巧妙過ぎるモラハラの手口、ガスライティングについて

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Photo by Philippe Mignot on Unsplash

「ガスライティング」とは、数ある心理的虐待の手口の中でもかなり巧妙で、その回りくどさに反して被害者の精神を大きく弱らせます。2018年のイギリスでは流行語にもなるほど問題提起されている一方、その実在性については未だに疑われてもいます。

なぜ標的の精神を破壊するほどの威力があるのか、そして周知を妨げる要素は何か、解説と考察をしていこうと思います。

映画から名付けられた

ガスライティングの語源は1944年の映画「Gaslight(邦題:ガス燈)」を由来としています。作中ではモラハラ夫によって追い込まれる妻の様子が描かれており、その手段が現実でも使われているというのです。

主な手口は「標的の現実認識を狂わせる」ことで、具体的には「思い違い」と「否定」を繰り返し標的の精神を追い詰めます。「ガス燈」の作中では家具をいじったり物音を立てたりして、妻に指摘されると「お前の思い違いだ」と否定していました。これを繰り返されると、標的は自身の正気や現実認識を疑うようになるのだそうです。

嫌がらせの手段は様々です。物の位置を動かす、嘘の情報で惑わせる、雑音や悪臭を流す、仲間につきまといや監視をさせる等です。そして不自然で不安な状況を標的から指摘されると、決まって「お前の思い違いだ。お前が間違ってる」と否定します。

また、加害者は外面の良さで味方を増やし知らぬ間に加担させたり標的を孤立させたりすることも多いです。家で隠れてモラハラをしているなど分かるはずもないので、被害者がいくら訴えても信じようがなく、結果的にガスライティングへ加担させられる訳ですね。ソシオパスがこの方法を好むと述べた学者もいるくらいです。

夫婦やパートナー間のDVやママ友同士のいじめで使われることが多く、そのためか被害者の大部分が女性であるといわれています。しかし男性が被害に遭うケースもゼロではなく、新興宗教団体が脱退者への報復に用いることもあれば、暴力団が気に入らない組員を追い出すために仕掛けた話まであるそうです。

標的を確実に破滅させる

時に回りくどい手段を用いるガスライティングですが、その目的は標的が何らかの形で破滅することだといわれています。不安を煽って現実認識を歪め精神の崩壊まで追い込むのは、あくまでも手段に過ぎません。破滅の形も様々で、犯罪に走って刑務所行き・孤立させて集団から追い出す・精神を病んで自殺する・精神病を理由に離職させる・自分への依存状態を作って服従させる等があります。

長い時間をかけて標的にしか認知されないような嫌がらせを続ける、とても狡猾で執念深い心理的虐待です。その分、目立った証拠も残りにくく、正気すら疑われているため被害の訴えも通りません。詰みとまではいかずとも、解決には被害者自身の粘り強い立証が求められます。精神攻撃を受けながらではハードルが高いのは言うまでもありません。

ガスライティングの存在や凶悪性はそれなりに知れ渡っており、イギリスでは2018年に流行語となったほか、2015年にはイングランドとウェールズで違法化されており、最高5年の懲役刑が課されるようになりました。しかし起訴されても半分以上が無罪判決となっており、抑止力にはなっておりません。証拠不十分に陥りやすいのが原因のようです。

周知はとても難しい

ガスライティングが違法化されているイングランドやウェールズですら、起訴は出来ても有罪判決まで届くのは稀です。そもそもイギリス国外ではガスライティングそのものが知られていない、或いは実在性を疑われているのではないでしょうか。

ガスライティングの手口には仲間につきまといや待ち伏せや監視をさせるものがあり、これは「集団ストーカー」 とも呼ばれています。私見を述べるならば、これもガスライティングの実在性を揺るがし周知を妨げている要因のひとつではないかと考えています。

集団ストーカーについてのビラや街宣を見聞きしたことはあるかと思います。ストーカー規制法が制定されるきっかけとなった「桶川ストーカー事件」自体が集団ストーカーの実例でもあります。同時に、集団ストーカーは統合失調症など妄想を伴う精神疾患の常套句でもあるため、荒唐無稽な虚言として受け取られがちです。

つまり、集団ストーカーという単語と結びつきやすいせいでガスライティングの実在性もまた疑われてしまうのではないかということです。「集団ストーカーなど妄想の産物で嘘っぱちだ。したがってガスライティングもまた実在しない」となっているのではないでしょうか。

自衛も困難を極める

ガスライティングには「形容しがたい違和感」「同じ人物と不自然に遭遇する」などの兆候があります。しかし、それを知ったころには既に深刻な段階まで進行しており、独力で対策を立てて巻き直すのは困難を極めます。無視を決め込もうにも、無視自体が反応になるので解決にはなりません。自衛すらままならないわけです。

とはいえ、被害者自身でどうにか証拠を集めなければ解決に至りません。ストーカーや嫌がらせの対策・捜査を受け付けている探偵事務所「ファミリー調査事務所」でも、「『調査を依頼したあとはお任せ』では問題は解決できません。ガスライティングは、ご依頼者と私どもの協力があって解決に向かいます」としており、プロの探偵を頼るにしても被害者自身が立証に努めることは必要不可欠です。

ガスライティングの標的にされているのではと疑わしいときは、日常の不自然なことについて記録を残しておくことが第一歩とされています。動かぬ証拠をつかむことが出来れば日本の警察にも突き出せますし、特に偶然を装ったつきまといや待ち伏せは現行のストーカー規制法でも対応できます。

自身で証拠集めをするなどの抵抗は求められますが、一人で抱え込むのもいけません。誰も彼も疑うのではなく、探偵など解決に長けたプロの助けを借りるのも必要です。ガスライティングについては分からないことだらけなので、せめて仕掛ける側の心理として加害者側の体験談も欲しいところではあります。

参考サイト

ガスライティングの兆候|ガスライティングの実態と解決方法
https://fam-iyagarase.com

ガスライティングとは・意味
https://ideasforgood.jp

遥けき博愛の郷

遥けき博愛の郷

大学4年の時に就活うつとなり、紆余曲折を経て自閉症スペクトラムと診断される。書く話題のきっかけは大体Twitterというぐらいのツイ廃。最近の悩みはデレステのLv26譜面から詰まっていること。

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