一生涯の病気~1型糖尿病

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出典:Photo by Diabetesmagazijn.nl on Unsplash

「1型糖尿病」と聞いたとき、その患者さんがどういう人なのか想像できるでしょうか?

「注射をしている人」「小さい子ども」という認識の人も多いかもしれません。あるいはまったく知らないという人もいるかもしれません。

じつは1型糖尿病の治療の歴史は、まだたったの100年なのです!

1型糖尿病ってどうして起こるの?

すい臓の「ランゲルハンス島」と呼ばれる部位は血糖値を下げるホルモンである「インスリン」を作る場所です。1型糖尿病はこのランゲルハンス島が破壊されて、インスリンが生産できなくなったことで発症します。

ランゲルハンス島が破壊される原因は、まだ明確にはなっていません。

1型糖尿病は「インスリン」を外から補充する必要がある病気であり、それゆえに「インスリン」が発見される前までは死の病として恐れられていたのです。

そしてその「インスリン」が発見されたのが今から約100年前なのです。

私が1型糖尿病になった経緯

私が1型糖尿病になったのは19歳の夏でした。当時、大学受験で失敗して浪人し、予備校に通っていたころです。

そのときは「やけに喉が渇く」「体重が減る」「体がだるい」などの症状が出ていました。おかしいなと思いながら、勉強に穴は開けられないと毎日予備校に通っていました。

あまりにも体力がなく、虚弱な状態だったため「一度、血液検査を受けてみたら?」と母の進言で近くの診療所で検査をすることになりました。結果、血糖値約800mg/dLというお医者さんが見たら卒倒するような値が発見されて、即座に入院することになりました。

一般的な血糖値は高くて120mg/dL前後なので、当時連絡をくれた診療所の看護師さんは、かなり焦っていました。

高熱(後にインフルエンザだと発覚)にもなっていた私は自ら立つこともできず、救急車に運ばれていったことを覚えています。人生で初の救急車でした。しかも、9月9日(救急の日)だったそうです。今となっては笑い話ですが、家族も友だちも、そして私自身も困惑していました。

インスリン治療開始

そんな私も例にもれず、病状が落ちついた後は教育入院を受けることになりました。教育入院とは「入院して、治療の主軸となる食事療法や運動療法を実践的に学ぶシステム」です。主には糖尿病が多く、血糖値を自分でコントロールできるようになるのが最終目標です。

1日に食べた方がいい食事量とその内容や、薬の量の調整方法など、様々なことを学びました。

そうして、教育入院が終わり、日常生活でのインスリン療法が始まりました。食事の前に血糖値を測定し、食べる量で薬(インスリン)の量を決めて打つのですが、これがなかなか大変でした。食事の前に「血糖値を測る」「薬の量を決める」「薬を打つ」の3つが追加されたのですから、めんどくさがりな私が慣れるのには時間がかかったのです。

おまけに薬を注射をする位置が腹部であったのもあり「お腹をさすがに人前で見せるのは……」と別の部屋に移動する必要があったのも手間でした。今ではインスリン注射ではなく、インスリンポンプという装置を使っているので、それを操作するだけでいいのですが、当時は治療法の選択肢が少なかったので苦労した記憶があります。

食べるものなどに制限がないとはいえ「食べた量に応じて薬を打つ」というのは苦痛でした。薬の量を間違えると高血糖や低血糖などで体が辛くなるので、一時期は「なんでこんな病気になってしまったんだろう」と落ち込むこともありました。

私を救ってくれたもの

1型糖尿病になった患者さんのなかには「自暴自棄になって、治療を放棄する」「体重を落とすためにわざとインスリンを注射しない」といった人も少なくないと聞きました。

私が楽観的な性格もあったのが幸いでしたが、なによりも家族や友だちが受け入れてくれたのが大きかったと思います。

「私、1型糖尿病なんだー」と友だちに明かしたときに「へー、どうしたらいい?」とそこまで重く受けとめずに、配慮をたずねてくれたのが、私にとってはありがたかったです。

家族も最初こそは私が病気になったことに関して泣いてしまったり、ショックを受けたりしていました。特に、私が病院から日常生活に戻った直後こそは、食事面ではかなり気を遣ってもらいました。

年がたつにつれて、食事もおおざっぱにはなりましたが、白飯の量をあらかじめ150gついでくれていたり「ごはんできるからインスリン打っておいで~」と事前に声をかけてくれるようになりました。それだけのことかもしれませんが、けっこう助かっています。

あとは「健康でないと楽しいことも100%楽しめない」ということを趣味を通じて感じたので、1型糖尿病の管理をしっかりやろうと「自分で意識した」ことは大きかったと思います。

1型糖尿病になってしまったのは不運でしたが、かわりにたくさんの人に支えてもらったり、栄養や健康の分野をより詳しく知ることができました。そういう意味では幸運だったかもしれません。

まとめ

毎日意識して健康的な食生活をするのは難しいです。たまには、量を気にせず思いっきり焼肉とかお菓子も食べたい日だってあります。

そういう日は、試してみるのもいいと思います。翌日がお休みの日に思いっきり食べてみて、計算した薬の量を打って、どうなったか記録する。そうすることで対処法を見つけることができます。

1型糖尿病で大事なのは「長い目で無理なく治療を続けること」です。他の病気にも同じことがいえるかもしれませんが、1型糖尿病は毎日病気と向き合う必要がありますし、現在の治療法では生涯付き合っていく必要があります。

いまでは、1型糖尿病のネットワークも増えてきました。悩んでいる方は、それらも活用してみるといいかもしれません。

私はたくさんの1型糖尿病の先輩にネットを通じて助けてもらいました。私もいつか同じ1型糖尿病で悩んでいる人の助けになれたら、と考えています。

1型糖尿病について、簡単にですが説明させていただきました。このコラムを見て少しでも笑っていただけたら幸いです。

参考文献

【日本イーライリリー:インスリンの歴史】
https://www.diabetes.co.jp/disclaimer/check-diahcp

【朝日生命成人病研究所附属病院:教育入院について】
https://asahi-life.or.jp/

紅咲

紅咲

大学時代にうつ症状を発症。
以来、うつ病や天気痛などに振り回されながら就労移行支援を利用中です。
TRPGとTVゲームが趣味。

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