就労移行支援事業所~就職を目指して通う安心・安全空間

暮らし

unsplash-logo Harry Quan

私は自閉症スペクトラムと不安障害と診断されています。高校生のときに不安障害、約2年前に自閉症スペクトラムだと発覚しました。現在も通院中の病院の医師から、病院内のカウンセラーの方に仕事に関する悩みの相談をする機会を設けていただきました。そしてそのカウンセラーの方から就業支援ワーカーと呼ばれる、障害者の就業のサポートをしてくださる方を紹介していただいたことによって、現在通所している就労移行支援事業所に出会うことができました。

通所するようになったきっかけ

高校卒業後、就職はしませんでした。通っていた高校で就職説明会が何度か開かれてはいたのですが、正社員として就職する気はなかったので参加したことはありませんでした。“正社員になってしまうと絶対辞められない”という考え、つまり職場に合わなければ辞めたいという、仕事を辞めることを前提とした考えがあったからです。

高校卒業後、5年間のうちにいくつかの仕事を転々としました。すべてアルバイトかパートでフルタイムでした。一番長く勤めたところで2年、短いところで1週間と、どこも長続きはしませんでした。やはり、仕事に対する困りごとや悩みがあったからです。

そこで先程お話しした就業支援ワーカーの方に就業の相談をしたところ、就労移行支援事業所に通所することを勧められました。私は家から通いやすいところがいい、と相談すると、「通いやすいところに1か所だけあります」とパンフレットを見せていただきました。そこに載っていたのが、現在通所している事業所だったのです。

穏やかで自然な笑顔

事業所のパンフレットを見せていただいてから通所するかどうかしばらく悩みましたが、一度見学だけでもしてみたいと思い、見学させていただくことになりました。見学日当日、少し緊張ぎみの私が事業所の扉を開けると、穏やかで自然な笑顔の支援員の方々が「こんにちは」と迎えてくださりました。利用者の方々も、挨拶をしてくださったり、頭を下げてくださったりしました。そこでとても素敵なところだなと思いました。窓がたくさんあり、日がさして明るく、ここでどんなことができるのか早くお話を聞きたいという気持ちになりました。

ここでどんなことができるのか、今どんなことに悩んでいるのかなど、施設長が丁寧にゆっくりと話をしてくださり、私の話もたくさん聞いてくださりました。この段階でもう、他の事業所には見学に行かず、ここに通所しようと決めていました。

通所したいと思った理由

施設長、支援員の方々、利用者の方々の印象と事業所の雰囲気が良かったことがまず第一ですが、その他に通所したいと思った理由を3つ挙げたいと思います。

1つ目に、より良い人間関係を築くための心理学を学べることです。心理学に興味があったことと、人間関係に悩むことが多かったので私に合っているのではないかと思いました。この事業所では選択理論心理学という、アメリカの精神科医ウイリアム・グラッサーが提唱した心理学を学ぶことができます。基本として“人は変えられないが、自分は変えられる”という独自の理論です。

2つ目に、 資格取得サポートがあることです。他の事業所にはない約30資格以上の事業所内受験、試験免除制度が導入されているということで、魅力を感じました。

3つ目に、就労継続・定着支援があることです。これは、就職後も3年間は定期的な面談などで長期就労をサポートしてくださるというもので、事業所に通所できる期間(2年)よりも長いので、安心感があるなと思いました。就職したらそれで終わり、というものではないのでとても嬉しいです。

事業所での過ごし方

事業所では、午前2コマ、午後2コマの計4コマあり、1コマは50分です。土曜日も開所しています。時間の区切りはありますが、開所時間内であれば何時に通所しても構わないそうです。支援員の方によると、「その日を100点満点で点数をつけるとすると、通所できたことが50点ですよ」ということだそうです。そう言ってもらえるとどこか達成感が生まれる気がします。

通所すると、朝と帰る前に利用者日報を書きます。事業所では先程お話しした選択理論心理学の基本理解をすることを勧められています。その選択理論心理学では「自分の人生をより上質にしてくれると思う人・物・状況・信条など」をまるで写真のように描き、記憶している脳の一部を“上質世界”(願望)と呼びます。この願望を利用者日報に毎日書きます。私の場合、1つ例を挙げると「毎日1コマ目から通所する」書いています。他にもいくつか書いています。それらを書くと毎日自分と向き合うことができるので、とてもいい習慣だと思います。

1コマ目の前に掃除・朝礼・ラジオ体操があります。これは参加してもしなくても構わないそうですが、私は毎日参加するように努めています。朝礼の際には、アファメーション(肯定などを意味する)である「私は私を幸せにする責任があります」という文章を3回言います。毎朝、「ああ、そうなのか・・・」とこの言葉をかみしめています。終礼は4コマ目終了後にあります。

週の初めは、いつ通所するか、通所したら何をするかなど、週間目標設定をたてます。目標をたてたら、今週はどういう過ごし方をするのか、先週はどうだったか、改善点やなどについて支援員の方と話をします。そこでアドバイスをいただけます。

他の曜日は1コマ、または2コマを使ってのグループワーク(ビジネスマナー講座など)やパソコン講座などがあります。折り紙やストレッチなどもあります。教えてくださる支援員の方々が明るいこともあり、雰囲気がとてもいいです。これらは事業所のカレンダーに書かれていますが、絶対参加ではありません。それ以外の時間は週間目標設定で各々が予定をたてたことをします。パソコンの訓練をする方や資格の勉強をする方、面接練習をする方など様々です。

私が今していること

私は今、事業所のカレンダーに書かれていることに参加する以外の時間は、タッチタイピングを速くする練習をしながら、同時に集中力をつける訓練をしたり、読書をしたりしています。

直近では、支援員の方々に手伝っていただきながら、仮の自分の取扱説明書の作成をしました。通所し始めて3ヶ月経っていないのでまだ早い段階ですが、就職する際などに必要になってくるもので、作成していて損はないとのことでした。

まず自分の苦手なことを書き出し、それを見ながら「自分で対処していること」と「周囲に理解・配慮してほしいこと」を考えました。「セールスポイント」も考えないといけなかったのですが難しいと相談すると、マイナスなことが書かれた裏側にプラスなことが書かれていて、マイナスをプラスに言い換えるかるたのようなものを貸していただき、一緒になって考えていただきました。苦手なことを1つ例を挙げると、“要領が悪く、段取りを考えるのに時間がかかる“なのですが、これをプラスに言い換えるのは難しく、まずこれの「自分で対処していること」が”絵に描いたり文字にしたりしてみる“だったので、「セールスポイント」は”工夫ができる“になりました。かるたのようなものを参考にして、複数の苦手なことをまとめていき、仮の取扱説明書を完成させることができました。そしてそれが完成したとき、心の中のもやもやとしたものが晴れて、すっきりした気分になれました。もやもやしたときは文字にするといいんだなと改めて思いました。

終わりに

私が通所している事業所は、安心・安全空間だということです。この言葉からすごくいい環境だということも伝わりましたし、実感もしています。支援員の方々がいらっしゃってこその安心・安全空間だということも日々思っています。とても親身になって相談に乗ってくださって、本当にお世話になっています。ここから巣立つときには立派に成長していたいと思います。そこを目指して毎日の貴重な時間を大事に過ごしていきたいと思います。

参考文献

【William Glasser - Wikipedia】
https://en.wikipedia.org/wiki/Main_Page

【ラジオ!「幸せを育む素敵な人間関係」】
著 宇都宮民 出版 愛媛選択理論研究会

ひよっこ

ひよっこ

大阪生まれ、大阪育ち。自閉症スペクトラムと不安障害を持っています。
好きな食べ物は天ざるうどんで、特にかぼちゃの天ぷらが好きです。
昼寝をするのが幸せな時間です。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

最近見た施設

閲覧履歴がありません。

TOP

しばらくお待ちください