AIで福祉現場に「余白」を取り戻す──Deepwell株式会社が描く“優しい革命”
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福祉業界に特化したAI実装支援を行うDeepwell株式会社。同社は、単なるシステム開発会社でも、AIの使い方を教えるだけの研修会社でもありません。
福祉現場の業務や制度、職員の働き方、利用者との関わり方を理解した上で、各施設 ・事業所に合ったAIツールの構築、業務改善の設計、研修・コンサルティングによる定着支援までを一貫して行っています。
いわば、福祉業界における「AI時代のシステムインテグレーター(SIER)」
AIを導入して終わりにするのではなく、現場で使われ、業務が変わり、職員と利用者に本当の意味で価値が届くところまで伴走することを目指しています。
今回は、Deepwell株式会社 代表取締役の塚本大智氏に、福祉業界にAIを届ける意義、現場実装へのこだわり、そして同社が描く未来について伺いました。
福祉業界にAIを実装するという挑戦
──改めて、Deepwellはどのような会社ですか?
Deepwellは、福祉業界に特化してAIの導入・活用・定着を支援している会社です。
ただ、私たちは単にAIツールを作る会社でも、AIの使い方を教えるだけの会社でもありません。現場の業務を理解し、必要なAIツールを設計・構築し、それを職員の方々が実際に使える状態まで落とし込むことを大切にしています。
福祉業界は、制度も複雑ですし、記録・報告・請求など、現場ごとに業務の形が大きく異なります。そこに対して、ただ高度なシステムを入れても、使われなければ意味がありません。
逆に、研修だけを行って「AIは便利ですね」で終わってしまっても、現場は変わりません。
だからこそ、私たちは「教育」と「開発」と「業務改善」を掛け合わせ、AIを現場に確実に実装していく会社でありたいと考えています。
──Deepwellとして創業期から変化した部分はありますか?
大きく変わったのは、私たち自身の立ち位置がより明確になったことです。
創業当初は、AI研修やコンサルティングを中心に、福祉現場の業務効率化を支援していました。もちろん今もそれは重要な事業です。
ただ、現場と向き合う中で強く感じたのは、福祉業界に必要なのは「AIを学ぶ機会」だけではなく、「AIが自然に業務の中に組み込まれている状態」だということです。
つまり、職員の方が毎回ゼロからプロンプトを考えるのではなく、記録を整えるAI、マニュアルを作るAI、利用者情報を整理するAI、会議内容を要約するAIなど、業務に合わせた形でAIが使える状態を作る必要があります。
半年間で、私たちの役割は「AIを教える会社」から「福祉業界にAI活用のインフラを作る会社」へ進化してきたと思っています。
なぜ、福祉業界に特化するのか
──なぜ福祉業界に特化しているのでしょうか?
理由は大きく2つあります。
1つ目は、私自身の原体験です。身内に指定難病を持つ者がおり、幼い頃から福祉や介護が生活の中にありました。また、学生時代には就労支援や訪問看護の現場にも関わり、現場の大変さを肌で感じてきました。
福祉の仕事は、人の人生や生活に深く関わる、とても価値のある仕事です。一方で、記録や書類整理、制度変更対応、請求業務などに多くの時間が取られ、本来向き合うべき利用者との時間が削られている現実があります。
2つ目は、福祉業界こそAIの恩恵を強く受けるべき業界だと考えているからです。
AIやテクノロジーは、本来、ITに強い人や大企業だけのものではありません。人手不足が深刻で、業務が属人化しやすく、制度変更への対応も多い福祉業界こそ、AIによって大きく変わる可能性があります。
ただし、福祉現場にAIを入れるには、現場理解が不可欠です。福祉の文脈を知らずにシステムだけを作っても、現場では使われません。だからこそ、私たちは福祉業界に特化する意味があると思っています。
──「福祉 × AI」の会社は、まだ多くない印象です。
そうですね。AIの会社は増えていますが、福祉業界に特化して、現場の業務や制度、職員の心理的なハードルまで理解しながら支援している会社はまだ少ないと思います。
福祉業界は、単に効率化すればいい業界ではありません。
記録一つをとっても、利用者の状態、支援の根拠、監査への対応、家族や関係機関への説明責任など、さまざまな意味があります。なので、単純に「AIで自動化しましょう」では不十分です。
どこまでAIに任せてよいのか。
どこは人が判断すべきなのか。
どのように記録を残せば、現場にも制度にも耐えられるのか。
この線引きを設計することが、福祉業界におけるAI活用では非常に重要です。
私たちは、AIを“魔法のツール”として売りたいわけではありません。福祉現場の専門性を下げるのではなく、むしろ専門職の価値がより発揮されるように、AIを裏側で支える仕組みとして実装していきたいと考えています。
「導入して終わり」にしないAI支援
──AI導入でよくある失敗は何だと思いますか?
一番多いのは、導入したものの使われなくなることです。
システムを入れたけれど現場が使いこなせない。
研修を受けたけれど、翌週には元の業務に戻っている。
一部の人だけが使えて、組織全体には広がらない。
これはAIに限らず、DX全般でよく起こることだと思います。
特に福祉現場では、日々の業務が忙しく、新しいことを覚える余裕がありません。そこに複雑なツールや難しい操作を持ち込んでも、現場の負担が増えるだけです。
だから私たちは、AI導入を「新しい仕事を増やすもの」にしないことを重視しています。既存業務の置き換えとしてAIを組み込み、今やっている記録、報告、共有、教育、管理業務が自然に楽になる形を作ることが大切です。
──Deepwellでは、どのように現場へ定着させているのでしょうか?
まず、現場の業務を丁寧にヒアリングします。
どの業務に時間がかかっているのか。
誰に負担が集中しているのか。
どの書類が属人化しているのか。
どの業務ならAIに任せられるのか。
その上で、研修だけで終わらせず、実際の業務を題材にしてAIツールを開発・構築しています。
例えば、法定記録の文章を整えるAI、マニュアル作成を支援するAI、利用者管理のアラート機能を備えたAI、利用者情報を整理するチャットボットなど、各施設・事業所に合わせた形で構築します。
さらに、それらを職員の方々が使えるように、研修やコンサルティングで伴走します。大切なのは、AIを“知っている”状態ではなく、日常業務の中で“使っている”状態にすることです。
──システム開発会社との違いはどこにありますか?
システム開発会社は、要件が明確に決まっているものを形にするのが得意です。一方で、福祉現場では、そもそも現場自身が「何をAI化すればいいのか」を言語化できていないことも多いです。
私たちは、そこを一緒に整理するところから入ります。
業務を分解し、課題を見つけ、AIで置き換えられる部分を見極め、現場に合った運用まで設計する。その上で、必要に応じてAIツールやチャットボットを構築していきます。
つまり、開発だけではなく、課題発見、業務設計、教育、定着支援まで一気通貫で行う点が違いです。
福祉業界におけるAI版のシステムインテグレーター(SIER)ような存在を目指しています。

AIで現場に「余白」を取り戻す
──過去の取材でも「余白」という言葉が印象的でした。今もその考えは変わりませんか?
変わっていません。むしろ、より強くなっています。
福祉現場で一番大切なのは、利用者と向き合う時間だと思っています。もちろん記録や請求も必要ですが、その業務自体が目的ではありません。
本来は、利用者の変化に気づくこと、声にならない困りごとを拾うこと、将来の生活を一緒に考えること、職員同士で支援の質を高めることに時間を使うべきです。
しかし現実には、書類作成や情報整理、確認作業に追われて、その余白がなくなっています。
AIは、その余白を取り戻すための手段です。
職員の方が楽をするためだけではなく、利用者に向き合う時間を増やすため。
現場の専門性をもっと発揮するため。
支援の質を上げるため。
そのためにAIを使うべきだと考えています。
──「効率化」という言葉だけでは伝わりきらないですね。
そうですね。福祉業界におけるAI活用は、単なる業務効率化ではないと思っています。
もちろん、記録時間が短くなる、残業が減る、資料作成が早くなるという効果はあります。ただ、それだけを目的にすると、削減された時間が別の業務で埋まってしまう可能性もあります。
大切なのは、削減された時間を何に使うのかです。
利用者との対話に使う。
職員の教育に使う。
支援の振り返りに使う。
新しいサービスづくりに使う。
そうした「人間がやるべき仕事」に時間を戻すことが、私たちの考えるAI実装です。
AIを“学ぶ”から“使われる仕組み”へ
──AI研修だけでは足りないと感じる理由は何ですか?
研修はもちろん大切です。AIに対する抵抗感をなくし、基本的な使い方を理解する入り口として必要です。
ただ、研修だけでは現場は変わりません。
なぜなら、研修で学んだ内容を日々の業務に置き換えるには、もう一段階の設計が必要だからです。
例えば、ChatGPTの使い方を学んだとしても、現場の職員の方が「では、自分の業務のどこに使えばいいのか」まで考えるのは簡単ではありません。
だからこそ私たちは、研修で終わらせず、実際の業務に合わせてツールの開発・構築・運用まで落とし込みます。
AIを学ぶことが目的ではなく、AIが現場で使われることが目的です。
──現場職員にとって、AIは難しいものではありませんか?
最初は難しく感じる方も多いです。特に「AI」と聞くと、専門知識が必要だと思われがちです。
でも、実際にはAIを使うために最も大切なのは、ITスキルというより「言語化力」です。
自分が何をしたいのか。
どの情報をもとに考えてほしいのか。
どんな形で出力してほしいのか。
どこまでをAIに任せ、どこからを人が判断するのか。
これを言葉にできれば、AIは強力な相棒になります。
福祉現場には、経験豊富な職員の方がたくさんいます。ただ、そのノウハウが言語化されず、個人の頭の中に残っていることも多いです。AI活用を進めることは、そのノウハウを共有し、組織の資産に変えていくことにも繋がります。
福祉業界のAIインフラを創る
──今後、Deepwellはどのような存在を目指していますか?
福祉業界において、AI実装のインフラになるような企業を目指しています。
福祉業界は、介護・障がい・児童など、多くの領域があります。それぞれ制度も業務も異なりますが、共通しているのは、人手不足、法定記録業務の負担、属人化、教育コスト、制度対応の難しさです。
そこに対して、Deepwellが各領域に合ったAIツールや業務改善の仕組みを提供し、現場に定着させていく。
各施設や事業所が、ゼロからAI活用を考えなくても、Deepwellに相談すれば現場に合った形で導入できる。
そんな存在になりたいです。
「福祉業界における経営課題をAIを軸に改革していく企業」でありたいですね。
──「ベンチャー企業」としての意義はどこにあると思いますか?
大企業では入りにくい、現場の細かい課題に向き合えることだと思います。
福祉業界には、まだ言語化されていない課題がたくさんあります。現場の方々も「これが非効率だ」と分かっていても、忙しすぎて変える余裕がないことが多い。
私たちのようなベンチャー企業だからこそ、現場に近い距離で入り込み、スピード感を持って試し、改善し、形にしていけます。
福祉業界のAI活用は、まだまだ始まったばかりです。だからこそ、最初から完璧な巨大システムを作るのではなく、現場で本当に使われる小さな仕組みを積み上げていくことが重要です。
大きな革命というより、現場の1時間、1枚の書類、1つの記録を変えていく。
その積み重ねが、福祉業界全体の変化につながると思っています。
──最後に、福祉業界の方々へメッセージをお願いします。
AIは、福祉の仕事を奪うものではありません。
むしろ、福祉の資格職が本来の力を発揮するためのものだと考えています。
シンプルです。
日々の業務追われる時間を減らし、利用者の方と向き合う時間を増やす。
ベテラン職員の経験を組織の知識として残す。
新人が早く成長できる環境を作る。
施設全体でケア・支援の質を高める。
そうした未来を作るために、AIは大きなエンジンとなります。
Deepwellは、システムを作って終わりでも、研修をして終わりでもありません。福祉現場にAIが根づき、職員の方々と利用者の方々に本当に価値が届くところまで伴走していきます。
福祉業界に、AIという新しいインフラを。
そして、現場にもう一度「余白」を。
その実現に向けて、これからも挑戦を続けてまいります。
Deepwell株式会社 公式サイト
https://ai-deepwell.com/
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