セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜

「「働けない」ことがこんなにも悔しく、「働く」ことがこんなにも楽しい」(セコラム第35回)

仕事

Photo by Nandhu Kumar on Unsplash

『セコラム!〜伴走者の立場から障害福祉を考えてみる〜』 vol.35

「悔しいんです」。あるメンバーが泣きながら放った言葉です。障害や病気を療育・治療する目的で三休を一旦離れないといけないかもしれないと電話相談があり、おはなしを聞いていたら彼の思いがどんどんと溢れていきました。

「マルチを張り、苗を植え、水やりをし、さあもうすぐ収穫だ!というときに一緒に働けないなんて・・・悔しいです。一緒に収穫の喜びを分かち合いたかったです」と。彼の悔しい気持ちに触れ、僕も悲しい気持ちになりました。と同時に、彼のまっすぐな気持ちに応えたいと思いました。

その翌日、彼と直接話し合いをすることにしました。様々な話に及びましたが「自分は何がしたいのか?」「どうなっていきたいのか?」を深めるよう意識しました。彼の思いはゆるぎなく強いものでした。「僕は三休で働き、万願寺とうがらしを一緒に収穫していきたい」と。

その思いを確認した後は「どうしたら三休で働くことができるのか?」「どういうことを気を付けたらいいのか」を考えるようにしました。こちらからの一方的な指示ではなく、問いを投げかけ、答えを導きだせるような対話を意識しました。

まず思いを確認する。そして、その思いを達成する手段を考えること。僕たちは「こうするべき」という答えを押し付けるのではなく、彼らの思いを理解し尊重する必要があります。そのとき「すべて」を受け入れていくのではなく「チーム全体」から俯瞰したときに最大公約数的な心地よさがあるかどうかの絶妙な塩梅での「受け入れる・受け入れられない」の線引きをしなければいけません。じゃないと僕たちの使命である「その人らしく働くように支援する」を果たせず、働くという自覚を失ってしまうかもしれません。

働くこと。それは大変なこともあるけれども嬉しいことでもあります。ありがとうと感謝されること。野菜がうまく育つこと。つくった野菜が売れたこと。1日の標を達成できたこと。1か月分の給料を頂いたこと。働くことを通してじゃないと得られない達成感があると思います。「働けない」ことがこんなにも悔しくなり、「働く」ことがこんなにも楽しいことなんだと思える場所をこれからもつくっていきます。

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

世古口 敦嗣(せこぐち あつし)

就職活動に失敗し、何となく障害福祉の世界へ。障害者が暮らしやすいまちをつくるNPO法人サポネや医療福祉エンターテインメントのNPO法人Ubdobeなどを経て、農業を中心とした障害のある人が働く拠点「三休 – Thank You -」を今年4月にオープン。それ以外にNPO法人月と風と理事やKAIGOLEADERS OSAKAコアメン、ふくしあそび探求舎代表を務める。

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