マウンティング・叩き癖は治るのか?既存の依存症治療から考察する

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野生の世界で相手の背に乗り自分が上だと誇示する「マウンティング」は、人間社会では言葉という形でネットとリアルを問わずに蔓延しています。特にネットでは不特定多数に対するマウント宣言が多く目につきます。

常に何かを見下しているような者は、マウント行為そのものに“依存”しているといっても過言ではありません。依存症治療という観点から、マウンティングの癖が改善されるかどうかについて考察してみます。

依存症には2タイプある

厚生労働省のホームページでは「医学的には『ある特定物質の使用』をほどほどに抑えられない状態と呼ぶ」に加え「行為や過程に対して同様の状態になること」と定義しています。加えて「本人以外の誰かが巻き込まれて苦痛を感じる」こともしばしば問題となります。

依存症には「物質への依存」と「プロセスへの依存」があり、前者はアルコールや薬物、後者はギャンブルへの依存が該当します。今取り上げているマウンティングはどちらかといえば「プロセスへの依存」となりますね。

依存症になると脳の報酬回路がそれ専用に組み変わってしまい、対象以外ではまともに満足できず量がエスカレートしていきます。もはや本人の意志だけでどうにかなるものではありません。これはアルコールや薬物だけでなく、マウンティングや叩き活動にも当然言えることです。

いつまでも同じ叩きや逆張りや陰謀論ばかり言っている人は「マウント依存症」「叩き依存症」かもしれません。しかも一定の賛同者(これも承認欲求を満たし快楽物質を促す)がつくことで依存症がエスカレートするケースもあります。

治療法は?

一度依存症になったら、依存の対象に触れないよう生活するのが大前提となります。例えばアルコール依存の場合は、飲料だけでなく酒気を含むあらゆる食品からも隔離せねばならず、まともな飲酒は一生できません。少しでも酒気が入れば、そこからは直滑降です。対象の回避や他の趣味作りなど「止め続ける」ための工夫を続けることとなります。

これをマウンティングに当てはめると、まずSNS断ちのうえ、ネット掲示板の類は全て断たねばなりません。ネット回線が使えるままでは叩き行為をやめられないので、ネット環境自体を制限します。また、目の前で会話している人へマウンティングをかける者もいますので、一定の回復が見込めるまでは支援員以外とのコミュニケーションも制限されることでしょう。SSTなどを積んで、いずれ社会復帰を目指します。

とはいえ荒唐無稽な妄想に過ぎません。なにしろマウンティングは依存症として認められていないのです。治療体制も無ければ相談先も自助グループもありません。そもそも自助グループなど作れるのでしょうか。

正式に依存症として認められていない以上「指殺人(ネットに書き込む指で自殺に追い込むこと)」をしてしまう前に各々が気付いて自律するよう祈るしかないのが現状です。

正義中毒と憎悪市場

コロナ禍のピリピリした状況から一気に脚光を浴びた「正義中毒」が、ここでいうマウンティングや叩きへの依存に最も近い状態であると言えます。「それは正義なのか?」と思うことも、叩く本人にとっては正義です。また、正義中毒と妙な調和をとっているのが、大衆の憎悪や憤怒や対立を煽る「憎悪市場」です。

憎悪市場とは「問題提起」と「対立煽り」の取り違いとは全く異なります。単純に「憎悪を煽る」「叩きに向かわせる」だけのために、あるいは単なる愉快犯として、時には偽装工作やマッチポンプまでも用いて炎上を"装う"ことさえあるのです。

例えば、動画配信者の生放送中にアプリが落ちてホーム画面が出てしまった件が挙げられます。うっかりホーム画面がポロリしたことに驚くコメントを、あたかも「ホーム画面に入れていた生理管理ソフトを嫌がっている」かのように誘導する対立煽りがありました。自演で書き込んでまとめサイトに取り上げさせれば、あとはネットの過激派同士で勝手に争ってくれるという目論見です。なお、同様の流れは数年前にもあったようです。

他にも「ウマ娘」「鬼滅の刃(遊郭編)」「サザエさんのGW回」「お母さん食堂」がエア炎上の被害に遭っており、特に「お母さん食堂」は元々ネタツイートだったのがあまりに「本物」だったため本当に炎上して署名騒ぎにまで発展しています。(そういえば最近「指殺人」をテーマにした刑事ドラマに俳優の香取慎吾さんが主演されていましたね。)

正義感や感情を暴走させやすい過激派は、憎悪市場にとって最高の顧客です。餌を撒くだけで勝手に怒り出し争うことで「消費」してくれる、明らかな「需要」です。そして、快楽物質が脳内で分泌され、叩き行為への依存がより深化していき「怒るためにネットを巡回する」という状態へ陥ります。

マウント依存の実例

最後に、マウント行為あるいは叩き行為に依存していた人の貴重な実例を紹介します。とはいえニュースで取り上げられたレベルには及ばず、匿名の体験談に過ぎませんが、貴重なケースであることは間違いない筈です。

T子さんはSNSを通じてフェミニズムを学んだと自称していましたが、その実は男性批判に乗っかるだけの叩き依存症でした。ある休日、T子さんは寝転んでいる兄を痛罵し、止めに入った兄嫁も同様に罵り始めます。すると、兄嫁は泣きながら「あなたはおかしい!」と諭し始めました。兄嫁が言うには「常に怒った顔でスマホを眺め、たまに下品な笑いを浮かべている」様子が長く続いていたようで、まさに「攻撃対象を探すためだけにネットを巡回している」という有様でした。これを受けてT子さんはSNS断ちを決意します。

しかし、T子さんは更新こそしないもののアカウントを閉鎖せず残したままにしています。依存症は身内に一度叱られた程度で改善するほど甘いものではなく、別のアカウントや手段で怒りを発散しているのかもしれません。

マウンティングや叩き行為しか趣味がなく、全方位をバッシングする雑誌を愛読するような寂しい将来は避けたいものです。そのためには「正義中毒」を提唱した中野信子さんによれば「なぜ許せないのかを客観的に考える」「新たな刺激を得て脳の老化を防ぐ」「安易なレッテル貼りをせず自分で考える」などが対策として挙げられています。

参考サイト

依存症についてもっと知りたい方へ|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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