自閉スペクトラム症とバーチャル空間上でのコミュニケーションについて

発達障害

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私はASD(自閉スペクトラム症)と診断されています。私と同じようにASDの方でコミュニケーションが苦手だと感じている人も多いのではないでしょうか。そこで本記事では私の行っている、コミュニケーションでの対処法について紹介したいと思います。

ASDの主な特徴

はじめに、ASDの主な特徴として次の3つが挙げられます。

1. 社会性・対人関係の難しさ 周りの人と関わるとき、適切な振る舞いができなかったり、自分のこだわりの強さから、相手とうまく関係性を築けなかったりします。また、その場の空気や暗黙の了解といったものを理解するのが苦手なところがあります。

2. コミュニケーションの難しさ 間接的・婉曲的な表現を読みとることが苦手で、相手の言っていることがよく分からなかったりします。また、思っていることの言語化ができず、自分が言いたいことを明確に伝えることが難しかったりします。逆に、細かく説明しすぎてしまい、相手が逆に分からなくなってしまうこともあります。

3. パターン化した興味や活動(想像力の乏しさ) 決まった手順やスケジュール通りということにこだわり、予定外の状況への臨機応変な対応が苦手なところがあります。

私自身の困りごとについて

私は人と話すとき、どもってしまったり、思っていることを言語化するのにも時間がかかってしまったりします。会話の流れを途切れさせずに話そうとすると、頭の中ではまだ上手くまとまっていないため、相手に内容が伝わりづらくなってしまうことがあります。後からこういう言い回しをすれば良かったなと後悔することもあります。また、雑談をするということが苦手でもあります。なぜその話をしなければいけないのかという意味付けをとにかく求めてしまいます。雑談をしていきながら仲良くなるというのはとても苦手です。

対処法について

こうした特徴によって起きるトラブルや悩みごとへの対処法には大きく2つの考え方があります。

1. 自分自身の特徴を理解し、その対処法を身につける

2. 周りの人に協力をお願いして、お互いに負担の無い環境を整える

この2つの対処法が合わさると大きく負担を軽減できる可能性があります。

バーチャル空間上でのコミュニケーション

私が自分自身の特徴を理解し、その対処法を身につけるために行っていることについて紹介したいと思います。 自身の困りごとに対する対処法として、コミュニケーションに慣れていくというものがあります。その場所というのが、バーチャル空間上で他者とのコミュニケーションを楽しむ「VRChat」というゲームです。VRヘッドマウントディスプレイをかぶりながら遊ぶ方法と、パソコンのモニターにゲーム画面を表示して遊ぶ方法があります。このゲームにはテキストチャット機能は無く、ボイスチャットを使って他者とのコミュニケーションを行ないます。

しかし、ボイスチャットしかないからと言って必ずしも会話をする必要はなく、無言勢と呼ばれるボイスチャットを使わず、アバターの表情やボディランゲージを使って表現する人たちもいます。言葉による込み入った話し合いはできませんが、その分、気負うことなく気軽にコミュニケーションを楽しめると言う利点があり、多くの人に親しまれています。そういった無理に話さなくても良いという環境があるので、私は人と会話することに疲れた時などに喋らなくても、喋らないことに対する引け目を感じずに済んでいます。

また、自分の発した声を音声認識させ、その文章を読み上げソフトで読み上げさせる、という方法があります。例えば「ゆかりねっと」というソフトウェアがあります。この仕組みのため、実際に発話されるまでに遅延が生じます。そのため、このシステムを用いた会話は普通よりもゆっくりです。思っていることを言語化するのに時間がかかってしまう自分にとって、負担を感じずに済むのに役立っています。

アバターになってコミュニケーションするということ

アバターになって話す、コミュニケーションすることの良さには、日常よりも楽にコミュニケーションをスタートできることだと思います。アバターに自分をゆだねることで本来の自分をだせるので、変に自分を作ったりする必要がないわけです。また、ASDは人の表情を読み取ったりボディランゲージを使ったりすることが苦手ということがあります。そういったことにバーチャル空間上で練習して慣れることも出来るのではないかと思います。

最後に

これまではVRゲームが動作するハイスペックなPCとVR機器を購入するという障壁がありました。しかし、いまではVR機器だけで遊べるものも出てきているため、その障壁も下がりつつあります。また、VRChatのデスクトップモードの場合だとそこまでハイスペックなPCを用意する必要もありません。一度試してみてはいかがでしょうか。

参考文献

自閉症スペクトラム障害 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki

VRChat
https://www.vrchat.com

ゆかりねっと.exe
http://www.okayulu.moe

おじさんを美少女化したテクノロジー 先端心理学が語る「VRの世界」 - withnews(ウィズニュース)
https://withnews.jp

マヌタフ

マヌタフ

大学4年のとき、自閉スペクトラム症の診断をされる。卒業後クローズで就職するが、コミュニケーション面でのトラブルから退職する。その後、就労移行支援事業所に通いながら、あらためて精神科を受診し手帳の取得を行なった。現在はオープン就労を目指して活動している。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

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