「チー牛(チーズ牛丼顔)」と就労移行支援のいびつな関係

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出典:Photo by Ugo ° on Unsplash

「チー牛」とは、早い話が新しく生まれた「レッテル貼り」「煽り」の類で、議論(レスバトル)を放棄して勝った気分になれると一部では人気のネットスラングです。

「チー牛」そのものはすき家で販売されている「とろ~り3種のチーズ牛丼」を指しているとされますが、本質はそのメニューでなく「チー牛顔」とされる男性のイラストです。「オタクっぽい冴えない印象」を与えるイラストは、はじめは自虐で用いる人が多かったものの次第に煽りで使う人のほうが多くなっていきました。

「チー牛」について多少なりとも知っており、なおかつ嫌悪感を抱いているのであれば、本題である「チー牛」と「就労移行支援」の関係(加えてバーナム効果も)についてすぐに飲み込めるでしょう。

「そんな言葉知らなかった」「聞いたこともない言葉だ」という声も多いので、言うほど広まっていないかも知れませんが。

J-CASTとアサ芸ビズの「チー牛」解説

20年6月中旬、J-CASTニュースが「チー牛」を大々的に取り上げました。J-CASTニュースによれば以下の時系列で「チー牛」のネットスラングが育っていったとされています。

18年7月 5ちゃんねるの「なんでも実況(ジュピター)」にて、他所から転載したイラストを添付の上で「ザ・陰キャ(日陰者)って顔」「子どものよう」「覇気がない」などと書き込み。
19年4月  イラストで言及されていた牛丼がすき家の「とろ~り3種のチーズ牛丼」とされ、まとめサイトで「陰キャの牛丼」と評される。
19年6月 イラストの改変やコラージュ(平安貴族化、肥満化など)が行われだす。
19年12月 コミックマーケットで吹き出しを付けただけの「コスプレ」が登場。
20年4月 知名度が上がっていきネットスラング化。

また、すき家への取材も行っており、「広報部では認知しています。ところで、『チーズ牛カルビ丼』が新発売なのでご賞味ください」という単純な感想でした。

このニュースに「不備がある」と異議を唱えたのがアサ芸ビズです。アサ芸ビズは同月下旬に記事を出し、「日陰者を弄るという可愛いレベルではない」として独自の取材をまとめました。

アサ芸ビズが取材したライターによれば、「最初(18年)の書き込みには『就労移行支援で面白かったのは利用者の若い男が皆同じ顔をしてた事』と一行目から記されていました。書き込み日時まで把握するほど調べているからには就労移行支援のくだりも知っている筈ですが、どうも大手ニュースサイトは意図的に情報を抜いていたようです。」とのことでした。

実際にJ-CASTニュースでは就労移行支援のくだりが削除されています。私見ですが、正直に「就労移行支援の利用者を揶揄する」と書いてしまうと「障害者差別が絡んでややこしくなる」と思われたのではないでしょうか。記事の着地点を見失うよりも、厄介な事実は抜いて「冴えない男子を揶揄するミーム」だけに留めることを選んだのではないかと思われます。

最初は就労移行支援の感想だった

アサ芸ビズの言う通り、「チー牛」の発端となった書き込みは就労移行支援の感想でした。就労移行支援の利用者について「ザ・陰キャって顔」「子どものような髪型」「覇気のない顔」「大人なのに中学生みたいで気持ち悪い」「10人いたら8人はそんな顔」と列挙し、とどめに他所から転載したイラストを添付したのです。

書き込み主もまた就労移行支援を利用しており、自分を棚に上げつつ「利用者の顔はみんなこれだった。発達障害は見た目や顔では分からないというが、あれは嘘っぱちだ。」と持論を展開しています。以後は「発達障害の顔」としても扱われるようになりました。

J-CASTニュースの取材に対してすき家が単純なコメントに留めたのも、こうした裏事情まで知っていたからではないでしょうか。下手に感想を述べると「障害者差別だ!」と叩かれるのは目に見えているため、新商品に話題を逸らすしかなかったのだと思います。

イラストは元々作者の自画像

「チー牛」「ザ・陰キャって顔」の象徴として転載されたイラストですが、これは元々2008年に作者が描いた自画像なのだそうです。作者自身がTwitterアカウントにて説明しており、「気持ち悪いというのは分かる」と一定の理解を示していました。それにしても、最初の書き込み主は10年間もイラストを保持し続け、出す機会を窺っていたのでしょうか。

最初は理解を示していたイラスト作者ですが、今年6月13日に「あの絵のことは飽きろよ」とかなりぼかしたツイートをしています。昨今の広まりに辟易しての苦言と思われますが、後で何とでも言い直せるほど抽象的な発言に留めているようでした。

チー牛イラストのコラージュには作者自身が作ったものもありました。それは「チー牛が首を吊っている」という内容で、ピクシブ百科事典の編集者は「カエルのペペ(注)」における「ペペの葬式回」に重ねているのではないかと述べています。

いずれにせよ、作者自身の真意が明かされたわけではないですし、今後も明かされることは無いと思います。

(注)海外のウェブ漫画「ボーイズ・クラブ」に登場するカエルのキャラクターで、作品と無関係に人種差別ミームとして使われ出したという「チー牛」と似た経歴があります。ヘイトの象徴として登録までされてしまい、漫画作者のマット・フュリー氏は「魂だけでも取り戻す」としてペペの葬式回を発表しました。

チー牛煽りと血液型性格診断は同質

「チー牛」が武器として強力になった背景に、イラストの顔が「ある意味ありふれた顔」であることも挙げられます。案外多くの人に当てはまる顔つきで、「チー牛を煽る奴もチー牛」と悟った風な口をきいたり「自分こそ完璧なチー牛顔!」という自撮りを何人も上げたり「犯罪者は皆チー牛だった!」と過去の犯罪者を挙げつつ語ったりしています。

「チー牛」の顔つきは誰もが部分的に当てはまるため、「我こそは」と名乗り出たり「こいつは」と認定したりするのは容易です。こうした「誰もが部分的に当てはまること」が自分あるいは特定個人の個性だと勘違いする現象を「バーナム効果」といいます。

バーナム効果が最もよく使われているのが「血液型性格診断」で、これに基づいた悪口や嫌がらせは「ブラッドタイプ・ハラスメント(ブラハラ)」と呼ばれるほど問題視されています。「チー牛」で煽る者は「血液型性格診断」で人を分かった気になっているのと同じレベルと言っても差し支えないでしょう。

寧ろ、面倒になれば「チー牛が何か言ってら」で会話を拒否できるぶん話の通じにくさは「血液型性格診断」を凌駕するかもしれません。リアル対面で同じように煽りや審議拒否が出来るかというと、さすがに無理とは思うのですが。

参考サイト

あの「チー牛」について、すき家に聞いてみた ネットでなぜか流行語化:J-CASTニュース
https://www.j-cast.com

一般社会では使用厳禁!?ネットスラング「チー牛」流布の意外な弊害とは?|AsageiBiz
https://asagei.biz

チーズ牛丼(チーズぎゅうどん)とは【ピクシブ百科事典】
https://dic.pixiv.net

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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