逆子への医療事故で重度の脳障害。その責任は払われるべき

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Photo by Marek Okon on Unsplash

京都府内で、逆子を正しい体勢に戻す医療行為においてミスが起こり、生まれた子に重い脳障害が残る事案がありました。現在4歳になるその児童は、未だ首が据わっておらず基本寝たきりの状態、将来身体が大きくなった時のことを思えば親の悩みは尽きません。

逆子そのものも出産時のトラブルを引き起こす原因です。母親は逆子を直すため、担当医に勧められた「外回転術」を受けることにしました。外回転術とは妊婦のお腹越しに胎児を回転させる医療行為ですが、その成功率は約4割程度とかなり不安定な代物。専門家も「早期の胎盤剥離や子宮破裂のリスクを伴う」「緊急事態にすぐ対応できる状態でやるのが普通」「そもそもお腹の中の胎児を回すのは容易ではない」と説きます。

施術は失敗。胎児の心拍数アラームが鳴り響き、低酸素状態を疑わせる所見が何度も出る有様でした。しかし担当医は、1時間空けて2度目の外回転術を決行。緊急の帝王切開へ至る判断が遅れたこともあって、低酸素状態に晒され続けた胎児は重い脳障害を負うこととなりました。

病院はこれを医療事故と認め、謝罪ののちに母親と和解。しかし担当医からは一片の謝罪もなく、京都を離れ滋賀県内で産婦人科医を続けているといいます。誠意を欠いた態度をとり続ける担当医に対し母親は告訴状を提出、10か月を経て遂に担当医は書類送検となりました。

先天的な障害であれば誰の責任でもありません。しかし後天的な障害である以上は、それを負わせた誰かしらの者が責任をとるのが筋というものです。出産時のトラブルがなければ、その子は健常児としての生活を謳歌していたことでしょうから、これは後天的な障害であるといえます。

障害者には「障害を負うもの」だけでなく「障害を課されるもの」という意味もあり、社会から課される障壁と逆風の多さゆえにとれる選択肢も圧倒的に少ないです。後天的な障害者というのは、期待されていた選択肢の大半を人生の途上(たとえ出産時であっても)で削られてしまった状態といえます。であれば、誰かが責任を取ってけじめを付けねばなりません。

この件で本当に責任を取るべき担当医は、責任をとるどころか一言の謝罪もないまま府外へ移り、産婦人科医を続けています。母親は担当医の書類送検を第一歩としつつ「医師として責任のある対応を求める。あの時の判断がどれほどの結果に繋がったか、しっかりと受け止めて欲しい」と真実の究明を求めました。

もし担当医が責任を免れるとすれば、重い脳障害でも他の健常児と同じように生きられる構造が確立された場合に限ります。勿論、そこまで極端なバリアフリーが実現している筈もありません。担当医はただ謝罪の言葉を並べるだけでなく、評判なりキャリアなり何かしら自身の社会的リソースを代償にして「けじめ」を付ける必要があります。後天的な障害を負っても未来が担保されるほど現実社会が優しければ良かったのでしょうが、実際は正反対ですからね。ゆえに、未来を断った責任が発生する訳です。

参考サイト

「息子の全てを奪った…」逆子を直す手術で子どもに重い「脳障害」
https://newsdig.tbs.co.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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