色弱むけの色遣い「カラーユニバーサルデザイン」とは

身体障害
Photo by Pawel Czerwinski on Unsplash

一部の色の見分けが難しい「色弱」という色覚障害があります。障害とありますが障害者手帳の交付対象ではありません。それでも、色の見え方が違うことから生きづらさを抱えやすいといわれています。

色弱の当事者らが中心となって進めているのが「カラーユニバーサルデザイン」です。色弱にとって見分けづらい色を避け、色弱でない人とも齟齬(そご)がないよう色遣いを調整した、色のユニバーサルデザインになります。

色弱とは

色弱はかつて「色盲」と呼ばれていました。ゆえに色がわからない白黒テレビのような視界ではないかと誤解されることもあったそうです。実際の色弱は特定の色どうしの見分けがつきにくいのであって、色そのものが分からないというわけではありません。

網膜には、赤を感じるL錐体・緑を感じるM錐体・青を感じるS錐体という3種類の「錐体」という細胞があります。これら錐体の働き方が健常者と違うことで色弱となり、一部の色の見分けがつきにくくなるのです。なお色弱は先天性で、男性では5%、女性では0.2%が抱えているとされています。

色の見え方が違えば周りとの会話が合わなくなりますし、絵を描いて彩色する図画工作の授業や遠くの標識を確認する車の運転で著しい不利をこうむります。それでも生活への影響が薄いとみられるためか障害者手帳の交付対象には入っていません。

障害者手帳が出ないからといって色弱への配慮を怠っていい理由にはなりません。そこで、色弱の影響しない色遣いをする「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」が登場します。

カラーユニバーサルデザイン

カラーユニバーサルデザインが大きな動きを見せたのは、日本産業規格(JIS)の定める「安全色」に大幅改正が加わった2018年のことです。健常者だけでなく色弱や弱視や白内障の人々も交え、微妙に違う約970色の中から誰もが安全色としてはっきり認識できる色を選びなおしました。

注目すべきは決定の場に色弱などの当事者が直接参加していることです。当事者を置いてけぼりにして勝手に決めていくのではなく、当事者の意見も聞きながら慎重に安全色を決めていったのでしょう。お陰で多くの人にとって本来の彩色で見えるものが増えていきました。

カラーユニバーサルデザインを大いに活かしたのが先の東京オリンピック・パラリンピックです。トイレなどの案内表示は白黒を基調とし無駄に色を増やさないことや、開会式のプラカードを黒地に黄色の文字で読みやすくするなど、「網膜の多様性」への配慮がなされていたそうです。

また、色弱にも配慮した色遣いが出来ているかどうかも簡単にチェックできます。スマホの無料アプリ「色のシミュレータ」を使えば色弱当事者の視界を再現できるため、どういった色が適切か一般人にも分かるようになっています。

学校現場でも配慮を

かつては小学4年生を対象に学校で色覚検査が行われており、色弱は割と早い段階でわかりました。しかし差別防止の観点から2003年を機に色覚検査が必須項目から落とされます。復活させる動きもあるようですが、「検査だけでなくその後のケアもすべきだ」という指摘もあります。

そう指摘した岡部正隆教授(東京慈恵会医科大学解剖学講座)は、色弱の生徒に対し授業や進路指導などで配慮していくべきとのべています。色弱だと就けない職種は存在しますが、いま色弱と分かった児童が大人になるころには基準が変わっているかもしれません。色弱だから進路が限られていると将来を悲観しないよう、正しい情報にアクセスするための調べ方も教えていくべきです。

また、教員ひとりひとりに授業での配慮をもとめていくよりも、最初からチョークなどの備品にカラーユニバーサルデザインを導入した方が早いです。例えば、採点で○や×をつけるためのサインペンひとつとっても、色弱にも判別できる朱色に統一すれば、配慮を知らない教師でもどうにかなります。ただ、一番の決定権を持つ校長などが色弱について認識や理解を持つ必要はあるでしょう。

そもそも、生活上での困りごとがなければアウティングする必要性はないと岡部教授は説きます。必要な時に必要な検査を受ければよく、本人が困っているかどうかに焦点を当てるのは障害の社会モデルにとって原則でもあります。

参考サイト

ゲーム「ぷよぷよ」も対応、「色弱」の人が抱える困難
https://toyokeizai.net

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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