ゲーム依存の新研究、依存と趣味の違いとは
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「ゲーム脳」を唱え、自閉症への反医療・非倫理的な罵詈雑言さえ投げかけた反ビデオゲームの代表格、森昭雄氏が最もイキイキしていた時代も遠くへ置き去りとなりました。かつてのファミコン小僧も子どころか孫さえ生まれているかも知れません。WHOが「ゲーム障害」を正式に定義したことは最後の資産となるでしょう。
ハンガリーなどの研究者が合同で出した論文「Game on or gone too far? Executive functioning and implicit sequence learning in problematic vs. recreational gamers」では、依存的なゲーマーとそうでないゲーマーの認知能力について調査が為されました。
調査対象として集められた114人の成人を、全くプレイしない非ゲーマー群(41人)、週14時間以上プレイしつつゲーム障害の基準に達していないレクリエーションゲーマー群(42人)、週14時間以上プレイし且つIGDT-10の尺度で基準を超えたゲーム障害リスク群(31人)の3群に分け、様々な神経心理学のテストを実施しました。ただのゲーマーと依存的なゲーマーの間に、どのような違いが見つかったのでしょうか。
IGDT-10について
ICDT-10とは自己報告式の質問紙で、これのスコアによって依存的かどうかを分けることにしています。質問は10つ、それぞれ「とらわれ」「離脱症状」「耐性」「コントロールの失敗」「他の活動の放棄」「継続」「欺瞞」「逃避」「否定的結果/人間関係」「否定的結果/学業・職業」について聞きました。
質問には「全くない」「時々ある」「頻繁にある」の3件法で答えてもらい、「頻繁にある」と答えた数のみをカウント。否定的結果2種については、どちらか一方あるいは両方で「頻繁にある」と答えた場合のみ合計1点を加算し、両方該当しても2点にはなりません。つまり最大9点であるところを、5点以上カウントされれば依存的なゲーマーとしてリスク群に入れられることになっています。
具体的な質問内容は以下の通りです。画面の前のあなたも答えてみましょう。
①プレイしていないとき、ゲームについて空想したり、前のプレイを思い返したり、次のプレイを心待ちにすることがどれくらいありましたか。(とらわれ)
②プレイできなかったとき、または普段より少なくしかプレイできなかったとき、落ち着かない、いらいら、不安、または悲しさを感じることがどれくらいありましたか。(離脱症状)
③「十分にプレイした」と感じるために、より頻繁に、またはより長時間プレイする必要を感じたことはありますか。(耐性)
④ゲームに費やす時間を減らそうとして失敗したことはありますか。(コントロールの失敗)
⑤友人と会ったり以前楽しんでいた趣味に参加するかわりに、ゲームをしたことはありますか。(他の活動の放棄)
⑥ネガティブな結果(睡眠不足、学校や仕事での成績低下、家族や友人との口論、重要な義務を怠ることなど)があったにもかかわらず、たくさんプレイしたことはありますか。(継続)
⑦家族・友人・その他の重要な人に、自分がどれくらいゲームをしているかを知られないようにしたり、ゲームについて嘘をついたことはありますか。(欺瞞)
⑧ネガティブな気分(無力感、罪悪感、不安など)を和らげるためにプレイしたことはありますか。(逃避)
⑨ゲームのために重要な人間関係を危険にさらしたり、失ったりしたことはありますか。(否定的結果・人間関係)
⑩ゲームのために学校や仕事の成績を危険にさらしたことはありますか。(否定的結果・学業/職業)
実験の結果
神経心理学的なテストを実施した結果、3群について「リスク群はワーキングメモリが少ない」「レクリエーション群は非ゲーマーより注意制御能力が高い」「潜在的系列学習の能力に差はみられない」といったことが確認されました。
ワーキングメモリ 情報を脳内で一時的に記憶しつつ処理する能力をワーキングメモリと言いますが、障害リスク群はそのワーキングメモリの容量が少なく出ていました。具体的には数唱問題やカウンティングスパン問題の成績が他の群より悪かったです。カウンティングスパン問題の成績は論理的思考力や流動的知能と高い相関があります。
衝動性 シンプルな記憶課題である1-back課題では、誤ったタイミングで反応する「お手つき」がリスク群に多く見られました。これはより衝動的な反応スタイルであることを示しています。
注意制御能力 同じく1-back課題においてレクリエーション群は非ゲーマー群よりも正確に反応できており、2-back課題やGo/No-Go課題でも良い成績を出していました。これは情報を見逃さず的確に反応できていることを意味し、注意制御能力が高まっていることを示唆しています。
潜在的系列学習 無意識のうちにパターンの規則性を覚える潜在的系列学習については、3群の間で有意な差は見られませんでした。これはゲーム障害に関する従来の予想を裏切る結果です。従来はゲーム障害になると無意識の習慣的処理に偏ると予想されていましたが、この実験結果によって、依存的なゲーミング体験は単純な習慣化だけで説明のつかないものだと示されました。
まとめると?
これらの結果が示すのは、長時間のゲームが認知機能を低下させる訳ではないことです。その上で、娯楽としての適度なゲーミングは寧ろ注意力を研ぎ澄ます可能性すらあることまで示されました。認知機能の低下は依存状態により起こるものであって、ゲームそのものが起こすわけではありません。
この実験で長時間ゲーマーとされたのは週14時間以上のプレイヤーでしたが、これは1日2時間に相当します。香川県では1日1時間、もっと酷いコメンテーター気取りは1日30分を掲げていましたので、これを長時間と言い張ってもいいでしょう。「週14時間は少なすぎる。依存気質ならもっと長時間の筈だ」と食い下がっている声も見受けられましたが、これらの時間間隔は反ビデオゲーム界隈が決めたことなので、減らず口を叩かず素直に長時間だと受け入れればいいんです。
また一つ、ゲーム害悪論から正当性が失われていきました。いまゲーマーが気にするべきは頓珍漢な言説ではなく、各種ゲーム機の値上げを招いたメモリ買い占めの暴力に対してですけれどもね。
参考サイト
ゲーム依存と趣味ゲーマー、同じ長時間プレイでも脳への影響に差 100人以上で調査した研究結果
https://www.itmedia.co.jp


