ミゼットプロレスの興亡~知名度を抑えた見せかけのヒューマニズム

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「ミゼットプロレス」とは、低身長症のプロレスラーによるプロレスで、俗に小人プロレスと呼ばれる格闘技です。かつてはコンテンツとして一定の地位を築いていた時代がありました。日本でもそれなりに盛り上がっていたのですが、現在は2名しか現役の選手がおりません。

ミゼットプロレスが廃れた背景には諸説あります。人権団体のクレーム、女子プロの台頭、後継者不足など様々な原因が挙がっていますが、確たるものはありません。逆にすべてが原因とも言えます。

アメリカやメキシコではルチャリブレを前面に出したガチバトル路線で今も一定の人気を堅持しています。日本のミゼットプロレスもコメディ路線を廃することが出来れば未来は変わったのでしょうか。

本当に人権団体のせいなのか

ミゼットプロレスが人権団体のクレームによって下火になったという話はよく聞きます。80年前後は実際にクレームがあり、メディア側に自主規制されていました。しかし、人権団体によって中止に追い込まれたという事実はなく、テレビに映らないながらも実際に試合は行われていました。要するに、半分はデマです。

この説はアメリカでの事例とごちゃ混ぜになっているものと思われます。アメリカでもミゼットプロレスが差別的として批判されていた時期があり、活動範囲を大幅に狭められていました。あちらは90年代にメキシコのレスラーを採用し、ルチャリブレを盛り込んで復活する訳ですが。

さて、ミゼットプロレスの人気が低迷した原因は他にも説があり、女子プロレスの台頭も一因ではないかといわれています。全日本女子プロレスの旗揚げ当時はミゼットプロレスと同時進行だった上、女子プロのほうが前座という扱いでした。ところが、女子プロからマッハ文朱氏が人気を博すると立場が逆転し始め、ミゼット側が前座となっていきます。酷いときには、女子プロ目当てで訪れたファンがミゼットレスラーの試合では席を外すケースもあったようです。

女子プロ自体はミゼットと助け合ってきたので、立場が変わってもミゼットレスラーを軽んじることはありませんでした。寧ろ、ミゼットレスラーの持つ高い技量に憧憬の念を抱いていたほどです。ミゼットレスラー達も「男子プロレスにない技を!」と、自分たちなりの魅力や大技を磨いてきました。ところが、低身長症の二次障害などで現役寿命の短いミゼットレスラーにとって、過酷な訓練やプロ意識は凶器でもありました。

体を壊していく選手たち

低身長症の二次障害ゆえか、ミゼットレスラーは格闘技をするにあたって覆しようのない「脆さ」を抱えていました。失明でリングを降りた選手や車椅子生活を余儀なくされた選手がおり、円満に引退できた選手は少なかったのです。90年代を過ぎると会社側も「リング上で死ぬのではないか」と危惧してミゼットプロレスを控えるようになりました。

後継者不足も問題となっています。医学の進歩によって低身長症への治療も可能となりましたが、皮肉にもそれがミゼットレスラーの志願者を無くしてしまったのです。2002年にリトル・フランキー氏が亡くなったため、ミゼットプロレスは滅びたとさえ言われました。2年後に現役選手が2名となり、辛くも存続の運びとなりましたが。

とはいえ、ミゼットレスラーの志願者が居なくなった一番の理由は、ミゼットプロレスの知名度そのものが低く「抑えられてきた」ことではないでしょうか。

秘匿された戦い

ミゼットプロレスがテレビで放送された回数はほんの少しで、1962年を最後に自主規制で意図的にカットされていました。観戦するには現地の興行へ赴くしか方法が無かったのです。テレビ中心の60年代~80年代にテレビ中継出来ない状況では知名度など上がりようがないです。

ミゼットレスラーの戦いが秘匿されたのは、笑わせる芸も交えたコメディ路線に対し「低身長症を笑いものにするのは可哀想だ!」というズレたクレームが入ったためです。人権団体の圧力というのはデマですが、「可哀想だ」というクレームによってテレビ放映を自粛したのは本当です。クレーム対応にばかりリソースを割くわけにもいきませんので。

選手の一人であるミスター・ポーン氏は、怪物番組「8時だョ!全員集合」に出演する運びとなった折にこれをミゼットプロレスにとって捲土重来の機会であると捉えていました。計算とリハーサルを重ねた末、無理のない最良のパフォーマンスで会場を沸かせ、成功したように思えました。しかし、「見世物のようでかわいそうだ!」というクレームが殺到したため、ミスター・ポーン氏の出演は数回で終わり、ミゼットプロレスの地位向上も叶いませんでした。

ミゼットプロレスに詳しく、レスラーとも実際に何度も会っている高部雨市氏はこれらのクレームを振り返り、「『可哀想』などと一見同情的な言葉は方便で、本音では低身長症の人々を見たくないと思っている。見せかけのヒューマニズムだ。」と述べています。女子プロ目的のファンには嫌われていたようですし、実際に「可哀想」と思っていてもゾーニングで不可視化するだけで済ますのはただの隔離志向です。

ネット社会によりミゼットプロレスの知名度は多少上がりましたが、遅きに失した感じがあります。先に低身長症の治療が整ったため、ミゼットレスラーの志願者が少ない状況は改善されないでしょう。アメリカのミゼットレスラーは殿堂入りを輩出するほどの市民権を得ているのですが、この差はどこでついたのでしょうか。

ただ二人の現役選手

現在もミゼットレスラーとして活動されている2名とは、ミスター・ブッタマン氏とプリティ太田氏です。2017年に「探偵ナイトスクープ」という番組で、低身長症の依頼者が両氏と共にミゼットプロレスを体験する一幕がありました。このままミゼットプロレスは遅咲きのスポーツとなるのでしょうか。

たった2人の現役選手とはいえ、年中試合をしている訳ではありません。太田氏に至っては舞台俳優として活動しているほうが多い状況です。競技の存続は依然風前の灯火といったところですが、そもそも低身長症でプロレスラーを志す人が今後現れるのかが絶望的なので、20年以内には無くなるのではないかと思います。全盛期にテレビを封じられたのが大きな痛手でした。

参考文献

ミゼットプロレス - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org

「誰が小人を殺したか?」小人プロレスから見るこの国のかたち|日刊サイゾー
https://www.cyzo.com

ミゼットプロレス伝説|A-rexの観戦ブログ「A-rex File」
https://ameblo.jp

【第21回】不世出の天才ミゼット・レスラー!小さな巨人!リトル・フランキー!|リアルホットスポーツ
http://realhotsports.com

【第20回】『8時だヨ!全員集合』の「爆笑王」ミスター・ポーン伝説|リアルホットスポーツ
http://realhotsports.com

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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