統合失調症でも、生きていく~第五章

統合失調症

出典:Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash

統合失調症でも、生きていく 

娘が小学校にあがり、急に自分独りの時間が増えました。私は家で独りきりというのが非常に苦手で、毎日のように外出していました。一時期、孤独を埋めるために買い物依存症かと思うくらい、服ばかり買っていたことがありました。服を見ながら店員さんと話している間は、孤独から逃れられるからです。不思議と「お客」という仮面をかぶっている間は対人恐怖症は現れないということもあり、それが心地よかったのです。

自分のための時間

しかし、自分のために使えるお金は限られています。結局、月末にはほとんどお金が無く、安い食材で簡単な食事しか作れなくなります。買い物にも行けないストレスで鬱にもなりました。

母に相談し「月初に使うお金を目的別に分けておけばいいよ」とアドバイスをもらいました。その通りにすると、しっかりとお金の管理ができるようになり、買い物依存症もましになっていきました。「やはり、悩み事は経験者に相談するのが一番だな」と思ったのです。

そんな中、世の中はコロナ過に。嫌でも家の中にいざるをえない状況に、再び鬱が訪れます。しかし、今回は自分だけではなく、世界中がそうなのです。「皆、どうしてすごしているのだろう?」と思い、コロナが訪れる直前に仲良くなったママ友に聞いてみました。「家にずっといるのってつらくない?」と聞くと「私、けっこう前からそんな生活してるから平気よ」との答えが返ってきたのです。

ママ友いわく「朝家族を見送ったあと早速お気に入りのソファに座って、韓国ドラマを2時間ほど見るの。そのあと、ゆっくりと動きだして10時ごろから家事をするかな」「お昼もひとりのときは簡単に冷凍物やお惣菜で済ますし。暇な時間は適当に部屋の片付をして」「さすがに晩ごはんはみんなが食べるからちゃんと作るけどね。でもそれもその時の気分次第でできる範囲でだよ」といっていました。

決してだらしのない子ではないのです。美人で友達も多く、おしゃれで昔は百貨店の受付嬢や会社の社長秘書などをしていた子なのです。今は専業主婦を楽しんでいるといっていました。オンとオフの切り替えが上手なのだと思います。私も見習って、自分の時間を大切にしようと思いました。

実践

自分は仕事をしていたころ、休みの日に何をしていただろうと思い返しました。たくさんあつめた漫画や小説を何度も読み、音楽を聴いて、YouTubeもよく見ていました。近所を散歩するのも好きでした。そこで「家事優先ではなく、趣味優先、家事はすき間時間にやってみてはどうだろう」という結論に達したのです。正解でした。家族が朝出かけるのを見送って「さあ、まず歩きにいこう」と明るい気持ちになれたのです。

主治医からも「精神疾患には運動が1番いい」と聞いていました。別に特別なことではなく、歩くだけでいいとのことです。特に朝の散歩は気持ちがいいし、色んな人や風景が見れていいです。

私が家事をする前に散歩に行くのは、出勤気分になれるからです。最初は30分から始め、今では朝の7時から8時まで、1時間歩いています。こんな時、娘の通学が早くてよかったなと思います。以前は遠くの小学校に通わせてしまったせいで、お弁当のいる日は5時起きだと嫌々やっていたのですが、早い時間から歩けるというメリットに気づくと、お弁当作りも楽しいと思えるようになってきました。とにかく「早起きは三文の徳」なのです。

散歩から帰ると待ち受けているのは、夫と娘が散らかしたリビングです。そこで、まず家中の窓をすべて閉めて、ご近所に迷惑がかからない程度の音量で大好きな音楽を流しながら片付けをすることにしました。お皿は入るだけ食洗器におまかせし、残った分だけ洗う。洗濯機を回しているうちに、取り入れておいた洗濯物をたたむ。

1時間かけて歩くとやはり少しは足腰にくるので、それを休めるために自転車にのってスーパーに買い物に行きます。献立は散歩のあいだに考えておくので、悩む暇なく買い物ができます。最近では、洋服を買いにいくより毎日の買い出しの方が楽しいので、お金に困ることもありません。お昼は作ることもあれば、お惣菜を買ってきて食べることもあります。以前は作らなければ、なまけているような気がしてならなかったのですが、最近は色んな人の声を聞いて「なんだ、みんならくしてるんだ」と思えるようになったのです。

変化

昼食後はたびたび母に電話をかけます。母が元気そうにしてくれていると、私までうれしくなります。

しかし、体の弱い母ですので、30分も話すとしんどくなってくるようなので、長電話はできません。以前であればこの後さみしくなって出かけていたのですが、最近では漫画を読んだり、海外ドラマを見たり、音楽を聴いたりして楽しめるようになりました。

もちろん、この文章を書くのもその時間帯なので、楽しんで書いています。そういった有意義な時間を過ごした後は自然と「掃除でもしようかな」と思えたりするのです。そうこうしているうちに、晩ごはんをつくる時間になります。料理は気持ちがらくな時は好きなほうです。もちろんここでも音楽をかけながら作業をします。

そして夕方になると待ちに待った愛おしい娘のお迎えにいきます。以前は子供の遊びに付き合ったり、わがままな娘のしつけに嫌気がさしていたこともありますが、10歳にもなるとしっかりしたもので、対等に話ができるのが楽しかったり、最近では小学校で流行っていることを教えてもらったりしてとても良い関係を築けています。わがままはあいかわらずですが、ニュースで幼い命が失われている事件などを見るたびに、「大切にしなければ」と心の底から感じます。

晩ごはんの後のお皿洗いは以前は嫌いでした。しかし、少し前にテレビで私の好きなかわいい女優さんが「私、ご飯作るのより片づけるほうが好きなんです」といっていたのを聞いて、目からうろこが落ちました。確かに、食べた後しばらく放置してしまうと面倒くさくなってしまいますが、食べ終わってすぐにテキパキと動いた方が気持ちがいいし、なんだか私まで影響されてお皿洗いが好きになってしまいました。もちろん、食洗器にも手伝ってもらいながらです。うちはけっこう使うお皿の枚数が多いほうなので。

そして現在

最近はこんな感じで毎日を送っています。結局しんどくなっていたのは、自分の行動を誰かに肯定してもらいたかったからだと思いました。夫は専業主婦の母のもとで育ってきたので、非常に亭主関白なところがあり、ひとり暮らしが長かったので、私が「がんばらなくてはできないこと」を「当然できること」のように思っている部分が多いように感じます。

前までは「がんばってがんばって、やっと褒めてもらえる」ようなしんどい生活でしたが、自分に"余暇"を与えるとおのずと家事もうまくまわるようになってきました。そして、独りの時間も充実したものになってきたのです。

しかし、統合失調症的な考えは、しばしば現れます。「夫は私より娘と過ごしている時間のほうがたのしいのではないか」「まだ私に気持ちはあるのだろうか」などといった非常に軽いものではありますが。

また、コロナの影響で人に会えなかった時期は、することが無くなったときに軽く鬱になったりもしていました。社会から隔離されているような感覚に襲われていたのです。そんなとき、病院で訪問看護師さんの存在を知りました。

主治医に質問したところ「頼んでみます?」とすぐに手配をしてくれたのです。週2回来てくれるとしたら、ヘルパーさんと合わせて週4回人と会えることになります。それも、事情を分かってくれている人たちと。

もともと、人と話すのは好きです。ただ、失調症の症状が出るのが怖くて尻込みしていたのです。対人恐怖の裏には「人が好き」という気持ちがあります。でなければ、対人恐怖症になどなっていなかったでしょう。人のことなど、どうでもいいというのでなければ。

毎週火曜と木曜に看護師さんがきてくれることになりました。30分ほど会話をします。悩みがあるときは真剣に問題に対する提案をくれ、私が落ち着いているときはたのしく雑談をしてストレスを発散させてくれます。いつでも相談にのってくれる人がいるというのは、非常にありがたいことで安心して生活ができます。

そして、看護師さんやヘルパーさんたちと談笑できるようになった私は自信がつき、もっと外の世界にでていきたいという気持ちが芽生えました。そこで看護師さんを紹介してくれたケースワーカーさんに、何か好きなことで人と接する場を増やせないかと相談しました。

すると、私のことを本当によく分かってくれているケースワーカーさんが、今この文章を書かせてくれている障害者ドットコムさんを紹介してくれたのです。

文章を書くことができる作業所なんてまったく想像していなかったし、週1日2時間からの仕事でいいというのは、小学生の娘がいる私にはうってつけの場所でした。環境も非常に良く、スタッフの人たちも優しく楽しく、いつも通所する日を心待ちにしています。リモートでの作業も楽しく、こんなに恵まれた環境にいられるのは本当に幸せだなと思っています。

ただ、今は非常に心も落ち着いていますが、今後またいつ心が乱れることが起こるかはわかりません。できるだけしっかりと自己管理をし、支えてくれている人々に感謝しつつ、生きていくことを楽しもうと思っています。

そう、統合失調症でも、生きていくのです。これからも。そして、何より一番近くでいつもそばにいてくれる家族を失うことのないよう、毎日を大切に生きていこうと思っています。

統合失調症でも、生きていく

macaron

macaron

統合失調症、その他の精神病をわずっている主婦です。
犬猫が好きで癒されています。

統合失調症

関連記事

人気記事

施設検索履歴を開く

最近見た施設

閲覧履歴がありません。

TOP

しばらくお待ちください