「スラックティビズム」はワンチャン啓発や周知になるかもしれない。だがそれまで
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「スラックティビズム(Slacktivism)」という言葉があります。怠け者(Slacker)と社会活動(Activism)を組み合わせた造語で、SNSでのいいねやオンライン署名といった労力なき些細な行動で社会に働きかけたつもりになる様を表しています。気軽に参加こそ出来ますが、その程度で社会や政治が変わるというのは都合のいい空想でしかなく、しばしばスラックティビストと揶揄されます。
例えば「ツイデモ」と呼ばれる行動。多くの目に留まれば何かしら変わると信じ、決まったハッシュタグをつけて決まった時間に発言したりバズった発言にぶら下がったりしています。なまじ「#Metoo」のような成功例があるために模倣する者が後を絶ちませんが、大抵は内輪ネタに過ぎず無視されて終わります。よしんば二匹目のドジョウが叶ったとしても、法や制度を変えるまでのパワーはありませんし、感情や知名度が法を曲げることなど本来あってはならないことです。「#国は安楽死を認めて下さい」などは無意味なツイデモの典型と言えるでしょう。
多くの目に留まる事による啓発や周知の効果はワンチャンあるかもしれません。しかし、一時の感情に留まらず苦難の道を継続して歩み続けなければ本当の意味で社会や制度は変わらないのです。危険運転致死傷罪からミーガン法まで、本当の原動力となったのは遺族ら当事者の粘り強い活動であることを忘れてはなりません。一瞬の感情ではなく持続的な泥臭さが変革をもたらします。
それはそれとして、スラックティビズムの好例である「Kony2012」と、稀有な成功例である「ALSアイスバケツチャレンジ」について紹介したいと思います。双方から分かるのは、多くの人はリアルデモに参加するほど行動力が無いことと、そうした人々さえマンパワーに変えればスラックティビズムとて上手くいくのだということです。
Kony2012:動画は900万再生、リアルデモ参加者は0人
ウガンダの反政府勢力「神の抵抗軍(LRA)」は予てより内戦を繰り返しており、殺しや略奪は勿論のこと子どもを拉致して少年兵に仕立て上げるなどの搾取も平然と行ってきました。2012年、LRAのトップであるジョゼフ・コニー司令官を拘束せよと訴えるべくInvisible ChildrenというNPO団体が運動を開始します。こうして出来上がった短編映画が「Kony2012」です。
プロモーション映像の再生数は900万を超え、「#Kony2012」のハッシュタグも400万以上拡散されました。多くのセレブや著名人も呼応した運動は、大バズりという言葉でも足りないほどの拡散力と盛況ぶりです。いくつかの都市ではリアルデモも計画され、世界中でコニー逮捕の機運が高まるかに思われました。
しかし現実世界でのデモは大失敗。トロントでの参加者は50人、シドニーでは12人、モントリオールに至っては参加者0人という閑古鳥どころではない有様でした。動画再生数もハッシュタグも、実際にデモへ足を運ぶ行動力を担保するものではなかった訳です。動画を再生するだけなら誰でも出来ますが、その先へ進むかどうかは全くの別問題という、スラックティビズムの教科書というべき事案となりました。
ただKony2012自体には他にも問題点が多くあります。活動で集めた資金の用途が不透明だったり、西洋人の上から目線が現地住民からの反感を買ったり、コニー司令官を捕まえれば解決すると単純に考えていた李、公開時ですら情報が古かったりと、寧ろ失敗の原因はこれらでないかと思われます。特に情報の古さは致命的で、公開当時は既に件のコニー司令官はウガンダを離れていて問題は政府の腐敗にシフトしていたそうです。これではInvisible Childrenは何のために戦っていたのか分かりませんね。
飽くまでスラックティビズムの代表例としてKony2012から学ぶべきは、再生やいいねのボタンを押す労力と実際に外へ出て行動する労力には著しい乖離と隔たりがあるのだということです。皆様の想像以上に、大衆は酷薄で移り気なものです。
ALSアイスバケツチャレンジ:寄付への導線が成功のカギか
2014年頃に流行った「ALSアイスバケツチャレンジ」はスラックティビズムの中でもかなり稀有な成功例です。2人のALS患者が発祥とされるアイスバケツチャレンジは「バケツ一杯の氷水を頭からかぶる」「その様子をSNSで発信し、次にやる人を指名する」というルールで、これがアメリカ国外にも知れ渡るほどの大バズりを見せ、水不足の南アジアでもバケツ一杯の米を寄付する「ライスバケツ」として実行されました。チャレンジの過激化という弊害もあるにはあったのですが、この活動はやがてALS協会への多額の寄付に繋がり新薬開発の財源にまでなります。
Kony2012がウガンダの内情を理解していなかったように、アイスバケツもまたALSについて理解されたわけではありません。それでも実際にALS患者を支える新薬開発にまで至ったのは何故でしょうか。成功の秘訣は「選択肢」でした。
アイスバケツにはもう一つ「氷水をかぶるかALS協会に寄付するか選択する(両方やってもいい)」というルールがありました。これこそがKony2012との大きな違いで、具体的な支えになる上すぐ出来る選択肢を提示したことで単なる世界規模の奇祭に留まらず済んだわけです。
スラックティビズムの特性を逆に利用したことで、周知と寄付の両方が叶ったALSアイスバケツチャレンジ。バズりをそのままマンパワーに変えていったことは奇跡と呼んで差し支えないものでしょう。しかし、奇跡はおいそれと起こらないからこそ奇跡たりえます。アイスバケツのメソッドを真似したところで同じような成功が出来るかというと、そうは思えません。大衆は本来、酷薄で移り気で面倒くさがりなのですから。
参考サイト
スラックティビズムとは|マイケル
https://note.com
世界を席巻するキャンペーン動画「Kony2012」に異議アリ!?
https://wired.jp
スラックティビズム(Slacktivism)とは・意味|世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン
https://ideasforgood.jp
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