グループホームに住んでみて知った(5)~とあるアラフォーADHDの意見

暮らし

出典:Photo by Ben White on Unsplash

前回の「グループホームに住むメリットの話」から大分間が空いてしまいましたが、今度はグループホームで生活する上での、デメリットをお話ししていきたいと思います。

なお、今回お話しするエピソードは私自身の経験を元にしており、必ずしもすべての集団生活型のホームでこのようなことが起こるわけではないことを、ご承知おきください。

メリットがあればデメリットもある

前回のコラムでは、グループホームを利用することでえられるメリットについてお話ししました。

生活費や初期費用の節約、食事や入浴準備などのサービス提供を受けられるなど、様々なメリットがあることを知っていただけたかと思います。

しかしメリットがある物事には、必ずデメリットもあります。中には物事の捉え方、考え方や障害特性により、集団生活そのものに不向きな方もいるでしょう。

グループホームで生活することが「心身ともに安定した暮らし」に、必ずしもつながらないことがあるのです。

デメリットその1 朝の生活動線で問題が発生しやすい

集団生活型のホームの場合、特に朝はほとんどの利用者が同じ動きをするため、洗面所やトイレが混みやすくなります。

ほとんどのグループホームでは、洗面所もトイレも1か所しかありませんので、交代で利用しなければなりません。

利用者の起床時間や外出時間がズレていれば問題ないのですが、同じような時間帯に起床・外出する場合は、特に注意が必要です。

歯みがきや洗顔をしたいときに、他の利用者が洗面所を使っていれば、空くのを待つしかありません。これはトイレについても同じです。

その間に何かできることがあればそれを先に済ませるなど、機転をきかせていかないと、集団生活は上手く回りません。

他の入居者の動きをよく見て要領よく動かないと、外出の予定時間に間に合わないということもありえます。

また、利用者の中に朝のルーティンについてのこだわりが強く、順番がくずれるとパニックを起こしてしまう方がいます。

ほかには、昨日はスムーズにできたのに今日はなかなか取り掛かれなかったり、自分のペースでしか動けない方もいます。

そのような利用者には世話人の方がついてサポートをしたり、場合によっては世話人の方が利用者に代わって作業をおこないます。

たとえば、作業所に通所するための荷物の準備が出来ておらず困っていた利用者には、世話人の方が利用者に代わって荷造りをしていたこともありました。

しかし、サポートがあってもうまくできないときもありますので、利用者にもある程度の忍耐力が必要になってきます。

まわりの動きをみることが苦手だったり、予定していたことがうまくこなせないことで不安になりやすい方は、ストレスになるかも知れません。

ただし職員と相談の上、生活動線をある程度調整してもらえる可能性はあります。困ったときには、思い切って相談してみましょう。

デメリットその2 利用者、世話人、職員の入れ替わりにともなう環境の変化

利用者や世話人、グループホームを運営している企業の職員と上手くいっているときは、生活する上でのストレスはそれほどかかりません。

しかし、世話人の方や職員の職場移動や退職などは年に1、2度ほど発生しますし、利用者も1人暮らしをはじめたり、集団生活型のグループホームからアパート型の施設に移動することもあります。

利用者が退去すれば、グループホームは新しい入居者の募集をおこないます。そして新たに入居が決まった利用者が、自分と相性があわないこともあるのです。

実は私は1年ほど前にこれまで住んでいたグループホームからアパートタイプの施設に移動したのですが、それにはいくつか理由があります。

移動した理由のひとつに、2年ほど仲良く暮らしていた利用者が退去したあと、しばらくして入居してきた新しい入居者に不満を感じたというものがあります。

ご挨拶したときの印象は「穏やかそうな人」だったのですが、そのうち自室のドアを時々大胆に開けっ放しにしていることが、何となく気になるようになりました。

「部屋の中が全部見えちゃってるけど、本人は別に気にしていなさそうだし、まあいいか」と思っていたのですが、その数日後彼女の開け放したドアの向こうから、強烈なタバコ臭がしてきたのです。

あとで職員から説明があったのですが、実は彼女は結構なヘビースモーカーで、入居してしばらくは電子タバコを使用していました。

しかし「電子タバコの本体の扱いをあやまると出火事故になる」という説明書を呼んだ保護者の方が、あわてて使用をやめさせたのです。

そこから彼女は紙巻きたばこに変えたのですが、彼女はその際職員と「喫煙は必ずベランダでおこない、ベランダの扉は絶対に開け放さない」という約束をしていました。

しかし約束を守らず、喫煙中もベランダを閉め忘れることが続いたために、臭いが室内に流れ込んでしまっていたのです。

においにたまりかねて職員に相談したところ、本人に改めて約束を守るよう厳重に注意し、彼女の自室の扉が空いているときに臭いがしたら、本人の許可なく扉をしめて良いということになりました。

対処はしてもらったものの「今まで喫煙者がいなかったところに喫煙者が入居してくる場合、こちらに何か案内があっても良いのに、なぜ教えてくれないのだろう」と、それ以降職員に不信感をいだくようになりました。

その後も彼女は、たびたび部屋の扉を開けっ放しにしてタバコ臭を漂わせていた上に、彼女が使った後の洗面所に、頻繁に何本も髪の毛が落ちていたことから、彼女に対して良い印象を持てなくなりました。

実は洗面所、トイレ、浴室などの共有スペースの使い方に関しては、それまでの生活環境によって考え方が変わります。洗面所の床に水滴が飛び散っているだけでイラッとくる人もいれば、全然気にしない人もいます。

私としては「他人同士で共同生活をする以上、共有スペースにはゴミや髪の毛を残さず後始末してほしい」という気持ちがあったのですが、中には当然そうは思わない人もいます。便器の便による汚れも同様です。

もちろん汚れが気になれば、世話人の方に後片付けをお願いすることもできますが、毎日のようにお願いするのも気が引けて、一時期は自分が片づけていたこともありました。

「片づけるのが嫌なら、だまって放置すれば良いのでは?」と疑問に思う方もいるでしょう。しかし当時のわたしは「最後に使った自分が、汚したままにしたと思われたくない」と不安になっていました。

その不安から他の利用者の後始末をし始めたのですが、だんだんと「なんで自分だけ、こんなことをしなければならないのか」と不満を抱えるようになりました。

今思えばこうしたモヤモヤを、職員なり世話人の方なりに、早く打ち明けられていればと考えます。

ともあれ、利用者の入れ替わりにより、これまでうまくいっていた共同生活が急にストレスフルになることも知っておいていただきたいです。

利用者だけでなく、世話人の方とも相性が合わないとストレスに感じることもあります。退去にこそいたらなかったものの、職場異動で担当になった新しい世話人の方と折り合いが悪く「あの世話人さんにこんなことをいわれた」と愚痴をこぼしていた利用者もいました。

デメリットその3 ほかの利用者の障害特性を受け入れられない

ほとんどの集団生活型のグループホームは、障害支援区分が同程度の障害者を、なるべくひとつのホームに集めるようにしています。

しかし、中には施設あるいは入居者の希望により、入居者の障害支援区分がバラバラになったり、ひとりだけ大きく差が出ることもあります。

わたしが住んでいたグループホームも、最初は自分の身の回りのことは自分でできる利用者だけでした。しかし途中から入居してこられた方には知的障害があり、常に世話人の方のフォローがないと生活できませんでした。

彼女との共同生活はなかなか大変でした。彼女はじぶんのペースでしか動けないので、彼女が洗顔や歯磨きをし始めると、当分使うことが出来ませんし、入浴についても、機嫌が悪いとなかなか準備をしようとしません。

あるときは自分のものと他人の物の区別がつかず、私が買い置きしていたジュースを勝手に飲もうとしたり、ほかの利用者のお菓子を隠れて食べてしまい、ちょっとした騒ぎになりました。

当時はジュースもお菓子も、全員共同の冷蔵庫に保管していたため、その後は世話人の方が冷蔵庫を常に監視しなければならなくなったのです。

私物を勝手に触られたり、食べられるのは不愉快ですが、他のホームでは他の利用者の部屋に入り、洋服を持ち出したり金品を盗んで退去処分になった人もいたそうです。

そのほかには、トイレを利用してもきちんと流さなかったり、洗面所を汚したままにするなど、彼女の使用した後の共有スペースに入ることも苦痛でした。

このようなことから、わたしは次第にストレスを溜めていき、体に湿疹が出たり軽い胃潰瘍で救急搬送されるなど、体調が悪化しはじめました。

そこに追い打ちをかけるように、前の章でお話しした新しい入居者に上手く適応できないこともあり、結局わたしはこのホームを退去することとなりました。

グループホームでの生活の後半は、本当に大変なことばかりでしたが、入居したばかりのころはとても楽しかったです。夜にリビングに集まってテレビを見ながら世話人の方も交えておしゃべりしたり、一緒に料理を作ることもありました。

今でもときどき、そのときのことを思い出して懐かしくなることがあります。

そして落ち着いて生活できるようになった今、買い物もレクリエーションも自由に楽しむ他の利用者を見て、ひとり自立度が低かった彼女もまた、言葉にできない葛藤を抱え続けていたであろうことにも気がつきました。

集団生活型のグループホームは障害者に向いているのか?

障害者の地域移行をすすめていくために、昨今はグループホームを増やす傾向にあるようですが、個人的には集団生活型のグループホームの利用には、慎重になった方がよいと考えます。

なぜなら、気心の知れた友人同士でのシェアハウスでも、ちょっとしたことから衝突が起きることがあるからです。最悪の場合、その衝突がきっかけで絶縁にもなりかねません。

まして、それが知らないもの同士の共同生活とあっては、何も起こらない方がおかしいのかも知れません。

特に知的障害者は、集団生活するうえで不満や疑問があっても、それを正確に伝えることができないと、余計にストレスを感じやすくなるのではないかと思うのです。

身の回りのことがひととおりできるのであれば、集団生活型ではなく、アパート型のグループホームの利用を検討してみて欲しいと思います。

アパート型のグループホームは、基本的には1人暮らしと同じように、ワンルームの住居で暮らします。ホームによって異なりますが食事の提供があり、他の利用者と一緒に食堂で食事することもあります。

世話人の方も別所に常駐していることがほとんどですし、服薬管理や金銭管理がむずかしい方に関しても、きちんとサポートが受けられます。

ただし、アパート型のグループホームは、完全な自立生活を目指す方の利用となっていることが多く、中には2~3年以内に退去を求められる施設があります。そのため、事前に必ず契約内容を確認しておきましょう。

繰り返しになりますが、今回のコラムの内容は、あくまでも私の経験にもとづくものであり、どのグループホームもこのようなことが起こるわけではありません。

最後に

ここまでグループホームのことを書いてきましたが、グループホームはあくまでも障害者の利用できる福祉サービスのうちのひとつでしかありません。

もしその生活に適応できなかったとしても「ほかの人はちゃんと生活できているのに、自分はできない」と落ち込んだり、自分を責めたりしないでください。

グループホームでの生活は、あくまでも生活していく上での一選択肢であり、グループホームでなくとも精神的に安定した生活ができるならば、それで良いではありませんか。

オランプ

オランプ

長年にわたってうつ病で苦しみながらも病気を隠して働き続け、40歳になる前にやっと病気をオープンにして就労したものの生きることのしんどさや職場でのトラブルは軽減されず。実はうつ病の裏に隠れていたものはADHDであり、更に気が付けばうつ病も病名が双極性障害に変化。これだけ色々発覚したので、そろそろ一周回って面白い才能の1つでも発見されないかなーと思っているお気楽なアラフォー。
実は自分自身をモデルにして小説を書いてみたいけど勇気がない。

注意欠陥多動性障害(ADHD)

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