企業としての就労継続支援A型

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出典:Photo by Annie Spratt on Unsplash

就労継続支援A型事業所で雇用契約を結んで働く場合、最低賃金が支払われます。この場合の利用者は労働者でもあるため、労働者を保護するための法律によって守られます。守られるはずです。

「守られるはず」と書いたのは、A型事業所を利用してきた上で、実際には、そうでない事例をいくつか見てきたからです。労働基準監督署や厚労省に相談し、あるいは関連する法令と裁判の判例を調べ経営者に伝えたところ、善処されることはありました。

このような法律上の詰めが甘いことに関して、同情的な意見を持つつもりはありません。覚悟を決めてA型事業所を始めた経営者に対して、かえって失礼になると思うからです。労働意識が低い利用者が多いとしても、それを労働法に関する無知の言い訳にはできないでしょう。企業というものもまた、法によって保護されているからです。

ただ、なぜこのような問題が生じるのか理解は出来る気がします。専門分野の違いや忙しさ、意識の差もあるように思います。

専門分野に関してですが、A型事業では経営者であっても福祉業界出身の方が散見され、労働法に関する知識が追いついていない方がおられるようです。福祉施設でもあるA型のため、そちらに関連する法律と厚労省の方針についていくのに手一杯という感も否めません。

関連する点ですが、忙しさもあるでしょう。本来であれば、経営者は、最低限の労働関連法を知っておく必要があります。人を雇う企業だからです。ですから、この辺りが欠落しているのであれば、少なくともA型事業所を経営する資格はありません。もちろん、開業に必要な福祉サービス系の知識で事業を始め、後々労働法に関する知識を得ていくという姿勢があれば、評価できます。

さらに、企業の経営者に求められるはずの法令遵守に対する意識に難がある場合もあります。これはサービス管理者や支援員にも言えることですが、いわゆるブラックと言われる業界から来られた方もたくさんおられます。むしろ、自分が見てきた施設では、そのような方たちがメインでA型施設を運営しています。ですから、有給の取り方が法律や判例とは違って、かなり前に申請しなければいけなかったり、明らかな違法行為として始業時間前に掃除させたり、検温して熱があるので会社判断で帰らせたりしても、厚労省の指針とは異なり休業手当を払わなかったりするのです。

小企業が多いA型に、ここまで法令遵守しろというのは無理という経営者もいることでしょう。私もその通りだと思います。施設の開業を考える人を助けるというコンサルタント会社も存在しますが、経営者にとって甘いことだけではなく、幾分苦いこと、つまり労働法に関することもきちんと伝えているのでしょうか?一般企業でもあることですが、かなり企業よりの社労士に上手く言いくるめられていないでしょうか?

幾つもの事業所にお世話になった身ですが、敢えて、否、だからこそ言いますが、開業をきちんと諦めさせる人間も必要だと思います。稼ぐアテが無く、いつ廃止されるかも分からない加算に依存するのは危険です。実際に雇用契約を結ばないB型事業所に変更するという”解決策”も多く見られるようになりました。 残念な話題が続きましたが、事業所によっては、一般企業で働いたり起業されていた方が支援員として入ることもあり、それなりの収益があるところもあります。このような施設であれば、労働法も遵守されていくのではないでしょうか。上に挙げたようなブラック事例は、結局のところ収益の少なさも原因になっているからです。

こう考えると、利用者をよく選ぶ必要がある事もわかります。昔、ある利用者さんが「だれでもかれでも雇う」と不満を漏らしていたことがありました。特に開業したての時は仕方ない部分もあるでしょうが、採用には慎重になったほうが良いです。

これほどまでの姿勢を企業としての就労継続支援A型事業所が見せるなら、自ずと雇われる障害者の意識も変わるでしょうし、そうならざるを得ないでしょう。

その時、A型事業所も利用者も本来のスタートラインに立てるのです。

坂口宏和

坂口宏和

40歳を目前にして自閉症スペクトラムが判明したオジサン。就Aと年金で夫婦二人暮らし。バロック時代の楽器をこよなく愛し、習いに行くことも。割と人間好きであることが近年判明。

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