メランコリー親和型うつ病~性格傾向もうつ病の危険因子の1つなのか?

うつ病
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病前性格という言葉を聞いたことがあるでしょうか?ある疾患と統計学的に優位な関係にある性格傾向のことを現す言葉です。日本の精神医学では浸透している言葉ですが、この区分けに疑問を投げかける専門家もおられます。それらを踏まえて、うつ病に症状やすい病前性格の内容を紹介させて頂きます。

メランコリー親和型うつ病~うつ病

病前性格論という分類は、ドイツの精神病理学者フーベルトゥス・テレンバッハが提唱した性格傾向を現した言葉です。メランコリー親和型と言われている性格は、ストレスを敏感に感じやすいとされています。この性格の特徴は、真面目で几帳面、責任感が強いことです。社会的には評価されますが、その反面、他人の評価や自己の承認欲求が満たされないと気になり、何か問題が起こると自己責の念が強く、感情がネガティブになる傾向があります。ひどくなると、あらゆる刺激に反応できなくなります。気分の波が大きく、心理的視野狭窄に陥りやすいと言われています。

年齢層は主に中高年層で、病前性格は責任感が強く、仕事熱心な方が多いです。自分自身を追い詰めることで、発症しやすいそうです。うつ病と診断されても、認めたくない傾向が強いのも特徴ですが、本人が病気に対して納得すると、休養と服薬で症状が落ち着いて安定した状態まで治療が進みやすいと言われています。重症化すると自殺企図を図ることもあります。

また、何かに執着しやすい性格も注意しなければいけません。例えば、仕事熱心で完璧主義、凝り性で絶対に弱音を吐かない性格で、何でも1人で抱え込み、悩んでしまう方などそうであると言われています。ただ、病前性格はうつ病の大きな要因ではなく、あくまでも危険因子の1つです。必要以上に考えすぎると、かえって危険です。

真面目で自分に厳しく責任感が強い方は、うつ病に症状リスクが高いです。このような性格指向が強いと思われる方は、病前性格の振り分けでは、メランコリー親和型であると理解してもらっても差し支えがないのです。つまり、一般的に知られているうつ病の症状になりやすいのです。

しかし、メランコリー親和型の病前性格は近年、話題になっている非定型うつ病との相関性は確認されていません。

ディスチミア親和型うつ病~非定型うつ病

最近、新しいタイプのうつ病が増えている、という話は以前のコラムで書かせてもらいました。
▶関連記事:誤解されやすい非定型うつ病〜新型うつという造語・現代の魔女狩り

ディスチミア親和型うつ病~非定型うつ病に症状やすい病前性格

新型うつ病という名称は正しくなく、「ディスチミア親和型うつ病」または「非定型うつ病」、という名前が正式に与えられています。年齢層は主に青年層が多く、病前性格は、強い自己愛と漠然とした万能感を持ち、挫折感を感じると他罰的な傾向を示すとされています。診断には協力的で、症状からの離脱には消極的とされ、メランコリー親和型うつ病と違い、休養や服薬だけでの治療だけでは慢性化しやすく、どこから病気でどこまでが人格なのかが判断が難しいと言われています。メランコリー親和型うつ病と違い、気分の波が小さいのが特徴です。

ディスチミア親和型うつ病は、一見、軽症に見えますが、症状が落ち着いて安定した状態までに至る過程が難しいと言われています。ディスチミアとは、気分変調という意味を現します。メランコリー親和型うつ病や双極性うつ病と違い、様々な要因が絡みあっているため判断が難しいと指摘されています。

病前性格論は正しいのか?

病気は時代を映すと言われています。ディスチミア親和型うつ病が注目を浴びるようになった時代背景は、バブル崩壊後、社会全体で激しい競争及び成果主義が蔓延っており、働く人々に会社側は、過酷なノルマを課すようになりました。

ディスチミア親和型うつ病と他の精神疾患の違いは、気分反応性の存在、つまりあらゆる刺激に反応できなくなるのではなく、楽しい刺激ならポジティヴに反応できることです。このタイプのうつ病は、終身雇用が約束された世代(高度成長期)と、非正規雇用が増えた(バブル崩壊後)世代ギャップを反映したものであるとの説があります。終身雇用が約束された世代から「甘えている」と言わんばかりの教育的な対応は、「この人はわかってくれない」と思われてしまい、反発心が生まれ、逆効果になるというのです。

従来のメランコリー親和型うつ病治療の原則であった、「まずは休養を取ること、必要なら薬を飲むこと」、だけでは症状が悪化して、症状が慢性化しやすいことを念頭に置く必要があります。メランコリー親和型うつ病の患者さんは、精神科を受診する前に、内科などを受診することが多いです。私自身もそうでした。

もし、医者側の立場から見て、患者さんが身体の不調を訴えて、外来などで通院して精神疾患が疑われたら、「あなたの問題は精神科かも」、と一方的に伝えるのではなく、「ここは内科なので、身体の問題はここで解決するけれども、あなたの心理的な問題は専門家の助言が必要ですよ。」という具合に誘導していくことが重要になってきます。精神疾患の個人背景を把握するには時間を要します。症状をよく理解した専門家でないと判断が難しいため、精神科と内科の密接な連携が重要となると言われています。 日本の精神科医が英米の精神科医に話を聞くと、テレンバッハのメランコリー親和型の概念を知っている精神科医が誰もいなかったというという話もあります。ある精神科医は「確かにメランコリー親和型に関する論文は日本人の研究者だけが突出しており、英米ではほとんど取り上げていない」、とも仰っています。日本だけに顕著な病型なのでしょうか?様々な学説があり、結論は出ていません。

参考文献

イミダス メランコリー親和型性格
https://imidas.jp/

アメリカ国立医学図書館 国立衛生研究所 
ヨーロッパ系の人における大うつ病のリスクに関連する15の遺伝子座の同定
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed

アカデミストジャーナル
https://academist-cf.com/journal/

tkbn

tkbn

40代男性。30代半ばでうつ病を発症。40代になって発達障害の疑いありと診断される。就労支援機関で自分の特性について学び、最後の就活を終えコラムを書いています。趣味は鉱石収集。年2回大阪・京都で行わるミネラルショーや即売会に行って、気に入ったものをコレクションするのが楽しみですが、部屋で飾る場所が無くなっているのが最近の悩みです。

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