ハンズフリー通話と独り言

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Photo by Sajad Nori on Unsplash

無線のイヤホンマイクなどを使い、スマホを持つことなく通話できるようにする「ハンズフリー通話」が何年か前から登場しています。両手を空けながら電話の相手と話している人はたまに見かける程度ながら、思うことがあります。「傍から見るとすごい独り言だな」と。

ハンズフリー通話があることを知っていてもなお、虚空に目を向け会話する様子はどう見ても「独り言」です。これに対し「電車に乗ってきた障害者を想起させる」とする声も少なくはありません。ハンズフリー通話はどうあるべきでしょうか。

なぜ独り言(独語)をするのか

「ブツブツ独り言を漏らしているのは大抵が障害者だ」という経験則を持つ人は少なからず存在すると思われます。横浜市港南区の啓発ポスターでは「趣味の世界を楽しんだり気持ちの整理をしたり」するためにブツブツ独り言を発しているとしています。

Withnews編集部の神戸郁人さんは、取材を基に「統合失調症」と「自閉スペクトラム」を挙げて解説されています。統合失調症であれば幻聴と対話しているつもりで、自閉スペクトラムであれば平衡を乱すものから気持ちを落ち着けるために独り言を発するそうです。

場合によっては、幻聴に言い返したり自分の声で落ち着こうとしたりしようとして大声を上げることもあります。しかし、それに注意したところで控えるどころか余計に悪化するだけです。

注意するのは逆効果

独り言に対して注意したり咎めたりすると、より不安定を煽ってしまいます。統合失調症の場合ですと、注意してきた方向に新たな幻覚が現れることもあるようです。他にも、注意されることで「また独り言を漏らしてしまった……」と自己嫌悪に陥る可能性もあります。なんにせよ、プラスには働きません。

公共の場(特に電車の中)で、騒ぐとはいかないまでもブツブツ独り言を垂れているのはどうしても気になる所でしょう。しかし、雑に注意をするだけでは根本的な解決になりませんし、それだけでヒーローになれるほど甘くはありません。

当事者にとって望ましい反応のひとつが「見て見ぬふり」です。当事者にもある程度の矜持はあり、それを害されて余計に情緒不安定を招くわけです。そこで「見て見ぬふり」をすることで、無駄に波風を立たせず手打ちにするのが最善となります。

ハンズフリー通話が当たり前になれば理解に繋がるのか

傍目から独り言にしか見えないハンズフリー通話ですが、これが当たり前になって広がれば、独り言もありふれた光景になって理解へ繋がるのではないかと考えてしまいます。ところが、これは不可能であろうと思われます。

そもそもハンズフリー通話は携帯電話を持たないで対話するためのツールです。ゆえに、電車の中で利用するのはマナー違反となり、現実的ではありません。車を運転しながらハンズフリー通話をする宣伝広告もありますが、あれも注意力を削ぐ可能性があります。

ハンズフリー通話は見た目も紛らわしく、マナー違反もより記憶に残りやすいスタイルです。話す方も自分たちだけの世界に入っており、大声で笑いながら虚空と対話する見た目になってしまいます。率直に言えばはしたない通話スタイルに、やむにやまれぬ独り言への理解を促す役目が担えるとは思えません。

なお、2人以上の対面対話であっても、迷惑な話し方はいくらでもあります。筆者自身、電車で乗り合わせた2人組が発射メロディのたびに歌い出して迷惑した体験を先日しました。

こう考えると、喋ること自体我慢するのが時として大切になるのではないかと思うのですが、色々と事情が込み入っているようです。それでも、我慢できるならばした方が公共の場において相応しい行動だと思います。

参考サイト

iPhoneやスマホのハンズフリー、見られてますよ!|オトナのモラル&マナー
https://manners.click

注意で「攻撃対象」に…電車での独り言、障害のある人が望む対応とは?
https://withnews.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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