Xジェンダーは何色?〜発達障害の私も考えてみる

発達障害

unsplash-logo Serghei Savchiuc

皆様は「Xジェンダー」という言葉を聞いたことがありますか?「男と女のどちらにも当てはまらない」、という性自認(ジェンダー・アイデンティティ)を持つ人々です。『ロッキー・ホラー・ショー』に出演したイギリスの俳優リチャード・オブライエンさんや、アメリカ合衆国の女優・歌手のマイリー・サイラスさんなどが、自身をXジェンダーと公認しています。Xジェンダーのことや、「発達障害」との関連性、当事者の苦悩などについて、私自身を含む発達障害者のエピソードと一緒に紹介します。

Xジェンダーとは何か

Xジェンダーとは、身体的性別に関係なく、「男と女のうち、どちらかだけに当てはまらない」、という性自認を持つ人々です。Xジェンダーは、日本の造語なので、海外では名称が異なります。Xジェンダーの人々は、海外では「Gender Queer(ジェンダークィア)」、「第三の性」、と呼ばれます。Xジェンダーと類似するものに、Gender Questioning(クエスチョニング)がありますが、両者の違いを簡単に説明します。Questioningの方は、自身の性別を「不明・決めていない」のに対し、Xジェンダーの方は男と女のどちらでもない、と「決めている」点が、大きな違いです。

Xジェンダーには色々な方がいます。大きく分けると、四つのタイプがあります。

①中性タイプ
「男と女の中間にある」、と感じる人々を指します。

②両性タイプ
「男と女の両属性を持つ」、と自認する方です。紹介でもふれたオブライエンさんは、「70%が男性、30%が女性です」、と公言しているので、このタイプに当てはまります。男と女それぞれの部分が何割を占めるのかも、個人差があります。両性タイプの場合、自認している男と女の割合は「半永久的に変わりません」。

③無性タイプ
「男でも女でもない」、と感じている人々です。自分を男か女か、という白黒どっちかに当てはめることに違和感を覚えるのです。

④不定性タイプ
「その日や状況に応じて、性自認が入れ代わる」人々です。ハートネットTV(Eテレ:2017年8月7日)に放送された、Xジェンダーの「城間勝さん」は、身体は男性で心は女性寄りですが、「今日は男の子の顔だ」、とその日の気分や状況で変わります。その人の中の男と女の割合も移り変わる点が、②のタイプとの違いです。

発達障害とXジェンダーとの関連性

今回、私がXジェンダーについて書いたのには理由があります。純粋に興味があるのも一つですが、一番は「発達障害」の当事者の著書を読んでいる中、「自分を男か女のどちらかに当てはめることに違和感を覚えた」、と訴えている人がいたからです。また、発達障害(特に自閉スペクトラム症)は、性別の違いを理解するまでの発達がゆっくりな方が多いです。(発達障害でない子どもの場合、平均的には2〜3歳頃に、男と女の違い、それが生まれた時から変わらないことを理解し始めます。)『自閉症だった私へ』のドナ・ウィリアムズさんも、男としての顔(皮肉屋ウィリー)や女としての顔(社交的なキャロル)など、性別の異なるキャラを演じて人付き合いをしてきました。さらに、実際そうではなかったのですが、「自分はレズビアンではないか」、と疑ったことがあるとも述べています。『自閉症を生きた少女』天咲心良さん(女性)も、中学校前までは「自分は男になれる」と信じ、自分のことを「俺」と呼び続けています。

私自身も、基本は自分を女性として認識し、社会でも女性として生活しているので、自分はXジェンダーとまではいかないのかもしれません。ですが、私自身も時折、自分を男か女にはっきり分けることや、性別によって相手とのやり取りに気を遣う必要があることへの違和感に近い感情を抱きます。具体例をあげると、私はピンク色を可愛いと思いますが、人からピンク色のプレゼントを「もらうのが苦手です」。よく知らない人からの贈り物や、お菓子類などはいいのですが、親密な友達などからピンク色のものをもらうのが苦手です。私は服装や持ち物の色を好きな青と緑でそろえ、「これは私の好きな色です」、と全面的に見せます。それなのに、親しい人からピンク色の小物などをもらうと、「女の子だからピンクでよかったよね?」、と思われた気持ちになるからです(私にプレゼントしてくれた気持ちそのものへの感謝はあります)。

さらに私は、「恋人いない歴イコール年齢」に加え「自分が誰かと恋愛することに興味を抱けない」のです。大学で同級生の異性と二人きりで出かけたことはありますが、当時の私にはデートとか、交際に発展するかもしれないという意識はまったくなく、「ただ友達と遊びに行っている」という認識しかありませんでした。そこだけ聞くと、「じゃあ私はAsexual(アセクシャル※)なのか?」、と考えましたが、答えは否です。自閉スペクトラム症の私は、幼少期から他者に興味を抱けず、自分の世界や趣味にばかり没頭してきました。ただ、そんな私でも今までの人生を振り返ると、特定の異性に好意を抱いたことはあります。そして意外かもしれませんが、恋愛フィクションや、恋愛関係の心理学、知り合いなどの恋バナを聞くのはむしろ好きで、知識欲はかなり高いです。しかし、自閉スペクトラム症の特性もあってか、私は自分が恋愛することに関しては消極的なほうです。恋愛にも異性にも興味がないわけではありませんが、私は「自分の興味とこだわりを優先する」特性が強いからです。そのせいか恋愛経験ゼロな大人に自然と成長しました(しかし、知識と理解だけは耳年増)。
※Asexualとは「無性愛」を指し、他者に対して恋愛感情も性的欲求もどちらも湧かない(恒常的に)性的指向です。

Xジェンダーの悩み

・身体的性別に合った服を着ないといけないのが苦痛。(制服のズボンやスカート)
・書類の性別欄の記入や、公共のお手洗いの時、どちらを選べばいいのか悩む。
・性別の違いを気遣う人付き合いや距離感に悩む、人付き合いが希薄になる。

Xジェンダーの方は、男と女のどちらにも当てはまらないので、「自分は何者なのか」、という「アイデンティティ」に悩みます。今の社会は「男か女か」、「健常者か障害者か」、と白黒つけようとする風潮がいまだ強いからです(最近は性別の欄に、「その他」を設ける所も出ていますが)。性別の話と逸れますが、私自身が抱いた、「健常者でもない、発達障害者(福祉の対象となる)でもない」自分のあいまいな立ち位置や孤独感などの苦しみと似ている気がします。私の性自認は「女性」が濃く、外からも「普通の女性」とみなされていますが、「男性」を思わせるような特徴も実はあったりします。

実は私、プライベートでは「そうだな」、「そうなのか?」、とやや男性的な口調で話します。また自閉スペクトラム症で人にあまり興味が持てなくても、人付き合いをしていく中で必要な態度や道徳感などについては、自分の好きなマンガやアニメのキャラを参考にしてきました。しかし今思えば、自分の行動や心理に強い影響を与えてきたキャラ・人物のほとんどは「男性」です。小学校と中学の間は、強さが美徳だと信じた私は、クッションを練習台にしてパンチの練習をし、自分をきたえようとした時期がありました(ひ弱なので結局無理でしたが)。その影響か、今もボランティアなどで力仕事をする時は、異様に乗り気になり、男性の手伝いすら求めようとしません。

Xジェンダーの抱えるもう一つの大きな悩みは、「恋愛」です。前述でもふれましたが、私も「自分が恋愛することに興味あるのかないのか、どっちともいえない」状況にあり、将来はどうなるのか自問自答することもしばしばあります。Xジェンダーの方は、男か女かのどちらでもないと自認しているため、「同性愛者」とも「異性愛者」とも言えない、あるいは状況で性的指向が入れ替わることもあります。そのため、どちらの性的指向にも属することができず、認知度もいまだ弱いため、悩みを共有できる存在やコミュニティが中々見つかりません。実は、「性自認に関係なく」男性を好きな人は「アンドロセクシュアル」、女性を好きな人は「ジニセクシュアル」と呼ばれますが、これらもいまだ認知が広がっていません。誰かに恋をしても「相手にどう思われるのか」、と悩み苦しむのは、他のLGBTにも共通する悩みです。しかし、、Xジェンダーの場合は状況によって変わることもあるため、本人も相手も戸惑うことがあります。

まとめ

・Xジェンダーは、「男と女のどちらかにも当てはまらない」、と性自認している方を指し、中性、両性、無性、不定性など、様々なタイプが存在します。
・Xジェンダーの方は、男か女かと白黒つけたがる社会における立ち位置や、認知度が低いゆえの孤独感や恋愛での悩みを抱えやすいです。
・発達障害(特に自閉スペクトラム症)の場合、自分の身体的性別への認識や、男と女の違いを理解するまでの発達がゆっくりな方が多いです。

Xジェンダーのことについて、調べながら書かせていただいたので少々つたなく、理解が未熟な点もあったのかもしれません。ですが、今回の記事を一つのきっかけとして、Xジェンダーの存在について、自分に当てはまるのではないかと思った当事者の方から、初めて耳にしたという色々な方にまで、認知度が少しでも広がっていけば幸いです。

私は、色々な存在や愛の形があっていいと思います。世界には、エッフェル塔やベルリンの壁と結婚した人も存在するので。私自身は最近、Xジェンダーのキャラクターに恋し始めたので。無性のそのキャラを好きになった私は当時戸惑いましたが、人に恋すること、人を愛することは、時に「性別の壁」を超え、「その人そのものを愛する」ことが大きな愛を育むことではないか。そんな大切なことを、そのキャラに教えられた気がします。

私は、性別「のみ」で規定される恋愛から、「多様な属性を持つ存在同士」へ、と世界が多様な「愛」を結ぶ日が来ることを願います。

最後までご拝読ありがとうございました。

参考文献

・「用語解説:Xジェンダーとは?:男女の枠に属さないってどういうこと?」Job Rainbow For LGBTQ+
http://jobrainbow.net

・「Xジェンダー ってどんな人たち?海外のXジェンダーたちまとめ」Letibee Life
http://life.letibee.com

・「性別意識の芽生え」パンパース
https://www.jp.pampers.com

・ドナ・ウィリアムズ(訳:河野万里子) (2015年)「毎日が天国——自閉症だったわたしへ」明石書店

・天咲心良(2017)「COCORA自閉症を生きた少女 1 小学校 篇」講談社

・「今日は顔が男の子 LGBTでもない、両方の性をもつXジェンダー」
http://news.livedoor.com

・「人以外のものと結婚した人々6選」TrapRadar
https://trapradar.net

*Misumi*

*Misumi*

自閉スペクトラム症のグレーゾーンにある、一見ごく普通のネコ好きです。10代の頃は海外と日本を行き来していました。それもあいまってか、自分ワールドにふけるのが、ライフワークの一つになっています。好きなものはネコ、マンガ、やわらかいもの、甘いもの、文章を書くこと。最近は精神保健福祉士を目指しながらコミュニケーションを学び、今後の自分について模索する心の旅人。

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