「わが指のオーケストラ」と「どんぐりの家」~障害を題材にした漫画をご存知ですか?

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障害者を題材にした作品を数多く描かれている「山本おさむ」という漫画家について紹介させて頂きます。

山本おさむとは

1980年にデビューした山本おさむはろう学校の生徒たちが硬式野球部を設立する「遥かなる甲子園」を描いて以降、障害者を題材にした漫画を描くようになり、自らも手話を習うなど積極的な活動を行いました。近年では、東日本大震災前後の福島県天栄村での暮らしを描いた「今日もいい天気」、ローマの休日など名作映画の製作背景を描いた「赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD」を連載中です。

今回は「わが指のオーケストラ」と「どんぐりの家」

わが指のオーケストラ

この作品は、日本の手話教育継続に苦心した「高橋潔」を主人公とした実際の出来事と人物を基に潔の養子、川渕依子が書いた「指骨」を原作とした漫画です。時代は大正。義務教育もあまり定まっておらず、まして障害者に対する風当たりは今以上に辛く恐ろしいものであり、世間の障害者へのそうした態度は当然のことだと思われていた時代。高橋潔は学校にいた聴覚障害者、聾唖(ろうあ)と呼ばれた生徒たちに平等に接し、手話を通じて心を閉ざした彼らと徐々に通じていきます。

しかし、そんなある日、当時アメリカで主流となっていた口話法が日本にも伝わったことで、日本の教育現場は「手話」を禁止し、口話法をつかい聴覚障害者を「普通に話せる人間」にしていこうという考え方が広まりました。この方法では「交互法」にそんな危機的状況の中でも高橋潔は決して折れず、少ない協力者に支えられて、文部大臣など高い役職の方たちに真っ直ぐ立ち向かい、誰もが適正な教育を受けられるよう手話の必要性と障害者の尊厳を訴える演説を行いました。

高橋潔は一人一人に合った教育をすべきだと訴え、最終的には日本の手話教育は継続されることになりました。この漫画は聴覚障害者を主眼に置きつつ、日本を含む昔の世界の障害者に対する見方がいかに残酷で全く理解しようとしない現状が切に描かれています。

なお残念ながら、原作となった「指骨」は現在絶版しています。しかし、2010年に「高橋潔と大阪市立聾唖学校―手話を守り抜いた教育者たち」(著 川渕依子)がサンライズ出版から出版されているので、こちらの本もおすすめです。

どんぐりの家

どんぐりの家は1970年代から平成初期を舞台にしています。聴覚障害者に限らず、知的、精神など多くの障害者とその家族を取り巻く環境を様々な視点から描いた全7巻の漫画です。どんぐりの家の出来事にはモデルとなった方たちがおり、著者の山本おさむはその方たちのことを丹念に取材して描かれたようです。

時代は昭和の高度成長期。物質的には豊かになりましたが、障害者に対する偏見、差別、制度の不十分さは大きく変わってはいませんでした。内容を短く表せば、描写が生々しい上に重々しく、内容的にも派手に何かをやって見事に解決して終わり、というのはありません。自分をうまく表現できない障害児と、それに対する家族や周囲の嘆きと苛立ちの描写は辛く、読むには少々体力がいります。

聴覚と知的障害を併せ持つ重複障害児の男の子を始め、様々な障害者が登場して多くの問題と直面します。たとえ一人の問題が一つ解決したとしても、それで終わりではありません。周囲へ理解してもらい、障害を抱えた人と周囲が社会が継続して上手く付き合っていけるか、といった現実的な問題まで描かれています。

まとめ

「わが指」は大正、「どんぐり」は昭和と平成。時代の合間で障害者と周囲の環境の変遷を知ることができます。「現代だとそうでもないだろう」と思うかもしれませんが、最近でも、警察官が聴覚障害者に対して「イヤホンと誤解するから外せ」と言い放った事件がありました。これに対して「単に聞こえにくいだけだろ」「障害者だから特別扱いしてもらおうと甘えているだけだ」といった心ない賛同意見も少なからずありました。

今回は、山本おさむが描いた「わが指のオーケストラ」と「どんぐりの家」の2作を中心に紹介させてもらいました。暗く重たい題材であっても、山本おさむの力強くも人間に対する優しさを感じさせる温かいタッチのおかげで、最後まで作品を読むことができると個人的に感じます。

今は2作の漫画が描かれた頃よりかはましだと思いますが、障害者求人の平均賃金の低さを見ても、まだまだ障害者に対する壁は大きいなと感じます。

もし、このコラムで興味を持ち、読んでいただいて、かつて障害者が直面していた事態について、そして障害者との向き合い方について考え下されば幸いです。

参考文献

【wikipedia 山本おさむ】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8

【漫画「わが指のオーケストラ、是非読んでください 日刊イオ】
https://blog.goo.ne.jp/gekkan-io

「高橋潔と大阪市立聾唖学校―手話を守り抜いた教育者たち」
著 川渕依子 サンライズ出版 初版2010/03

「わが指のオーケストラ」
漫画 山本おさむ 秋田書店

「どんぐりの家」
漫画 山本おさむ 小学館

トンボダモン

トンボダモン

年齢はまだ若い。新たな就職の場を求めて模索中。
好きなことは読書に映画、散歩、ゲーム。最近はポケモンにはまっている。
簿記2級を目指して地味に勉強中。

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