知的障害に付け込まれ冤罪で服役した元看護助手の話

暮らし 知的障害 発達障害


unsplash-logo
Pietro Tebaldi

17年前の医療ミス事故で元看護助手の女性が逮捕され、業務上過失致死で実刑判決を受けました。しかし、その看護助手は裁判の間一貫して無罪を主張していたのです。出所後の再審では弁護士の尽力により、看護助手が冤罪だったとして逆転無罪を勝ち取りました。

17年間にわたる長い法廷闘争を経て無実を証明した元看護助手ですが、そもそも何故このような事態に陥ったのでしょうか。実は、彼女には軽度の知的障害と発達障害があり、取り調べ中にそこを利用されていたのです。

冤罪で医療ミスの首謀者扱い

2003年、滋賀県の湖東記念病院に入院していた患者が死亡する事件がありました。患者には人工呼吸器が付けられていたのですが、遺体発見時にはチューブが外されており、県警はチューブが外れた際のアラームを当直の看護師が無視していたと推理します。

やがて県警は、当直だった元看護助手の女性(当時23歳)を容疑者としてマークし、何度も任意で呼び出します。元看護助手は「アラームなど鳴っていなかった」と供述していましたが、しつこい取り調べに屈して「鳴っていました」と嘘の自供をし、業務上過失致死で逮捕・起訴されてしまいました。

裁判では「アラームは鳴っていない」と一貫して無実を訴えたものの、2007年に懲役12年の実刑判決を受けることとなります。2018年(※)に刑期満了するまで元看護助手は服役し続けました。

判決に納得のいかない両親は再審を求め、後に再審で弁護団長を務める井戸謙一弁護士へ依頼しました。井戸弁護士が元看護助手の両親と会ったのは2012年ですが、再審が始まったのは元看護助手が出所した直後でした。

※:懲役などで実際に服役する期間は、判決から未決勾留期間(判決まで拘置所に入れられていた期間)を差し引いています。

障害に付け込み供述を操作

再審請求にあたって井戸弁護士は事件を調べなおしました。すると、元看護助手に軽度の知的障害と発達障害があり他人に流されやすい性質もあったことが判明します。元看護助手も「意に沿う供述をすれば優しくなる刑事に好意が芽生えた」と述べていました。

取り調べの刑事はそういった面に付け込んで思い通りの供述をさせ、最後には「自らチューブを抜いた」という自白までさせていたのです。強要や脅迫がなかったにせよ、相手の性質や好意を悪用して供述を操作するのは、冤罪の汚名を進んで被りにいくようなものでしょう。

もう一つ、井戸弁護士は有力な証拠を発見しました。それは検死した医師による報告書で、「患者の死因は痰詰まり(≒自然死)だった可能性がある」と記されていたのです。事故死を主張する大きな証拠なので、適切に出されていれば不起訴すらあり得ました。当時の県警はこれを地検に出さず揉み消したため、元看護助手は冤罪で起訴されたのです。

証拠を揃えた井戸弁護士は再審請求をし、2018年12月に通りました。そして2020年3月、再審では冤罪を全面的に認め、元看護助手に無罪判決が言い渡されます。刑期満了後にようやく無実が証明されました。

供述弱者を冤罪から守ろう

再審の裁判長は判決言い渡しの場で問題提起も行いました。「すべての関係者はこの事件を自分のことと捉え、司法の改善へと繋げていかねばならない。」「嘘の自白をさせられた被告に責任はない。咎めるべきは捜査手続きのあり方である。」

相手の障害に付け込む卑劣な取り調べは、裁判長からも苦言を呈されました。この再審を振り返って井戸弁護士は、「判決で最も大きかったのは、元看護助手の自白を『信憑性がない』として証拠にしなかったことです。同じ過ちを繰り返さないよう、障害などで『供述弱者』となっている人には弁護士を付けるなどの改革が進むのではないかと思います。」と述べました。

社会から17年も隔絶された元看護助手は現在40歳となりました。再就職先のリサイクル工場で働く傍ら、冤罪被害者への支援活動にも参加して人生を再開させています。

参考サイト

再審無罪を勝ち取った西山美香さん家族「17年間の闘い」|女性自身
https://jisin.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

知的障害 発達障害

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

最近見た施設

閲覧履歴がありません。

TOP

しばらくお待ちください