感覚過敏と暮らす~聴覚過敏編

その他の障害・病気

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皆さんは感覚過敏という言葉を聞いた事はありますか?発達障害の方には感覚過敏をお持ちの方が多く、理解が無い為に苦しんでいる人たちがいます。今回は少しでも感覚過敏の理解を深めてもらえるよう、私たちがどんなことに困っているのか、どんな場面でどうしてほしいのか、体験談を交えながら感覚過敏の内の一つである「聴覚過敏」について具体的にお話していきたいと思います。

聴覚過敏とは

聴覚過敏とは大きな音や特定の音、周波数が苦手で、それが日常生活に支障をきたすレベルのものを指します。普通の人が十分に我慢できる音でも苦痛で我慢がならなくなります。苦手な音として多く挙げられるのが「クラクション」や「サイレン」「ブレーキ」や「チャイム」「ノック」「くしゃみ」等の予測しづらい大きな音。「掃除機」「ドライヤー」「冷蔵庫」「洗濯機」など家電の音。他にも「トイレのエアータオル」や「空調」、食器を洗う時などになる「食器同士が触れ合う」音。オフィスでは「キーボード」や「マウス」「電話」などです。現代の生活では欠かせないものや避けて通れないものが多いことが分かって頂けたでしょうか?

暮らしの中で配慮してほしい事

私が家族と同居していて一番困ったのは「テレビ」でした。テレビの音量が大きいのはもちろんですが、バラエティー番組だと頻繁に大きな笑い声がしたり、拍手が続いたりとまるで人混みの中にいるような感覚に襲われます。CMになると急に大きな音になる番組もあります。私は家の外では少しでも「社会に溶け込もう」「普通に見えるように振る舞わなくては」と気を張って、普通の外出でさえも大変に疲れます。仕事や就活帰りだと尚の事疲れるので、家では正直「感覚を休めたい」のです。あなたがもし反対の立場なら、と考えてみて下さい。

もしあなたが丸一日、十人が同時に歌っているカラオケボックスの一室にとじこめられ帰宅した時、静かな環境を望みませんか?その後、家に帰っても同じ環境ならどうしますか?「いい加減にして!」と怒りたくなるのではありませんか?大げさな、と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、聴覚過敏の人が日々感じている音の洪水によるストレスは普通の方が思うよりはるかに大きいのです。

聴覚過敏の度合いは人によって違いますが、私が日々感じているストレスを少しは理解して頂けたのではないかと思います。私が、家でテレビを見る時は、音を消して字幕で見るかヘッドホンを使います。家族には大きな音が鳴る時は事前に知らせてもらうように頼み、家でも耳栓やノイズキャンセリングのヘッドホンをしながら暮らしています。

私が今、一番困っているのは、夜に大きな音で走行する車やバイクです。その時も耳栓を使いますが、私は普通の人に比べ耳栓の使用率が非常に高いです。毎日耳栓を付けて過ごしていると、耳が耐えられなくなります。痛くて痛くて耳栓が出来なくなるのです。そんな時、あなたなら「耳栓を外したい」と思いませんか?それが就寝時なら「寝るときくらい外したい、リラックスさせてくれ」と思いませんか?ヘッドホンを付けろと仰る方もいるでしょう。しかし、ヘッドホンを付けて寝てみれば分かると思いますが、寝返りが一切打てないのです。さらにヘッドホンを壊してしまう可能性も高い為、現実的ではありません。生活に不必要な大きな音を鳴らす時、苦しんでいる人がいることを忘れないで下さい。

街中で困る時

聴覚過敏の人が食堂などで食事をする際、「食事の時くらい外しなよ」とか「失礼なやつだ」と言われることがあります。こちらとしても外せるものならすぐにでも外したいのです。言わせてもらえるなら「食事の時くらい外させてくれよ」と思っています。でもこちらから「静かにしてください」とか「大きい音を立てないで下さい」とお願いすることはまずありません。自分の感覚が人と違う事に気づいているからです。「聴覚過敏なのでつけさせて下さい」と言っても理解してもらえない場合は聴覚過敏について一から説明しなければなりません。さらに大勢の人の前で自分の障害について話すのは、人によってはとても辛い事です。聴覚過敏とは関係なく失礼なだけの人もいるかもしれませんが、「外したくても外せない人」がいることを知っておいてもらえると嬉しいです。

また、聴覚過敏の人は音に敏感なだけでなく、「耳のピント」が合いにくい人がいます。私もそうなのですが、複数の人が話していると、自分に対する指示が聞き取りづらいのです。テレビや音楽が鳴っている場合も同じです。自分に話し掛けているのが一人だけでも、他に音がしている事でその人が何を言っているのか聴き取りずらい為、理解しにくくなります。それが業務に支障をきたす場合や、本人が苦痛を感じる場合は当然配慮が必要になります。また、耳のピントが合いにくい人は普通の人よりも疲れやすいと言われています。普通の人が無意識で出来ることを努力でしようとしている訳ですから、人よりも疲弊してしまうのは仕方のない事かもしれません。

聴覚過敏のシール

皆さんは「ヘルプマーク」という言葉を聞いた事はありますか?内部障害など見た目では分かりづらい障害を持っていて、公共の場で配慮を必要としている人が身に付けるマークのことです。このマークに関しては自治体が配布しており、電車の広告で見かけることもあるので、一定の理解が進んでいると思われます。しかし、聴覚過敏に関してはどうでしょうか?他に何の障害もなければ聴覚過敏でヘルプマークを付けることは難しいでしょう。この問題に対して行政よりも早く立ち上がって下さったのが「石井マーク」さんです。可愛いウサギのイラストに「苦手な音を防いでいます」の文字が刻まれています。PDFを配布して下さっており、利用は無料となっています。特に聴覚過敏のお子さんをお持ちの方が利用されることが多く、子育てに悩む親御さんの助けになっているようです。 ダウンロードはこちらから→http://www.ishiimark.com/symbol_usapin.html

ただ、私が最近気になるのは聴覚過敏の記事で良く見かける「ヘッドホンではなくイヤーマフです」という文言です。私は聴覚過敏で長らく困っていますが、私が選んだのは「イヤーマフ」ではなく「ヘッドホン」だからです。聴覚過敏だから「イヤーマフ」と決めつけるのはどうでしょうか?私は「イヤーマフ」が悪いと言っているのではなく、聴覚過敏=「イヤーマフ」とは考えないでほしいと思うのです。私は聴覚過敏という言葉が一般に広まるずっと前から色々なツールを試し歩き、やっと今のヘッドホンに辿り着きました。同じ聴覚過敏でも耳栓が合う人、イヤーマフが合う人、ヘッドホンが合う人。また耳栓でもデジタルが合う人やイヤーマフでも工業用が合う人、音響用が合う人など、どのツールを選ぶかは人それぞれです。その中でなぜ私がヘッドホンを選んだのかと言うと、一番の理由が着脱が容易で長時間の使用でも耳が痛くなりにくく、ノイズキャンセリングが使えるという事、次に音楽が流せるという事です。「音楽?」と顔をしかめた方もいらっしゃるかと思いますが、「耳の近くで音が鳴る」という事は私には重要なのです。聴覚過敏が酷い私は雑音をカットするだけでは足りず、「気を逸らせる」事が必要になります。これは医者から勧められた聴覚過敏の療法なので、その療法を選択している私には重要な事なのです。

就活でぶつかる壁

>今、就活をしているとラジオやBGMをかけている職場を良く見かけます。それだけでも困るのに「ヘッドホンはさすがに無理だから、耳栓でもいいかな?」と聞かれることがよくあります。しかし私には上記の理由があるため、答えは「NO」です。耳栓では防げない、継続使用が難しいから給料が下がってもわざわざ合理的配慮としてお願いしているのです。企業からは「接客業だから」「お客様から見えるところだとちょっと」と言われる所も多く、その場では何となく納得したふりをして帰りますが、心の中では「なんでだろう?」という思いが渦巻き、しこりとなって残ります。ではここの企業は車いすの従業員がいたら「お客様から見える所はちょっと」と言うのでしょうか?身体の一部が欠損している人に「接客業だからね」といって断るのでしょうか。

世の中には色々な人がいます。色々な人がいて当たり前、普通なことだと思うのです。勿論その人の能力に応じて給料や任せる仕事は考えるべきだと思いますが、障害ゆえの見た目でつけない職業があるというのはおかしいと思いませんか?

まとめ

軽く聴覚過敏のお話を、と思っていたのですがついつい熱くなってしまいました。この記事を読んで少しでも聴覚過敏への理解が広まって貰えれば嬉しいなと思います。聴覚に限らず一人一人の感覚には個人差があります。一人一人がお互いの感覚を大切に出来る世界が来ることを願っています。

参考文献

「聴覚が過敏「音」で極端に疲れる:困りごとのトリセツ」 NHK
https://www.nhk.or.jp

「【図表でわかる!】発達障害 × 疲れやすさ」 TEENS
https://www.teensmoon.com/

「ネットの話題から生まれた「聴覚保護」マーク どこで手に入るの?」 おたくま経済新聞
https://otakei.otakuma.net/

sakurako*

sakurako*

高校生の時に不登校になりパニック障害と診断される。その後、紆余曲折あり自閉スペクトラム症・解離性障害と診断を受け就労支援施設B型作業所に通う。
現在は就労移行支援施設に通いながら就職活動中。
趣味は読書と映画鑑賞、手芸。“世界をもっと優しく”がモットー。

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