
また、職場に介護ヘルパーを入れることも出来ません。制度が働く障害者を想定していない面もそうなのですが、ヘルパーという「部外者」が居ると情報漏洩などのリスクも跳ね上がるので、ヘルパーの介護を受けられる職場はまず無いのだそうです。これはまなとさんに限らず、全ての重度身体障害者が就労の上で抱える問題です。
まなとさんは少しでも収入を増やせるよう、FXや投資の勉強をして資産運用をすることも考えており、ヒカルさんは「まなとさんは能力があるので、本気で投資に取り組めば必ず結果を出せる」と答えました。
編集スタッフのお誘い
対談の終盤で、まなとさんは「出来ればヒカルさんのスタッフになりたい」と明かしました。ヒカルさんは「情で繋がるだけの真似はしたくないが、お互いにメリットのあるビジネスパートナーとして組んでいきたい」と、継続力やトーク力や潜在能力などを高く評価した上で、その場で編集スタッフとしての採用に踏み切ります。
ヒカルさんは、まなとさんと働くビジョンについて「将来、別の動画で再登場するかもしれない」「健常者である他スタッフにもいい刺激になると思う」と語りました。優良スタッフの卵を発掘したヒカルさんは、まさに宣言通り「互いにプラスとなる経験」が出来たようです。
対談は1時間以上続き、サイン色紙と懸賞企画で余ったニンテンドースイッチのプレゼントと記念撮影で和気藹々とした雰囲気の中終わりました。まなとさんに高い能力が秘められていることは動画の中で何度も強調されており、ただ「推しに会う」に留まらない有意義な対談でした。
参考サイト
ヒカル、300日間DMを送り続けてきた難病を抱えるファンと対面、動画編集者として採用に踏み切る
https://realsound.jp
ヒカルさんが投稿した実際の動画
https://www.youtube.com
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