APD(聴覚情報処理障害)を知っていますか?~聞こえてるけど分からない

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出典:Photo by Jarek Ceborski on Unsplash

APD(Auditory Processing Disorder/聴覚情報処理障害)という障害を聞いたことはありますか?私は今まで聞いたことがなく、他の障害について調べていたときに、偶然「APD」の文字を目にしました。

今回は「APDとは、いったいどんな障害なのか」についてお話したいと思います。

(※同じAPDという表記で「反社会性/回避性/強迫性パーソナリティ障害」がありますが、今回は「聴覚情報処理障害」のみをあつかいます)

聞こえているのに、聞きとれない?

APDは「聴覚情報処理障害」と呼ばれ、聴力が正常であるにもかかわらず、日常生活のいろんな場面で聞きとりにくさが生じる障害です。

「聴力に異常がないのに聞きとれないって、どういうこと?」

そう思われる方もいるかもしれません。これは音を収集・感知する耳の神経や聞く機能に異常はなく、聴覚情報を処理する「脳」の中枢神経に問題がある状態だからです。つまり音が聞こえていても「言葉の処理ができない」ため、聞きとれない状態になっているのです。

どんな症状なのか

APDの症状は以下のようなものです。

・聞き返しや、聞き間違いが多い
・長い話を理解するのが難しい
・雑音やバックグラウンドミュージックなど、環境が悪い状況下での聞きとりが難しい
・口頭でいわれたことを忘れてしまったり、理解しにくい
・視覚情報に比べて、聴覚情報の収集や理解が困難である

この症状を見て、難聴と似ていると感じる方もいるかもしれません。難聴とAPDの違いは「聴力検査をしても異常がない」「雑音がある所などで言葉が聞き取りにくい」ことです。

例えば、APDの症状があると、街中で会話しているときに車や周りの話し声で、相手の声が聞きとれなくなります。隣に座って会話をしていても、対面で向かい合っていたとしても、周りの音で声が上手く聞きとれなくなってしまうのです。何度も聞き返したり、聞き間違いが起きるなど、円滑なコミュニケーションがとれない状態になります。

何が原因で起こるのか

APDの原因はまだはっきりしていません。脳機能の障害や、発達障害、心理的要因など……さまざまな仮説があります。一体どんなものが関係しているのか?例をあげます。

背景要因
・発達障害
・認知的なかたより
・心理的問題
・脳損傷
・精神疾患
・幼少期の言語環境

性格特性
・素直で従順である
・気を遣いすぎたり、我慢をしてストレスを貯めやすい
・完璧主義
・自責感の強さ

聴取環境
・雑音が多い
・話し手が早口であったり、小声であったりする
・マイクを通すなど、声が不明瞭
・反響しやすい部屋

このようにAPDが起こる背景には、さまざまな要因があると考えられています。しかし、適切に対応することで症状を軽減することができます。

具体的な対処方法

これまでAPDの症状や要因についてお話しましたが、一体どんな対処をすればいいのか?今回は大きく分けて5つの対処方法の例を紹介します。

1仕事の役立つ機器、会話術を活用していく
・ボイスレコーダー、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホン・ヘッドホン、補聴器の使用
・聞き返し方のバリエーションを増やす

2メモをとるなど「文字化」する
・メモ用のノートとペンを常備する
・テキスト化できるチャットツールやアプリの使用

3「聞きとりの練習」を日常的におこなう
・聞きとり問題(聴解)を集めた問題集、各種教材を利用する
・ラジオやポッドキャストを聞く
・仕事に関する記事や資料を読む

4心理面のケアで聞きとりの悪化を防ぐ
・身近な理解者と話す
・専門家のカウンセリングを受ける
・APDの当事者の会の活動に参加する

5職場の合理的配慮を求める
・ボイスレコーダーなど、補聴機器の利用許可をもらう
・資料や連絡のテキスト化を依頼する
・なるべく静かな仕事ができる部署への配置

対処方法には自分ができることと、周りの協力が必要なものがあります。自分に合った方法を模索したり、過ごしやすい環境づくりや配慮をえられるよう、周りの人と話し合うことが大切になります。

また、普段の生活リズムを整えることも大切です。聞きとりになんの問題がない人でも、体調が悪いと話が分からなくなったりします。

体調管理には食事や運動も重要ですが、一番影響するのは「睡眠」とされています。睡眠不足が続くとストレスを感じやすくなり、ストレスによって睡眠の質が下がってしまうと、心身の疲労によって症状が悪化してしまいます。

日頃から規則正しい生活を心がけ、体調管理に努めることが、遠回りなようで、実は確実な聞きとり改善策なのです。

最後に

私はASDの診断を受けていて、聞きとりに困難を感じています。聞きとりにくさについて調べていたときに、APDのことを知りました。通ずる部分があるのではないかと調べたところ、まだ認知度が低い障害であることを知りました。この機会に、少しでも多くの人にAPD(聴覚情報処理障害)について知ってもらえたらと思います。

参考文献

「聞こえているのに、聞き取りにくい? 急増する「APD」の対処法とは|講談社 ブルーバックス」
https://gendai.ismedia.jp/bluebacks

「聞こえているけど聞き取れない?聴覚情報処理障害(APD)とは|シグニア」
https://www.signia.net/ja-jp

もこ

もこ

一年前にうつ病を発症、退職して就労移行支援事業所に通い始める。自分の障害や特性を少しずつ理解しながら、好きなことを楽しんで生きていきたい。

趣味は絵を描くこと。好きなものを好きなときに、自分の思うままに描きたい。

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