嘘をつくなと育てられた発達障害者の思わぬ弊害②

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◀過去の記事:嘘を吐くのは悪い事?正直者が苦労する本音と建て前①

前回は私がいかに正直で“やべぇ奴”として生きてきたかをお話しました。今回は本音と建て前の間で苦しみ、自分で折り合える点を見つけるためにどんな工夫をしたのかをお話したいと思います。

嘘も方便

私は就労支援施設に通うようになってから、社会で生きていく為には嘘が必要なことを教えてもらいました。例えば「明日一緒に〇〇に行かない?」と誘われたとします。私は興味が無いし正直行きたくない…でも予定は入っていないので行こうと思えば行けるのです。以前の私はこの場合、「嫌々行く」か「正直に断る」の二択しか持っていませんでした。なので、自分が苦痛な休日を過ごすか、相手に正直に「行きたくない」と伝え嫌な思いをさせるかでした。“やべぇ奴”ではあるものの、相手に嫌な思いはして欲しくないとか、相手を思いやる気持ちはちゃんと持っていました。なので、この場合はいつも相手に合わせることになります。いつもいつも相手に合わせるので当然しんどくなり、体調を崩す原因になっていました。嘘を吐くことは他人の為だけでなく自分の為にも必要なスキルなのだと実感しました。支援者の方には「予定があるので…」と言って断れば角も立たないし、一般的にはそういって断るんだよ、と教えて頂きましたが、ここで思わぬ弊害が発生したのです。実際には“予定が無い”のに“予定がある”と嘘を吐くことによって私は罪悪感に苛まれ、また体調を崩してしまったのです。

異常なほどの罪悪感

私は「嘘を吐くこと=悪」つまり人間として、してはならない事だと教えられて育ちました。そのせいもあってか“予定がある”程度の嘘や、可愛いと思わない物や人を“可愛い”ということ、美味しくない物を“美味しい”ということにすら罪悪感を感じてしまうようになっていたのです。つまり自分の本心や事実と反することを口にしたとき、私は“異常なほどの罪悪感”に苛まれ体調を崩す、という厄介な体質になっていました。ここまで話せばもうお分かりになっている方もいらっしゃると思いますが、これは就労を目指す上でかなりのハンディキャップとしてのしかかります。なぜならあらゆる“建て前”に対しての“正しい答え方”をいくら教えて貰っても私には使うことが出来ないからです。折角「断る」という新しい武器を手に入れても、使うことが出来なければ只の重りにしかなりません。私は使えない武器を沢山ぶら下げたまま立ち尽くしている状態でした。

本当に嘘は必要なのか

そこで、私は相手を傷つけず自分もギリギリ嘘じゃない返答の仕方を研究することにしました。例えば「美容院で変な髪形にされたー!ね、変だよね?」と聞かれた場合、今までなら変だと思った場合「ホントだ!すごい変!」と返していました。このままでは良くないのは分かりますが、この場合私は「変じゃないよ」と言うことが出来ません。私は考えあぐねた結果、「今までそういう髪形してるの見たことないから新鮮だと思う」とか、「そういう髪形好きな人もいるしなぁ」と返すようにしたのです。ちょっと苦しいかも知れませんが大分マシになったのではないでしょうか?また、「この服変かな?」と聞かれたとします。今までなら変だと思った場合迷わず「変だね」と答えていたのですが、私は「変じゃないよ」、と言うことが出来ないので、「うーん、好きな人は好きだと思うな」とか「個性的だね」や、「珍しい色だね」と返すようにしたのです。これらの場合は語尾に「どこの美容院に行ってるの」や「どこで買ったの?」と付け加えることで話題を逸らすことも出来ます。

また、行きたくないけど予定もない場合に関しては、瞬時に自分で新しい予定を作ることで解決できました。何も別に急に別な友達と約束をするとかではありません。例えば「ボーっとする予定がある」、とか「好きなだけ寝てダラダラ過ごす予定がある」とかです。どんな予定を組むかは自分の自由な訳ですから、いつでも自在に予定を作り相手に嫌な思いをさせずに断る事ができるようになりました。

まとめ

いかがでしたか?最初の“やべぇ奴”からはだいぶ良くなったのではないでしょうか?言葉を深読みした場合、まだまだ厳しい答え方かも知れませんが、これをきっかけに私が変わっていけた事は事実です。

次回は“やべぇ奴”が社会人としてやっていく為にした考え方の工夫や思考の切り替え方をご紹介します。それにより使える武器が増えていく様子もお伝えできればと思います。

▶次の記事:嘘をつくなと育てられた発達障害者の思わぬ弊害③

sakurako*

sakurako*

高校生の時に不登校になりパニック障害と診断される。その後、紆余曲折あり自閉スペクトラム症・解離性障害と診断を受け就労支援施設B型作業所に通う。
現在は就労移行支援施設に通いながら就職活動中。
趣味は読書と映画鑑賞、手芸。“世界をもっと優しく”がモットー。

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