権利を盾に家すら奪う、スペインの家泥棒「オクパ」

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Photo by Tierra Mallorca on Unsplash

権利は時に衝突するもので、上手にバランスを取った判断を下さないと、大きな禍根を残してしまいます。最悪の場合、変に認めた権利によって他の多くの人権が蔑ろにされることもあります。このバランス取りが下手なあまり、誰にでもある筈の権利が保障されなくなった国があります。スペインの居住権です。

スペインには家ごと奪う泥棒がおり、彼らは占領を意味する「オクパ(ocupa)」と呼ばれています。手口は大胆かつ狡猾なもので、鍵を壊した挙句に新しい鍵へ取り替え、家ごと乗っ取ってしまうそうです。鍵を壊してしまうので、戸締りをしても意味はありません。オクパの標的は空き家や別荘が多いのですが、宿泊施設の一室や既に人が住んでいる家も狙われ占拠されることがあります。

問題は、オクパの人権が過剰に守られ過ぎていることです。オクパはホームレスや移民などが多いそうで、社会的弱者の人権を保障するのは勿論大事なことですが、それがあまりにも手厚すぎるのです。なんと占拠してから48時間経過すると、奪った人の家となってしまい、警察を呼んでも追い出すことは出来ません。これ以上は法廷闘争しかありませんが、決着には平均1年半かかる上、そうまでして結局家を取り戻せなかったケースもあるそうです。子どものいる移民家庭は二重に権利擁護が激しいため、更に厳しくなります。

実際にオクパの乗っ取り被害を受けた人によると、離れて住む老母の介護が長引いて2年ほど家を空けてしまい、その間に乗っ取られてしまったそうです。48時間でも駄目なのに2年も開けてしまったので、警察にはまるで相手にしてもらえませんでした。オクパが住んでいる間の水道や光熱費などは家主が払わされますし、契約を切るとオクパのライフラインを切断したとして家主が処罰の対象にされることさえあります。家を奪われた側の人権はなおも蹂躙され続けます。

これほどの実態がありながら、スペイン国内ではオクパ擁護論が根強く、政治家ですら「家を何軒も持つような富裕層は、オクパに無償で家を譲るべきだ」と公言するほどです。ただ、その政治家は自分の家がオクパに乗っ取られそうになると、政治資金で警察を動員し全力で追い出したそうです。火の粉がかかれば人は変われるものですね。

オクパには、社会的弱者どころか反社会的勢力が関わっていることもあります。そういう所は不法占拠した物件の持ち主に、物件を返す代わりに金銭を要求するなどしてシノギにしているそうです。権利主張の是非というのは色々と考えさせられる問題ですが、「その主張を通した時、どれだけの人の、どれだけの権利が損なわれるか」は予想しておきたいものですね。


参考サイト

ハウス・オブ・スペイン 梅子のスペイン暇つぶし劇場
https://himatsubushi-hitsumabushi.hatenablog.com

スペインの超絶胸糞な問題:セニョリータかめのバルセロナ生活
https://kametsurukamacho.livedoor.blog

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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